15歳 4
「なんだかなあ」
隊長は深々と息を吐いた。
「俺は、アイツばかり貧乏くじというか外れくじを引いているような気がする」
「どっちも同じ意味じゃないの?」
「昔から薄幸というか幸が薄いというか」
「それ、どっちも同じ意味だから」
「いつも頑張っているというか一生懸命というか」
「同じ意味でしょ、だから」
「誰にも本心を言わないで、意地っ張りというか意地を張っているというか」
「だから同じ意味をだっての。俺の話、聞いてる?」
カカシには、さっぱり意味の分からないことばかり言う隊長に苛立つ。
上司にあたる隊長であったが、はっきりと言った。
「いいから!俺が理解できるように話してくれる?」
一応、意味の分からないなりに隊長と、あの仔鹿がそれなりに長い付き合いを持っているということは分かった。
長い付き合いでなければ、昔からなんて言わないだろう。
「まあ、なんだ」
詳しく話を聞く前に、いつもの待ち合わせ場所に到着してしまった。
誰の姿もない。
時間に煩い仔鹿は、どこにもいない。
「あれ?いないけど」
いったん、話を中断しカカシは仔鹿を探すが影も形もない。
「どうすんの」
「そうだなあ」
腕組みをして考えていた隊長であったが「待つ」との一言が返ってきた。
「急な呼び出しだったから段取りがつかないのかもしれない。最悪、来ないかもしれないな」
「上からの命令なのに来なかったから、まずいんじゃない」
「しょうがないだろ、そんときはそんときだ。考えるさ」
隊長は軽く跳躍して木の枝に着地した。
「待つのも仕事だしな」
「そりゃあ、そうだけどさ」
言ってカカシも隊長と同じく木の枝に跳躍する。
葉が茂ったところに身を隠す。
「仔鹿が来なかったら、どうすんのさ」
「・・・あんまり考えたくないな」
殺されたかもしれないから、と。
隊長は憂鬱そうな声を出した。
「なんていうか」
隊長は憂鬱そうな声のまま話し出した。
「潜入やら諜報やらのやつらは頭の回転がいいだろ。それは幼い頃から素養、素質のある子供を、それ専門に育てていくんだ」
「・・・ふーん」
「仔鹿も小さい頃から、それ専門の訓練を受けていて、いつでも任務に出れるようにされていたんだよ」
なんとなく聞きたくない。
カカシは面の下で眉を潜めた。
「だもんで、仔鹿が里を出たのは里で大きな厄災があった直後からだった。里が破壊されて里の弱体化とか心配されていたから、なおさら他国やらの情報が欲しかったんだろうなあ」
厄災というのは里を襲った悲劇だ。
何も言うことが思いつかず、カカシは黙って話を聞いていた。
「アイツも、それで親を失ったのに悲しみに浸る間もなく任務に出されてなあ」
それから、ずっと里に帰っていないんだ、と隊長は淡々と話した。
「泣く暇もなかったと思うよ」
話し終わったのか、隊長は黙り込む。
カカシも言うべき言葉が見つからず、黙っていた。
ただ、考えていた。
木の葉の里に帰ってない仔鹿。
仔鹿というのは通称名なのだから、ここ数年、誰にも本名で呼ばれていないんじゃないか。
里に帰ったら、一番、最初に何をしたいんだろう。
カカシより年下に見えたが、実のところ仔鹿は何歳なんだろう。
でも、どうして隊長はそんなに仔鹿のことについて詳しいんだろう・・・。
「ねえ、ちょっとタイチョー」
思いついて聞いてみた。
「なんで、アンタ、そんなに詳しいわけ?アイツのことに」
「それはだなあ」
人差し指を面の上から口元だと思われる場所に立てて「ひ、み、つ」なんて言ってくる。
「そんなことしても気持悪いだけだけど」
カカシに、ずばり言われて凹む隊長。
「単に仔鹿との共通の知り合いがいるだけだ」
「最初から、そう言えばいいのに」
突っ込まれて、また凹んでいた。
「誰か来た!」
暗部の隊長とカカシの間に緊張が走ると同時に二人は気配を消した。
すっと森に溶け込むように。
息せき切って走ってきた人物がいた。
「こじか!」
カカシが小さく叫ぶ。
待ち人登場である。
姿が確認されると二人は仔鹿の前に降り立ったのだが、仔鹿の有様を見てカカシは息を飲んだ。
「どうしたの、それ・・・」
仔鹿の左頬には大きなガーゼが貼ってあった。
一ヶ月前に会ったときにはなかったものだ。
「急に呼び出すなっての」
肩で息をしている仔鹿は、中々、息が整わない。
俯いて、苦しそうな息をしている。
調子が悪いのだろうか。
「調整が大変なのに」
「それは悪かったな」
隊長が仔鹿を見て痛ましそうにしていた。
「その顔は?派手にやられたな」
「で、用件は?」
それには応えず、仔鹿は本題にいきなり入る。
「撤退命令が出た。これ以上、潜入活動を続けていると発覚する恐れがあるとのことだ」
「何をいまさら」
仔鹿は、あからさまに拒否反応を示した。
「絶対に嫌だ」
首を振って拒否する。
「最後までやる」
「・・・死ぬことになってもか」
「身体に起爆札が埋め込まれているから里の情報漏えいについては心配ない」
隊長と仔鹿の間で話が進んでカカシは蚊帳の外になっている。
「ちょっと待ったー!俺も会話に入るから!」
無理矢理、二人の会話に割り込んだ。
「今の話を纏めると仔鹿は撤退の命令が出ているのに、それに逆らって任務を続行するってこと?バレたときには体に埋め込まれた起爆札で自爆するから情報漏えいは防げるってこと?」
間違いであってほしいとカカシは思って発言したのに、隊長と仔鹿は揃って頷いた。
15歳 3
15歳 5
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