AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


15歳 3



「なんだ、普通の顔じゃない」
それがカカシの感想であった。
目は固く閉じられているが、顔立ちは成長期の少年といった感じで、あどけなさが残っている。
容易に自分より年下だと推測できた。
顔の横一線に走る傷が印象的だ。
本来なら顔の傷は怖さを感じさせるものだが、この仔鹿にいたっては愛嬌になっていた。
「仔鹿って言うだけあって、本当に子供だねえ」
子供のような顔なのだけど眠っている顔は、どう見ても安らかではない。
眉間に皺を寄せて難しい顔をして目を閉じている。
ぎり、と歯を噛みしめたりして。
いったい、どんな夢を見ているのか、さすがに心配になってくる。
悪い夢を見ているのなら起こした方がいいのかも、とカカシは迷う。
でもなあ・・・。
こんなところで眠ってしまうほど疲れているのなら、眠らせてあげたいような気もする。
自分の隣ならば、もしも何かあった場合には守ってあげられるし。
そこまで考えてカカシは、その考えを訂正した。
いやいやいや、守るなんて。
仔鹿はカカシよりも強いのだ、守るなんて必要ないはず。
そうも思うのだが、眠っている仔鹿の表情が余りにも苦悶に満ちていて胸が痛くなってしまった。



不意に、ぱちりと仔鹿の目が開いた。
まるで体内時計でもあるかのように、唐突に起きたのだ。
目を開いた仔鹿の目に最初に飛び込んできたのは暗部の面をつけたカカシの顔であった。
「あ、起きた?」
声を掛けたカカシを仔鹿は凝視している。
何も言わないで。
「あれ?もしかして寝起き悪い方?」
カカシも寝起きが、すこぶる悪いので、その気持ちは分かる。
「違う」
ようやく声を出した仔鹿は息を一つ吐き、カカシから体を離すと立ち上がった。
顔は風に吹かれた髪に、すぐに覆われて見えなくなってしまう。
それをカカシは少し残念に思った。
カカシも仔鹿にならって立ち上がる。
「ねえ」
仔鹿が何も言わないのでカカシは話しかけてみた。
「アンタさ、怪我してない?消毒薬の匂いがするよ」
反応がないのでカカシは勝手に話を続ける。
「それに首元から包帯が見えたけど」
仔鹿は下を向いてしまったから、なおさら顔が見えない。
「ねえ」
尚も話しかけ、仔鹿の横に立つと頭一つ分カカシの方が背が伸びていた。
下を見ている仔鹿のつむじが目に入ったので、つん、とつむじを突付くと仔鹿がびっくりしたように顔を上げた。




「なっ!」
つむじを押さえて頬を赤くしている。
目元までは見えなかった、開いた目を見たかったのに。
「何すんだ!」
「へえ〜」
カカシは面の下で面白そうに、にやっとする。
「アンタ、人間ぽい顔もできるんだねえ」
「うるさい」
悪態をついて仔鹿は横を向いてしまった。
顔が、また見えなくなる。
「今日、ゆっくりしているんだね。前に会ったときは、すぐに帰っちゃったのに」
「・・・・・・しょうがないだろ、時間が限られているんだから」
「時間?」
「・・・・・・潜入活動しているんだから自由にできる時間は限られる」
それで待ち合わせに時間厳守を絶対としているのか。
「今日はいいの?」
仔鹿が思ったよりも話してくれて嬉しくなってカカシは話かける。
「・・・・・・今日は病院に行くことになっているから」
「病院?体の怪我で?」
そう問うと仔鹿はカカシの方を見ずに、こくりと頷いた。
「その怪我はどうしたの?」
流れのままに聞くとイルカは首を振っただけで何も言わない。
「誰にやられたのさ」
「・・・・・・必要だっただけだ」
そう言われ、カカシは胸中複雑になる。
怪我も必要な任務って。
任務上、怪我を負うことは多々あるが仔鹿の発言から、それはどう見ても必要だからと、わざわざ負った怪我なのだろう。



「痛くないの?」
思わず言うと仔鹿は笑ったようだった。
「痛くないよ、こんなものは」
「こんなものって」
カカシの言葉を聞こえないふりをして仔鹿は伸びをした。
「うーん、よく寝た」
さあ、帰らなきゃ、と。
「じゃあな」
振り返らずに仔鹿は姿を消してしまった。
未練など何もないように。
後に一人残されたカカシは仔鹿の消えた方向を目を眇めて見ていたのだった。



隊に帰還したカカシは隊長に仔鹿から受け取った巻物を隊長に渡しながら、隊長相手に言ってもしょうがないと思いつつも言っていた。
「ねえ、アイツって何者なの?」
「ああ?急にどうしたんだ」
「今日行ったらさー」
斯く斯くしかじかと仔鹿と会ったときのことを語った。
「すごい疲れた顔して眠ってんの。あんなの子供の寝顔じゃないよ。ってか何歳よ、アイツ」
「そりゃあ、まあ」
隊長は肩を竦めた。
「長期の潜入活動しているから緊張の連続で疲れているんだろ。怪我も今回だけじゃないからなあ」
「長期って、どんくらい?」
「さてね」
「怪我も今回だけじゃないって、どういうこと?」
「それは言えないなあ」
「少しくらい教えてくれったっていいでしょ」
若いくせに曲者の隊長にカカシは詰め寄る。
「どういうやつなの、アイツは?」
「あのなあ」
隊長の声色が、いつものおちゃらけた感じから凄味があるものに変わった。
「お前が知って何になる?アイツの助けになるとでも思ってんのか?中途半端に口出すと自分の首を絞めることになるぞ」
暗部の活動と潜入諜報の類の活動は一線を画す。
同じ忍でも、全く活動内容が違うのだ。
「そりゃあ、何もできないけど」
「だろ?」
「それでもさあ」
飽きっぽいカカシが滅多になく食い下がってきた。
「知りたいんだから教えてよ」
「ふーん」
途端、隊長は面の下で、にやにやとして腕を組んだ。
「もーしかして、もしかして」
隊長が、にやにやと笑っているのが分かってカカシは、むっとする。
「何だよ?」
「そんなに気になるなんて、もしかしてー」
「だからなんだよ!」
「それって恋じゃないのー?」
「恋!」
思いもよらぬ言葉にカカシは口を、あんぐりと開けた。
開けた口が面から、はみ出しそうなほどに。



「バッカじゃないの」
カカシは一蹴した。
「まだ会ったのたった二回で、最初の出会いは最悪で、二回目に会ったのは最初に会ってから六ヶ月、半年も経ってんだよ」
恋なんてバカな、と言うカカシに隊長は的確に指摘した。
「そんなこと言っても、お前がよく読んでいる、いかがわしい本は、そういうシチュエーションばっかりだろ。一目惚れとか運命の相手とか何とか」
「そうだけど・・・。現実は違うでしょーが」
反論してみるが弱い。
カカシだって暗部に所属しているけれど、夢見る年頃なのだ。
「それに仔鹿は男だったじゃない」
カカシも男で相手も男。
男というか、子供に近い少年。
いったい仔鹿は何歳で、どんな経緯で、あんな任務をしているのだろう。
隊長に言われたからではないが仔鹿のことが気になってきてしまった。
最初の出会いで、コテンパにやられてのに。
もしや俺って、そういうのが好きな人?
意地悪されるのが好きな人?
と思ったが、んなわけあるかと、すぐに打ち消した。
どうせ、三ヵ月後には仔鹿に会える。
それまでには自分の気持ちが判るだろうと気楽に考えた。



だが状況は一変したらしい。
「おい、ちょっと」
仔鹿に会って一ヶ月もしない頃、カカシは隊長に飛び止められた。
「緊急事態だ。これから例の場所に行くぞ。同行しろ」
「え、今から?」
「そうだ。至急、連絡を取れと上からの命令だ」
「何かあったの?」
「道々話す」
急いで支度を終えると疾風のように飛び出した。
森の中を駆け抜ける。
本気を出している暗部の隊長はカカシの足でも追いつくのが、やっとだ。
「アンタ、実はすごいんだね」
「伊達に暗部の隊長はやってないからな」
「自分で言わなきゃ、もっと格好よかったのに」
軽口を叩いていたが走るスピードは落ちない。
「で、何があったの?」
カカシが、もう一度聞くと隊長が重い口を開いた。




15歳 2
15歳 4




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