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不思議な人3



カカシが森の中で道に迷う、少し前。
イルカは、やはり道に迷っていた。
里への帰る道が分からない。
下忍のイルカは、三代目より簡単なお使いを頼まれて、里外れに住む三代目の知り合いの家に行った帰りだったのだ。
「あれ?」
イルカは首を傾げた。



「おっかしいなあ。目印の大きな銀杏の木が見えない・・・。」
夕暮れ時になって、辺りは暗くなってきており、うっそうと木が生い茂る森の中は尚のこと暗い。
イルカは少々、心細くなってきた。
「どうしよう。」
うろうろとしてみるが、どうにも道は見つからない。
「早く帰らないと、お菓子が貰えないよ・・・。」
何でも、今日は異国のお祭りの日で子供はお菓子が貰える日なのだ。



イルカもお使いが済んで帰れば三代目がお菓子をくれると約束してくれていた。
「早く帰りたいよう。」
お菓子が食べたい。
早く帰りたいというイルカの理由は、お菓子であった。
十を過ぎたくらいの年頃のイルカは、まだまだご飯よりお菓子が好きだとみえる。



森の中を迷うこと数十分、イルカの前方に誰かがいるのが見えた。
「あ、人がいる!」
イルカが小走りで近づくと、小さな老婆が杖を突き小さな荷物を重そうに持って、とことこと歩いている。
「ねえ、ばあちゃん。」
人見知りすることなく、イルカは声を掛けた。
「あの、ちょっと聞きたいんですけど・・・。」
「なんだね。」



振り向いた老婆の顔は皺だらけで、妖しげな雰囲気を漂わせている。
絵本で見た魔女に、そっくりだ。
イルカは心の隅で思った。
「道が分からなっちゃって。ここが、どこか分かったら教えてほしいですけど。」
老婆の鋭い視線に怯むことなくイルカは無邪気に聞いてしまう。
にやり、と老婆は目を光らせた。
「もちろん、どこだか分かっているよ。」
「え!じゃあ・・・。」とイルカの目が輝く。
「でも、ただでは教えられないねえ。」
「ただ?」
「そうだよ。」
老婆は、自分の持っていた荷物を指差した。
「荷物を運ぶのを手伝ってくれたら教えてあげようかね。」
「うん!分かった。」
イルカは元気良く、頷くと老婆から荷物を受け取った。



ずしん。
それがイルカの荷物の第一印象だった。
両手で受け取った荷物は予想外に重く、イルカは二、三歩、よろめくと後ろに尻餅をついてしまった。
「なに、これ!すっげー、重いよ。」
「持てないのかい?」
「も、持てるよ。でも背中に背負いたい・・・。」
老婆は、やれやれとイルカから荷物を受け取ると、後ろを向いて背中を差し出すイルカの小さい背に荷物を乗せる。
「お、おもっ・・・。」
イルカは、再び、よろめいたものの今度は、ゆっくりと足を一歩、一歩前に出して歩き始めた。
「で、でも、な、なんとか大丈夫・・・。」
「そうかい。じゃ、ついておいで。」
老婆が歩き出した後を、イルカは右によろよろ、左によろよろしながら追い始めた。



「ばあちゃん。」
「なんだい。」
イルカは聞いてみた。
「この荷物、何が入っているの?」
「さあねえ、とある大事なものだよ。なんだと思うかい。」
「金の延べ棒?」
イルカは思いつきで言ってみる。
「この前、じいちゃんちで金の延べ棒を見たんだ。」
あ、じいちゃんて、木の葉の里の三代目火影様だよ、と説明を付け加える。
「じいちゃんがお菓子をくれるって言うから、お菓子の箱を空けたら金の延べ棒が、ぎっしり詰まっていたことがあって、あれはびっくりしたなあ。」
聞かれてもいないことを子ども特有のお喋りで、ぺらぺらと話してしまうイルカであった。
「なんで、お菓子の箱に金の延べ棒が入っていたんだろう?」
話すイルカは、息を切らして額から汗を滴らせている。
「金の延べ棒なんて食べられないのにねえ。」



イルカの話の老婆は、苦笑いを浮かべた。
「お前さん、ある意味、貴重な人間だねえ。」
そして、イルカの背中の荷物を見る。
「でも、その荷物が、そんなにも重いなんて、また、違う意味で深い業を背負った奇特な人間なんだねえ。」
「え?何か言った?」
「なんでもないよ。」
眇めた目で老婆はイルカを見て、何かを見透かすように目を細めた。
そして呟く。
「今は辛くとも、今に、きっといいことあるよ。」



暫く歩くと、老婆は歩みを止めた。
「ここらでいいよ。ありがとさん。」
真っ赤な顔で、ぜえはあ、しているイルカの背中から老婆は、ひょいと荷物を取り上げた。
「助かったよ。」
道は、と杖で真っ直ぐに暗い森の中を差した。
「あっちだよ。ここを一直線に行けば、銀杏の木の下に出られるよ。」
「はーい、ありがとね。ばあちゃん。」
じゃあねえ、バイバーイとイルカは、目印の銀杏の木のことを何故知っているのかと疑問に思わず、手を振って駆け出そうとする。
すると老婆が呼び止めた。



「ちょっと、お待ち。」
「なあに。」
首を傾げてイルカは振り返る。
まだ、用があるというのか。
「いいもの、あげるよ。」
ひひ、と老婆は笑うと、あるものを差し出した。
皺だらけの手の平には木の実が二つ。
毒々しい紫色と鮮やかな黄緑色の木の実だ。



「美味しいの?」
一応、イルカは聞いてみた。
だが目は、きらきらとしていて、顔には早く食べてみたいと書いてある。
目の前の物を疑うより、好奇心が勝っていたのだ。
忍者として、いささか、どうかと思う部分もあるが、まだまだ子どもなので好奇心旺盛だった。
「さあねえ。食べれば分かるさ。食べたらいいこと、あるかもしれないよ。」
意味ありげな笑みを老婆は浮かべている。
「じゃあ。」とイルカは、迷わず紫色の木の実を手に取った。



「いただきまーす。」
そのまま、ぱくりと口に入れた。
「あっまーい。」
イルカは顔を綻ばせる。
「めちゃくちゃ、甘いね。これ、砂糖菓子みたい!」
「そうかね。」



ふとイルカは自分の目線が先ほどより、上になっていることに気がついた。
「あれれ?」
自分の体を見てみると背が高く、手足も長くなっている。
手の平も大きく、体つきは逞しくなっていた。
「えー、これってさあ。ばあちゃん。」
喜色満面でイルカは老婆に聞く。
「これって、これって、魔法?木の実を食べて大きくなったんだよね?」
ね?ね?ね?とイルカは、期待を膨らませて老婆を見る。



イルカの反応に老婆は少々、驚いたようで顔を顰めた。
「お前さんは今の自分の姿に驚いたりしないのかい?」
「魔法なら驚いたりしないよ。魔法って、なんでも出来るんでしょう?」
やったー、大人だーと嬉しそうに自分の体を、あちこち触っている。
「ばあちゃん、本当は魔女なんでしょう?」
顰めた顔を、更にしわくちゃにして老婆は答えた。



「そういうことは言っちゃいけないことになっているんだよ。」
私達の間の約束事でね、という言葉は肯定を意味しイルカは「かっこいい!」と一人で盛り上がる。
「ってことは俺、本物の魔女に魔法をかけてもらったってことだよね!」
「だから、そういうことはだね・・・。」
「すっげー!みんなに言ったら、驚くだろうなあ〜。」
「ちょいと、お聞きよ・・・。」
「魔法なんて、すごいよねえ。俺も使えるようになりたいなあ。」
「こら!」
遂に、老婆は甲高い声をあげてイルカを咎めた。



「話をお聞きったら。今夜、あったことは話しちゃいけない決まりなんだよ。一夜だけのことなんだから。」
「ええ〜〜。」
残念そうにイルカは声を上げた。
「言いたいよ〜。」
「駄目だって言っているだろう。」
渋々といった風に老婆は懐から、色とりどりのお菓子を取り出した。
「ほら。これをあげるから聞き分けておくれ。」
「わあ!お菓子だ!」
イルカの眼は再び、輝いた。



老婆の手には見たこともないような異国の菓子が乗っていたのだ。
綺麗な包み紙に包まれたチョコやクッキー、可愛らしい形の飴玉や珍しい形のパイやケーキやら。
「貰っていいの?」
「ああ、みな、あげるよ。」
「やったー!」
イルカは老婆から、たくさんの菓子を貰って、いそいそと懐に仕舞いこんだ。
「これで、あの子も喜ぶぞ。」
「あの子?」



イルカの言葉を聞きとがめた老婆が訊いてくる。
「あの子って誰だい?」
「あ、えーと、それはね。」
途端にイルカから、はしゃいでいた雰囲気は掻き消えた。
「時々、三代目のじいちゃんから子守を任されているんだけど。あの子は、まだ子どもで辛いことがたくさんありすぎて、いっつも泣いているんだよ。」
イルカは俯いた。
「お父さんとお母さんのことを呼んでいるんだ。笑っていることもあるけれど、泣いていることの方が多い。」
それを見ていると俺は胸が痛くなる、とイルカは、まるで大人のように言った。



「だから、俺、今、どっから見ても大人でしょう?だったらさ。」
名案とばかりにイルカは言った。
「腕に抱っこしてあげたり、肩車してあげられるじゃん!お菓子も、たくさんあるし!」
弾む声で言い、にっこりと笑う。
「それに何より今なら守ってあげられる。外に出ても人目を忍ぶことはない。・・・寂しくないよ。」
最後の言葉は声を潜め、まるで自分に言い聞かせるように、自分に向けたように言っていた。



「じゃあね、魔女のばあちゃん!」
イルカは元気良く手を振った。
「ありがと!またね!」
老婆はイルカに元気の良さに呆気に取られたようだったが、慌てて叫んだ。
「いいかい!私のことや魔法のことを誰かに話すと、今日の記憶は失われるからね!」
その言葉はイルカの届いたかどうか。
既にイルカの姿は見えなくなっていた。




その後ろ姿を見送って、老婆は溜め息をついた。
「あの子は、今日、これから大事な人と会う運命かもしれないねえ。」
誰もいない後ろを振り返る。
「どうやら、また誰か、ここに迷い込んできたようだ。さっきの子と波長が同じなんだろうね。」
ぶつぶつと呟いた。
「波長が同じ者同士は運命を共にすると言い伝えられているし。」
いつの間にやら、老婆の手の平の上には紫色の木の実と黄緑色の木の実が乗っていた。
「これで、同じ色の実を食べたら、運命が重なっているということになるねえ。」
そして、ひっひっひっと笑い声をあげて森の中を歩き始めたのだった。



不思議な人2
不思議な人4




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