不思議な人2
「君も木の葉の里の帰るの?」
尋ねられて、男性の笑みに釣られて思わず頷く。
「・・・あ、うん。」
「じゃ、一緒に帰ろう。」
手を差し出されて、カカシは戸惑い、優しい声に逆らうことができず、手を取ってしまった。
まるで子供のように扱われて、カカシにも普通に接してくれる。
初めての経験であった。
いつもは、その戦闘能力の高さ、経歴、態度から年上の仲間の忍びからも一目置かれるカカシであったのだが、目の前の忍はごく自然にカカシに話しかけたりしてきている。
変なやつ・・・。
さっきの老婆といい、今日は変な人と巡り合う日だ。
なんだか不思議な日だなあ、と思ったのだった。
手を繋いで暗い森を抜けると、そこには、たくさんの明かりが点る木の葉の里があった。
ちょうど、火影岩の上に出たカカシたちには里の明かりが眩しく見える。
「綺麗だなあ。」
手を繋いでいた人が感嘆したように呟いた。
「木の葉の里はいいね。」
カカシの方を向いて同意を求めてくる。
「まあね。嫌いじゃない。」
つい、捻くれた答え方をしてしまった。
なのに、その人は頷いた。
「うん、俺も嫌いじゃない。ってことは好きだってことだよね?」
きらきらとした瞳で聞かれてカカシは頷かざるを得ない。
クールを装い「そういうことかな。」と顰め面で答える。
「でも。」
カカシは里の明かりを見て、ふと気がついた。
今日は明かりの数が多いような気がする。
「祭りでもあるのかな・・・。」
何気なく呟いたカカシの一言に手を繋いでいた、その人は、ぱっとカカシの手を離してしまった。
カカシの手が寂しげに空を握る。
なのに、その人は嬉しそうに懐から、あるものを取り出した。
見覚えのある、それは色とりどりのお菓子で、森で遭遇した変な老婆が持っていたものを似ていた。
「それ・・・。」
カカシが指差すと、その人は子供のように笑った。
「へへ、いいでしょう?このお菓子、荷物を運ぶ、お手伝いして貰ったんだよ。」
「へええ。」
「ねえ、知ってる?今日は異国のお祭りなんだって、ハロウィーンてやつ。」
それはカカシも知っていた。
確か、医者が関係している祭りだったような・・・。
「ああ、波浪医院ってやつね。聞いたことがある。」
カカシが言ったのと、その人が言ったのとはだいぶ、齟齬と隔たりがあったが、幸い口に出してる分には両者には違いは解らなかった。
「でね、子供はお菓子がたくさん貰える日なんだよ。」
「あんた、子供じゃないだろう。」
カカシが指摘すると、その人は「秘密だよ。」と言ってからカカシに小さい声で囁いてきた。
「実は今日だけ、魔女に魔法で大人にされちゃったんだ。」
「・・・・・・は?」
「魔女が持っていた紫色の木の実を食べたら、大人に変身したんだ。」
木の実は不味かったけど食べたんだ〜、えっへん、と胸を張っている。
「どう、すごいでしょう。」
くるりと一回転して自分の姿を嬉しそうカカシの見せる。
はしゃいでいる姿は大人であったが表情は、あどけない子供に見えた。
普段のカカシなら、馬鹿なことを、と一笑するところだが、自分も実際、おかしな老婆に会って、紫色の実を食べた。
あの、おかしな老婆が魔女だっていうのか?
効き目がないとか言っていたけれど、もしも効き目が出ていたら、俺は大人になっていたってか!
気に掛かることも言っていた。
運命の人がなんたらかんたら、とか。
目の前の人物をカカシは、じいっと見詰めた。
もしかして、こいつが俺の運命の人・・・。
もしかして、こいつが大事な人・・・。
ないないないない!
心の中でカカシは全力で否定した。
こいつは男で俺も男じゃん。
ないって、絶対!
カカシの葛藤も知ってか知らずか、その人はカカシにお菓子を差し出してきた。
「食べる?」
「・・・いらない。」
「そう。」
残念そうに、その人はお菓子を仕舞いこんだ。
「あんた、何で大人になって喜んでいるのさ。あのババアに大人にされたんでしょ。」
「え?えーとね。」
カカシの問いに、その人は本当は子供のくせに、やけに大人びた口調で言った。
「大事な人を守るため。」
「大事な人?」
「大人は子供を守るべき存在でしょう?俺には今、今日だけでも守ってあげたい子供がいるんだ。」
それはね、金色の子供、と、その人は言って、穏やかに微笑んだ。
「俺、今は大人だから今だけなら、その子のお父さんみたいになれるかもしれない。」
すっと、その人はカカシから身を離した。
「君も待っている人のところへ帰りなよ。大事な人のところへ。」
その人の声が風に紛れて、だんだんと小さくなる。
「君の瞳が寂しいって言っているよ。俺には解る、だって俺も寂しいから。」
夜の闇に溶け込むように、その人の姿は消えていった。
「さようなら。抱きしめてもらえるといいね。」
カカシは一人、取り残された。
無性に胸が苦しく、何かが足りないと心が訴えていた。
たった一回逢っただけのあの人に、今は去ってしまったあの人に気持ちを持って行かれてしまったのだ。
今の自分に抱きしめてくれる人なんていやしない。
「くそ、こんな気持ちになるなんて。」
ヤケクソ気味にカカシは地面を蹴っ飛ばす。
「今さら、寂しいなんて言えるかよ。バーカ。」
ばかやろー、とカカシは火影岩の上から里へと叫んだ。
「戻ってきて責任取りやがれー!」
不思議な人1
不思議な人3
text top
top