AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


十年後 3



体が震えた。
恐ろしい。
純粋にそう思った。
カカシの瞳には俺しか映っていないけど、俺を見てはいない。
カカシの青い瞳は何も見ていない。
その青い瞳が揺らめいて、一瞬泣いているかと思った時。



バリバリバリと何かが乱暴に破られる音がした。
音の出所は俺の忍服のベスト。
カカシが乱暴にベストを引っ張って開けている。
「な、何するんだ。カカシ!」
呼びかけにも答えようともしない。
カカシの目には何も映っていないんだ。




俺が見えていない。
俺の声も聞こえていないに違いない。

カカシの行為は更にエスカレートしそうだった。
俺のインナーにも手が掛かる。
カカシが何をしようとしているのか分からないが。
ここで、止めさせないと駄目だ。

直感で俺は行動した。
そして、火事場の馬鹿力というものを発揮した。


「やめろよ!」
渾身の力をこめて、カカシをぶっ飛ばす。
拳を握って、バキッと音が出るくらいにカカシの頬を殴った。

そして「ば、ばっかやろーっ。」と大声で怒鳴る。
怒鳴ったのは、自分の恐怖心を押さえるためだったんだけど。
吹っ飛ばされたカカシは、頬を押さえて呆然としたように俺を見ていた。
心此処に在らずの状態だ。
俺は喉の奥が、からからに乾いていたけど。
言わないと、ここで。
「伝えたいことがあるなら、口で言えよ!」
「言葉があるだろ!」とも言った。




言った後。
はあはあと息が切れて立っているとクラクラしてきた。
カカシは、そんな俺を見て。
「ごめん。」
一言だけ言って項垂れた。

カカシの言葉を聞いて気が抜けた俺はへたりとその場に座り込む。
腰が抜けたのだ。

「どうしたってんだよ、いったい。」
呟くように言うと、カカシが答える。
「ごめん。」
「どうしたのさ。らしくないよ。」
「ごめん。」
カカシは同じ言葉しか言わない。
言えないのか、言わないのか。
「ごめん、イルカ。」




こういう時は。
立ち上がると眩暈がしたが、俺はカカシに近づいた。
カカシは俺から目を離さず、じっと見ている。
細められた目は悲しげだった。
この目には覚えがある。
両親を失った俺が鏡の中で、こんな目をしていた。
馬鹿だなあ。



俺はカカシの頭に手を伸ばして引き寄せた。
「馬鹿だなあ。」
口に出して。
抱き締めた。
カカシを抱き締めると、カカシは触れてみないと分からないくらいに微かに震えていた。

任務で何かあったんだろうな。
俺にはまだ分からないが、任務では辛いことが多いに違いない。
それを乗り越えなければいけないが、時には誰かに頼ってもいいと思うんだ。

暫く抱き締めていると、カカシの腕が俺の背に廻って。
抱き締め返してきた。
さっきとは違う、優しく繊細な感じで。
俺を大事な人であるかのように。




カカシに抱き締められて、今度はドキドキしてしまった。
これって前に映画か何かで見た、恋人が恋人ににやるような雰囲気なんだけど。
駄目だ、こんな雰囲気苦手だ。
「あはははは〜。」
雰囲気をぶち壊すために、俺は空笑いをしながら体を離そうとカカシを押した。
一度目はカカシが力を入れていたので駄目だったが、二度目には何とか離れることに成功した。


カカシは残念そうにしていたが俺と目が合うと、にこりといつものように笑った。
俺も安心して笑い返した。
良かった、元に戻ったみたい。




「ほら。」
カカシにバケツを一つ持たせると、俺は軽く文句を言った。
「もー、ベストのチャックがバカになったじゃん。ベストに八つ当たりするなよ。」
「ごめんね。」
「今回は許すけど二度目はないからな。」
軽口を叩きながら野営地に戻った。
いつものカカシと俺に戻って。




十年後 2
十年後 4



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