AIで普通の動画を3D動画に変換する


誘惑1



最近、やたらカカシがイルカを誘っていた。
「イルカ先生〜」
人の良さそうな笑みで邪気など微塵も見えないところにカカシの意図的なものを感じさせる。
おまけに善人という雰囲気も漂わせていた。
上忍なのに、まるで森の小動物、犬で言えば小型犬みたいな愛らしさを無駄に振りまくカカシには何か目論見があるのかもしれない。
なのにイルカは全く気がついていなかった。
気のいいイルカが里の同胞のカカシに警戒心など抱くはずがない。
カカシに話しかけられたイルカはカカシと同じく人のいい笑みを浮かべた。
こちらは本心からの自然体であったが。



「はい、何でしょうか」
イルカはカカシの目を見て微笑んだ。
ここは受付所や上忍控え室などある建物の廊下で常に人が行きかっている。
当然、カカシとイルカの遣り取りを耳にする者もいた。
それを知ってか知らずかカカシはイルカに言う。
「いやねえ」
頭を掻きながら、いかにも照れくさそうにしている。
「先日、知り合いから酒を貰ったんですよねえ。ええと何とかっていう有名どころの」
酒の種類と品名をカカシはイルカに告げた。
「イルカ先生、飲みたいな〜って言っていましたよね?」
「ええ、まあ。確かに言いました、かなり前だと思いますけど」
「じゃあ」
にこっとカカシは笑った。
「今晩、うちに飲みに来ませんか。俺んちに」
「カカシさんの家に・・・」
イルカは、ちょっと躊躇った。
実は、つい最近もカカシの家を訪ねたばかりだったから。
それも、やっぱり珍しい食べ物をご馳走してもらいにだ。
そして今度は酒。
中忍の自分が頻繁に上忍の家を訪問するのは、どうかと思う。



「そうですねえ」
言いながらイルカは、どうしようと考えた。
「お酒・・・」
飲みたいことは飲みたいけれど酒はカカシが貰った物だ。
だから。
「あの、今回はご遠慮します」
「ええ〜」
カカシは残念そうな声を上げた。
「どうしてですか?」
悲しそうな顔をするカカシにイルカの胸が、ずきっと痛む。
「いえ、その。せっかく頂いたんですから俺じゃなくて他の誰かと・・・」
「イルカ先生がいいんです」
ずいっとカカシがイルカとの距離を縮めた。
「イルカ先生とがいいんです、俺は」
心なしかカカシの語気が強まったような気がする。
「で、でも」



「あ、そうだ!」
思い出したようにカカシは、ぽんと手を打った。
「そうそう、お酒の他にも頂き物ですが美味い珍味があるんです。酒の肴に最高ですよ」
その珍味とは滅多に手に入らない高級品だった。
イルカの心が、ぐらっと揺れる。
美味そう、食べてみたいと気持ちが傾き始めていた。
それをカカシは敏感に察したのか、止めとばかりにイルカを誘う。
「いいじゃないですか、明日は俺もイルカ先生も休みですし」
なんなら俺んち泊まっていっても全く構いません、とカカシは甘い言葉を吐く。
「ほら〜」
カカシは、これでもかというほどに笑顔を顔に貼り付けた。
「俺たち独り身でしょ?休みなのに独りで過ごすなんて考えただけで寂しいじゃないですか」
そう言われると無下にできないイルカである。
「お誘いは嬉しいんですが」
控えめにイルカは主張を述べた。
「俺、明日は休みなんですが午後から用事がありまして」
「用事?」
人の良さそうな笑みを浮かべているカカシの片眉が跳ね上がった。
「誰かと会ったりするんですか?」
笑顔なのにカカシの顔は、ちょっと怖い。
「いえ」とイルカは首を振った。
「偶には鍛錬しようかと思って演習場を借りたんです」
イルカはカカシに説明した。
「ほら、体が鈍っていますから」
アカデミーや受付の仕事の都合上、イルカは余り任務に出ない。
「そうですか?ぜんぜん、鈍っているようには見えませんけど」
言いながらカカシは確かめるようにイルカの肩や腕を触った。
ごく自然に。
「筋力も落ちていないようですし大丈夫ですよ」
上忍としてのアドバイスもしている。
「カカシさんにそう言ってもらえると嬉しいんですが」
はにかんだ笑みをイルカは浮かべた。
「体術とか少しはやらないと」
あくまで謙虚なイルカである。



「そうですか」
イルカの返事を聞いて少し考えたカカシは提案した。
「俺も休みなのでイルカ先生のお相手しましょうか」
「え?」
「体術をやるにして相手がいた方が張り合いがでますよ」
「それってカカシさんが俺を相手にってことですか?」
意外そうな顔をしてイルカは目を瞠った。
「そうです〜よ」
カカシは頷いた。
「俺でよかったら手取り足取り教えますよ」
ね、と笑顔をイルカを誘惑している。
「しかし上忍の方が中忍の俺に・・・」
イルカは突然のカカシの提案に戸惑っていた。
自分とカカシとでは実力の差がありすぎて、逆に体術の練習にならないのではないかと。
「まあまあ、イルカ先生」
カカシはイルカの肩に手を回した。
困惑したイルカの肩を抱いて廊下を歩き始める。
「いいじゃありませんか、上忍と中忍の仲がいいってことは戦場においてはチームワーク、強いては里を守ることに繋がるんですから」
「そうでしょうか・・・」
「そうそう」
カカシに笑顔で自信たっぷりに肯定されて。
そうまで言われては断れないイルカであった。



遠目からカカシとイルカを見ていた人物たちがいた。
物陰に隠れて気配を消して二人を観察していたのだ。
「あれって何かしらねえ」
そう言ったのは上忍の紅であった。
「さあなあ」
適当に返事をしたのは同じく上忍のアスマである。
「あれってさー」
甘いものを口に入れて、もぐもぐとさせながら言ったのは特別上忍のアンコだった。
「誘惑ってやつじゃないの」
「誘惑って?」
「誘惑だあ?」
紅とアスマは同時に声を上げた。
「いわゆる一つの恋の駆け引きってやつじゃない」
「恋・・・」
「・・・恋」
紅とアスマは黙り込む。
最近、カカシの様子がおかしいので、それとなく見ていたのだが。
「そうだよ」
アンコは、にっこりと笑う。
「カカシに春が来たってことでしょう」
季節外れのね、と付け足した。



誘惑2



text top
top