雪山の出会い 後編
さっきまであんなに元気に話していたのに。
イルカは体調でも悪かったのだろうか、それが寒さで急激に悪化してとか?
悪い想像が脳裏をよぎる。
俺は、それに気づかなかったのか。
後悔が襲ってきたが、それより一刻も早くやらなければならないことがあった。
イルカを里に連れ帰り、医者に診せなければ。
場合によっては入院が必要かもしれないし。
こんなことなら早く里に帰ればよかったな。
カカシは自分の防寒マントでイルカを包むと背に負った。
イルカの体はとても軽い。
この軽さなら、自分は里まで余裕で走ることが出来る。
大丈夫。
目を固く閉じた背中のイルカを一度見るとカカシは全力で雪山を駆け抜けた。
里までは直ぐだ。
イルカは助かるはずだ。
初めて会った人間に、ここまでカカシがする義理はないはずなのだが。
走りながらカカシは考えた。
狭い空間で身を寄せ合っても嫌じゃなかったのはイルカが初めてだな、と。
それに煩わしく思わず、イルカの話をずっと聞いていたのも不思議だ。
どうしてだろう、と答えを出したかったが後にすることにした。
冬が過ぎて春になった。
木の葉の里を元気に歩くイルカの姿がある。
そして横にはカカシの姿が見受けられた。
二人は楽しそうに話をしながら歩いている。
「でもさ、イルカが俺のこと、イルカのお父さんと同い年くらいだと思っていたとはね。」
拗ねたような口調のカカシにイルカは苦笑する。
「だから、あれは危機的状況の中でカカシさんに出会ってしまったからですよ、多分。」
イルカは言い訳するように言った。
「カカシさんがとても大きく見えて、頼れる人だと安心してしまったんです。」
頼れる人、と聞いてカカシは少し機嫌を直した。
「そうだよね、イルカにとって俺は頼れる大人だし。」
にこにこと相好を崩す。
逆にイルカが言い返した。
「カカシさんだって、初めて会った時、俺のこと小さな子供だと思ったんでしょ?」
初めて雪山で会った時、イルカの年齢は成人一歩手前の十九歳だったのだ。
「だって、あんまり小さいからさ。」
カカシが肩を竦める。
「子供にしか見えなかったんだよね。」
「一言多いです。」
イルカが隣を歩くカカシを肘で小突く。
「俺は今年二十歳なんですよ。」
「うん、知ってる。」
カカシがイルカの手に自分の手を自然に重ねて指を絡める。
「俺も大人でイルカも、もう直ぐ大人で良かったね。」
カカシの言葉にイルカの頬が染まった。
「そうですね。」
初々しいイルカを見て、カカシは満足げに微笑んだ。
雪山で二人きりになって、最初は面倒だなと思ったけれど。
でも。
あれが、世に言う運命的な出会いだったんだろうな。
カカシは自分なりに、そう答えを出して納得した。
イルカを里に連れ帰り医者に診せて入院させて、それからイルカが気になって毎退院するまで毎日、見舞いに行ってしまった。
退院してからもイルカの家に何度となく訪れてしまい、気がつくと昼も夜も一緒にいた。
イルカもカカシのことを嫌がるそぶりも見せず、一緒にいるのを嬉しそうにしている。
こういうもんなのかな。
カカシはイルカと自分を結ぶ手に力を込めた。
こういうもんなんだろうな、恋人って。
これでいいんだ。
だって幸せだから。
終り
雪山の出会い 前編
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