雪山の出会い 前編
変な忍と遭難したものだ、とカカシは、そんな感慨を込めて横に座るイルカを眺めた。
現在の二人の状況は、猛吹雪きの山で遭難中。
風に飛ばされた雪で出来た雪の塊に穴を掘って簡易のかまくらを作って、そこに避難している。
吹雪は未だ止む気配を見せない。
それどころか、どんどん強くなっていて、持っている食料は僅かだった。
だがカカシは比較的楽観視していた。
いざとなったら、雪山を駆け下りるくらいの足の速さを持っているし体力もある。
それをしないのは、ただ面倒くさいなあ、という理由からだけであった。
吹雪が止んでからで帰ればいっか、と思っていたカカシのところへイルカは現れた。
聞いてみるとイルカはカカシと同じく任務の帰りで、雪山で道に迷ったらしい。
同里の忍に会った時イルカは心底嬉しそうに、そして安心したように笑った。
年若いイルカは年上で上忍のカカシを見て頼れる存在に感じたようだ。
「こんなところで木の葉の忍の方に会えるなんて本当、ついてます。すみません、俺、道に迷ってしまって。」
恥ずかしそうに、そう告白したイルカはカカシに頭を下げた。
「お願いです、木の葉の里まで同行させていただけないでしょうか?」
必死の思いで、お願いされてカカシも否とは言えなかった。
おまけに相手は自分より若い。
若いというよりは幼い感じだ。
そんな子供の忍を放り出して自分だけ里に帰ったら寝覚めも悪そうだし。
カカシは不承不承、承諾した。
そして。
今、二人で、簡易かまくらで身寄せ合い、吹雪をやり過ごしている。
くっ付いているのは体温を逃がさないというのもあるが単に、かまくらの中が狭かったというのもある。
カカシとイルカは膝を抱えて肩をくっ付けて座っていた。
カカシの肩からイルカの体温がほんのり伝わってくる。
少し低めの体温だった。
体力が、だいぶ寒さで失われているのかもしれない、とカカシは推測する。
イルカの自己紹介を聞いた時中忍と言っていたし、イルカは体も小さめなので上忍のカカシより体力がないのは明らかだった。
「あ、畑上忍。」
そんなことを考えているカカシへイルカが何かを差し出してきた。
「よかったら食べませんか?キャラメルですけど。」
「キャラメル?」
任務にキャラメルって・・・とカカシは少し眉を顰める。
兵糧丸の方がいんじゃないの?
イルカはそんなカカシの表情を読んだがごとく言った。
「はい。兵糧丸は切れちゃったんで、その代わりに。」
キャラメルを一粒、イルカはカカシの手の平に乗せた。
「甘いしカロリーも高いので、今の状況で食べるのはいいんじゃないかと思いまして。」
確かに甘いものは疲れをとる効果がある。
それはどちらかというとイルカに必要だと思ったが、カカシが食べなければイルカも食べないであろう。
カカシはキャラメルを口にした。
「・・・何の味?」
思いがけない味に口元を押さえてカカシはイルカを見た。
「玉子焼きみたいな味がするけど。」
「あ、それはきっと『伊達巻き』味ですよ。」
「伊達巻きって、正月に食べるあれ?」
「そうです。」
イルカは嬉しそうに説明を始めた。
「このキャラメル、お正月の料理の味を再現したものなんですよ。全部で末広がりの八十八種類あって。」
自分も、とイルカは口にキャラメルと入れた。
「あ、甘酸っぱい。これは『なます』味ですね。」
顔色も変えずに、もぐもぐしている。
おまけに「結構、美味いですねえ。」と感想を述べた。
一粒二百カロリーもある事を聞くとカカシは、それ以上食べなかった。
「もう俺はいいから。自分で食べなさいよ。」
体力を補っておきなさい、最もらしく言ったのだが、その実、それ以上正月料理の味というキャラメルを食べたくなかったのだ。
上忍ぶって無難にやり過ごした。
「それでですね。」
かまくらの中で、無口なカカシにイルカは色々な話をした。
自分に気を遣っているのかもしれないとカカシは薄っすらと思う。
そう思うくらいイルカは一生懸命話しをしていた。
忍になって、もっとしたいことや大好きなラーメンのこと、この前読んだ本のこと。
果ては先日、自分の見た夢の話までし始めた。
「で、青い目の三毛猫と蝶ネクタイをした柴犬が言うんですよ。・・・梔子と無花果を入れた雑煮を象二頭が食べたいって言ってるから作れって。」
「ふーん。」
カカシは気のない相槌を打った。
「だから・・・俺はですね・・・・・・。」
気づくとイルカの言葉が途切れてから随分と沈黙が流れた。
カカシの耳には風と氷が吹き荒ぶ音だけが聞こえる。
はっとしたカカシが横を見るとイルカがカカシの肩に頭を預けて目を閉じていた。
眠っているように見える。
「イルカ?」
軽く体を揺すってみたが、目は固く閉じられている。
いつからイルカは眠ってしまったのだろう?
白い頬に、そっと手を滑らすと氷のように冷たくなっていた。
「・・・イルカ。こら、起きなさい。」
カカシはやや乱暴にイルカの体を揺すってみた。
「ちょっと木の葉に帰るんでしょう?」
がくりとイルカの体がバランスを失い崩れ落ちた。
反応のないイルカの体を支えてカカシは愕然とする。
体も氷のように冷たくなっていたのだ。
雪山の出会い 後編
text top
top