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うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子48




好き。
イルカは自分のことが好きなのだ。
そう認識したカカシの胸が万感の思いで満たされた。
嬉しい。
生きてきて良かった。
こんな幸せな日が俺の人生に訪れるなんて。
嬉しすぎて顔が緩んでしょうがない。
感無量とは、このことかもしれなかった。



幸せすぎて夢かもしれないとカカシは、一応、自分の頬を抓ってみた。
痛くない。
もう一度、もっと力を入れて抓ってみたが痛くない。
幸せは痛みを凌駕するのか。
それとも真実は別のところにあって、これは夢なのか・・・。
もう一度だけ、と自分の頬を抓ろうとしたカカシを見ていたイルカが不審に思ったのか声を掛けてきた。
「カカシさん、何してるの?」
「何って抓っているんだよ。」
「なんで?」
「夢か現実か、見分けるために。」
「夢?」



カカシの言っていることが意味不明とばかりにイルカは首を傾げた。
「夢と現実と抓ることに何の因果関係があるの?」
さっぱり解らないといった顔をしている。
カカシの行動によりイルカは現実に引き戻されていた。
先ほどの甘い空気のようなものは微塵もない。
話の流れが完全に変わっていた。
「だいたい、カカシさん起きているのに夢見るなんて器用だねえ。」
話が、どんどん明後日の方向にずれていく。
脱線した話は元に戻りそうにない。
「そういや、起きているのに夢を見るっていう、なんか、そういうホラー映画あったな〜。」
イルカは、いつもの調子を取り戻して暢気に話している。
「カカシさんも、今度一緒に見る?」
誘われた。



「いや、それは、またの機会に。」
話の選択を失敗したのをカカシは感じた。
せっかく、いい雰囲気だったのに。
大事なことを話していたのに、俺の馬鹿・・・。
だいたいにしてイルカから返事を貰ってないじゃないか。
恋人になってほしい、という俺の一世一代の告白は、どこいったんだ。
「あのさ、イルカ。それより・・・。」
なんとか話を戻そうとしたカカシだったが、それはイルカに見事、邪魔された。



「俺、お腹空いちゃったな〜。」
イルカが、うーんと伸びをして立ち上がる。
切れた唇の端を少し触って痛そうな顔をした。
「痛くて口が余り開かないけど、ご飯食べたい。」
珍しく、そんなことを主張する。
もしかして自分からご飯が食べたい、なんて言ったのは初めてかもしれない。
「あ、ご飯ね。じゃあ、簡単に何か作ろうか。」
釣られてカカシも立ち上がる。
食事の準備は今のところカカシの役目だ。



「やった!」
イルカは嬉しそうに笑う。
「俺、洗面所で顔とか洗ってくるね。」
「・・・ああ、うん。」
力なくカカシが返事をするとイルカが「どうしたの?」と顔を覗き込んでくる。
「元気がないね、カカシさん。」
「べっつに〜。」
拗ねたようにカカシが言うとイルカは、また笑ったのだった。




カカシの作った夕飯を滞りなく食べ終えて片付けが終わった時、それは訪れた。
食後にカカシは茶、イルカはジュースなんて飲んで、ほっと一息ついた時だ。
「あの、カカシさん。」
「ん〜、なに?」
テレビがついていたのでカカシは、それを見ながら返事をした。
適当に。
なんだか、色々あって疲れていたのだ。
今日は人生で一番の転機を迎えた。
迎えたけれど、ちょっと気分がもやもやとしている。
胸に少し蟠っているものがあった。



「あのね、俺、考えたんだけどね。」
「何を〜。」
一口、茶を飲み、だらけた返事をする。
「さっき、カカシさん言ったでしょう。」
「さっき〜?」
「えっとね。・・・恋人になってって俺に言ったこと・・・。」
「こいびと〜?」
すっかり肩の力が抜け切っていたカカシの頭が、それを理解するまで数秒を要した。
カカシは茶を飲んだ。
ごくり、と。
もう一口、飲む。



「まだ、よく解らないことが多いけど。」
イルカは舌足らずに一生懸命に話している。
湯飲みに口をつけたまま、カカシは、やっとイルカを見た。
ジュースの入ったコップを両手で握り締めているイルカは視線をテーブルに落としている。
コップを握ったイルカの手には力が入っていた。
「俺・・・。」
イルカは何か大切なことを言おうとしている。
そんな雰囲気だ。
「もし、カカシさんと、ずっとずっと一緒にいられるなら・・・。」
顔を上げたイルカはカカシを、しっかりと見据えた。
黒い瞳が緊張の所為か、潤んでいた。



「カカシさんの恋人になりたいって・・・。」



その瞬間、カカシは飲んでいた茶を噴き出していた。
しかも湯飲みに口を付けた状態で噴き出していたので、噴き出した茶が顔全体に逆噴射している。
ひどい有様だった。
イルカを見つめるカカシの顔からは、ぽたぽたと茶の滴が垂れている。
しかし、そんなことに構っている暇はない。
急いで、袖で顔を拭う。
「本当?」
カカシは叫ぶと暗部ならでは素早さでイルカの真正面に移動する。
「本当に本当?」
イルカの肩を掴んで確認した。
「う、うん。」
「本当に本当に本当?」
「・・・・・・うん。」
「本当に本当に本当に本当に・・・。」
それは延々、続きそうだった。



「本当だよ、カカシさん。」
カカシの迫力に押されていたイルカが、やっと、それだけ言うとカカシは、はああっと深々と息を吐いた。
安堵の息である。
イルカはカカシがした告白のことなんてスルーしてしまったとばかり思っていたから。
だけどイルカには考える時間が必要なだけだったのだ。
ご飯を食べたりしている間、イルカはイルカなりに、ちゃんと真面目に考えていたらしい。
好きだという気持ちと、恋人になるという気持ちは、まだまだ結びつくまで時間が掛かりそうであったが、カカシはそれでも良かった。
時間はたくさんある。
待てばいいだけだ。
イルカの口からカカシのことが好きだと言ってもらっていないけど。
多分、それも待てばいいだけ。



心も体もイルカは成長途中なのだから。
恋人が成長するのを見守るのも楽しいに違いない。



「ねえ、イルカ。」
幸せな気持ちでカカシはイルカに話しかけた。
「キスしてもいい?」
訊いてみる。
その言葉にイルカは、ちょっとだけ怯んだ。
「キスって・・・。」
「恋人のキスだよ。」
前にしたような、あんなキスではなくて。
もっと優しくて甘いキス。
そう囁く。



こくんとイルカの首が縦に振られた。
そんなイルカに、にっこりと微笑んだカカシは。
イルカを抱き寄せて。
大事に大事に腕の中に仕舞う。
「イルカ、目を瞑って。」
静かに眼を閉じたイルカの顔に自分の顔を近づける。
可愛いなあ。
大好きだ。
そんな想いを込めて。



ゆっくりと唇を重ね合わせた。
イルカの唇は小さく柔らかく温かく。
カカシの唇を待ち受けていたように。
しっとりとしていた。
それは途轍もなく甘美なものであった。






それから数年。
カカシには大事な人がいる。
大事な人がいるから、どんな任務でもやり遂げることが出来た。
その大事な人は、いつでも里でカカシの帰りを待っていてくれる。
それはイルカだ。



のちに、イルカはカカシに話してくれた。
「初めてカカシさんがキスをしてくれた時、呪いが解けたと思いました。」
悪戯っ子な顔になる。
「呪いなんてない、と暗部のお兄さんに教えてもらいましたが今、思えばカカシさんの素顔を見た時からカカシさんのことが気になっていたのかなあ、なんて。」
「それって、一目惚れになるんじゃないの?」
カカシが揶揄えば、イルカは照れて笑う。
「だから、それは、いつか恋人になるように、との呪いで。カカシさんと恋愛成就した時点で、きっと、その呪いは消えたんですよ。」
恋人という言葉にイルカは照れていた。
もうすぐ、二十歳になるというのに。



未だ、カカシの目には子供のように映るイルカだ。
子供のように可愛く見える。
でも。
イルカが二十歳になったら。
そのことにカカシは胸、躍らせる。
イルカが成人するまで、と約束を守ってカカシは酒を飲んでいない。
そして未成年には手を出さない、ということを信条にし、大事なイルカを傷つけることがないようにキス以上のことはイルカとしていない。
唇が触れ合う以上のことはしていないのだ。



だからイルカが成人して二十歳になったら。
楽しいことが、たくさん待っている。
そのことを考えると、わくわくした。
「カカシさん?」
にやけた顔をしていたのかイルカが不思議そうにカカシを見る。
「どうかしたんですか?」
「な、い、しょ。」
立てた人差し指を唇に当ててカカシは自分の想いを秘密にする。
「え〜、ずるい!カカシさん、教えてよ。」
イルカが抗議した。



あれから随分と成長し、多くのことを学び言葉遣いも大人びたイルカだったが、時々、子供のような言葉遣いに戻るのが愛らしかったりする。
「一人だけ楽しそうなんて、ずるい〜。」
「まあまあまあ。」
頭を撫でてイルカを宥めた。
「もうすぐ分かるから、それまでのお楽しみにしておいて。」
ね?とウインクするとイルカは赤い顔をして黙ってしまう。
目はカカシを睨んでいるが迫力はなく、可愛いだけだ。



かわいい、あの子は大きくなって。
俺のかわいい、あの子になった。
俺のあの子はかわいい子。



そう呟いたカカシは赤くなったイルカに優しく口付けたのであった。


終わり





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