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ただ愛しいだけなのに1



はたけカカシには恋人がいる。
恋して恋して、焦がれるほどに恋して、やっと手に入れた。
付き合ってほしいと告白したときは声が震えていたかもしれない。
しかし、もう待てなかった。
一年我慢して離れていて、一年遠くから姿を見続けて、一年近づいて声を聞いて。
そうしたら、やっぱり。
好きで好きで、どうしようもなくて。
ある日、呼び出して告白をした。
「俺と付き合ってください」
相手は大きく目を見開いてカカシを見て。
ひどく驚いた顔をしていた。
カカシが言ったことが解らないという風に頭を振る。
目を閉じて俯いてしまった。
だから。
もう一度言った。
「俺と恋人として一生涯、付き合ってください」
相手は迷っているようだった。
俯いてしまった顔を上げずにカカシを見なかった。
やがて小さい声が聞こえて。
「少し・・・考えさせてください」
それだけ言われた。



「少しって、どれくらいですか?」
断られたではないにしろ、かといって許諾されたわけでもない。
カカシは期待と失望が織り交ざったような気持ちで問うと、相手は俯いていた顔を上げた眉を下げて、カカシを見る。
困らせてしまったらしい。
「そうですね」
相手は瞼を下ろして目を閉じて、開ける。
「一週間ほどではどうでしょうか」
「分かりました」
カカシは頷いた。
「来週の今日、返事がいただけるということでいいですよね?」
「はい」
相手は深く頷いた。
「いい返事を待っていますね」
黒い目がカカシを映す。
「俺の言ったことは、からかいでもなく冗談でもなく嘘でもありませんから」
返事はない。
最後にカカシは相手の名を呼んだ。
「イルカ先生」
カカシが告白した相手は同性だった。



イルカと初めて出会ったのは里外の任務でのことだった。
ありきたりかもしれないが、怪我したカカシを助けてくれたのだ。
丁寧に怪我の処置をしてくれて、木の葉の里に連れて帰ってくれた。
その頃、カカシは里外の任務が主だったので滅多に里に帰ることはなく、久しぶりの帰還であった。
カカシを里に連れて帰ってくれたイルカは、カカシを病院に運び退院まで、しょっちゅう見舞いに来てくれた。
それは久しぶりに里に帰ってきて知り合いが碌にいなかったカカシにとっては有難いことであった。
また、里に常駐している忍と交流するのは新鮮で。
見舞いに来てくれるイルカと話すうちに、イルカという人間にも惹かれていった。
自分にないものを持っている人。
屈託のない笑顔や裏表のない話し方、優しい瞳。
闇の中で生きてきたカカシにとってイルカは光の中にいるような人間だった。
のだが、イルカと交流が深くなるにつれて、それが間違いだったと気がついた。
誰にでも闇がある。
イルカも例外ではない。
明るく振舞うイルカにも悩みや憂いはあった。
それを知ってもカカシはイルカに魅せられていった。
怪我が治ると、また里外の任務が与えられた。
里にいるイルカと離れることになる。
だけども一年間。
イルカのことを思い出して、任務を頑張れた。
イルカの姿や顔、声、話したこと総てがカカシの任務での支えとなっていた。
死にそうな目にあったときでさえ、イルカに再び会いたい。
その一心で頑張ったのだ。



イルカとの再会は一年後だった。
偶然なことに初めて会ったときのように里外であった。
今度はイルカが怪我をして倒れていたのだ。
目を閉じて血を流して倒れているイルカを発見した時、カカシは己の血が沸騰するような感覚に襲われた。
誰が、こんなことを。
イルカを傷つける者が許せなかった。
そのときに自覚したのだ、イルカに対しての気持ちを。
好きだと。
イルカの恋していると。
倒れているイルカの周りには誰の気配もせず、カカシは報復を諦めてイルカを連れて里へと急いだ。
病院へ連れて行くと入院の措置が取られ、カカシは里に居る間、毎日のようにイルカの見舞いへと行った。
イルカはたいそう恐縮しており、カカシに厚く礼を述べた。
「すみません、あなたのような人にご迷惑を掛けてしまって」
引っかかる物言いだった。
「俺・・・。いえ、私なんかのために、大事な時間を割いてしまって」
カカシの素性について、誰かに何か言われたのかもしれなかった。
「本当に申し訳ありません」
イルカは病院のベッドの上で深く頭を下げたのだった。
頭を下げると、さらりとした髪が肩から滑り落ちたのが印象的だった。



回復したイルカが退院するとカカシもイルカに会う機会は減ってしまった。
それでも、里外任務に就いていても、比較的、里に帰って気安い任務が増えた。
里に帰ってきたときは必ず、イルカを見に行った。
遠くから姿を眺めるだけだったけど。
イルカはアカデミーの先生をしていて、火影の仕事を手伝っていたり、受付所の仕事をしていたり。
忙しなくしていた。
ただ、時折、一人で遠くを眺めていたりして。
寂しそうにしていることがあった。
そんなときのイルカは周りを全部、遮断していて人を寄せ付けることをしないで。
ただただ、一人でいたいようであった。
一人というより独り。
そんなイルカの姿を度々、目にしたカカシはイルカの傍にいたくなった。
傍にいて、できたら抱きしめてみたい。
そうしたら、寂しそうな顔をしないかもしれない。
そんなことを考えてカカシは次の年に里に帰ってきた。
そしてイルカに近い立場になれる下忍を指導する上忍師を引き受けてイルカとの接点を持った。
幸いなことに下忍の子供たちはアカデミーでイルカの生徒であったし。
イルカの近づき親しくなるのに、そう時間は掛からなかった。



一週間後。
カカシはイルカから返事を貰った。
返事は『諾』。
了承だった。
「ありがとう、イルカ先生!」
本当に嬉しかったのでカカシは素直に喜びを表した。
これで名実ともにイルカとの関係は明白になった。
恋人だ。
望んでいた関係になれた。
「いいえ、こちらこそ」
よろしくお願いします、と言ったイルカは、ぎこちなくて。
その顔は憂いに満ちていた。




ただ愛しいだけなのに2



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