地球征服物語 7
「じゃあさ。」
カカシの口から驚くべき発言が出た。
我ながら馬鹿らしい発言だとは思ったが、イルカを繋ぎとめる方法としては今はこれしか思いつかなかった。
「俺に捕らわれちゃいなさいよ。」
「え?」とイルカは顔を上げた。
「俺がイルカ先生を捕まえた。だからイルカ先生は帰れない。ずっとここにいればいい。」
「この星にですか?」
「違うよ。俺の家に。ここで、ずっと暮らせばいい。ずっと、って一生だよ。」
イルカは見開いた目でカカシを凝視している。
顔には何故?と書かれていた。
「でも、俺、カカシ先生の命を奪おうとしていたんですよ。」
「図らずもでしょ?それにイルカ先生、いっつも悪いと思っていたでしょう?分かるよ。」
「でも。」
イルカは言い淀んだ。
「俺・・・。」
迷っている様子が見て取れる。
イルカの立場としてみれば、処分を受けてもしょうがないようなことをしていたのに何故カカシがこのような言葉をいうのか理解できないのだろう。
迷うイルカを見て、ここぞとばかりにカカシは畳み掛けた。
イルカの話が嘘でも本当でも、この際どっちでもいい。
「いいじゃないの。ここにいれば。俺の家にいれば俺が里にいる時は、いつも一緒だし寂しくないよ。」
揺れるイルカの目を見て言ってみた。
「俺を待っていて、イルカ先生。俺もイルカ先生を待っているから。」
数日後。
一応、里長である火影には報告しておこうとカカシは内密に五代目火影に報告した。
「あのう、イルカ先生のことなんですが。」
「ああ、一緒に暮らしているんだろう?」
五代目はあっさりと言った。
「イルカから聞いたよ。」
「ええ?イルカ先生から?」
「ああ。最近、悩んでいるみたいだったが私も忙しくてねえ。名刀を貸してほしいとか強力な毒がほしいとか言ってきたから用立ててはやったんだが。」
「・・・五代目だったんですか、提供者は。」
五代目は机に両肘をついて組んだ手の上に顎を乗せた。
「カカシが構ってくれているようだから安心はしていたんだけどね。」
「はあ。」
「カカシのことは前から好いているみたいだったし。ほら、ナルトがいた時から傍にイルカがちらほら居ただろう?」
そういえば、そんな気がする。
考えてみれば強い人を倒すというのなら五代目を狙うほうが理に叶っているような気もするし。
カカシを狙ったというのは根底に好意があったのだろうか?
「最近、悩んでいるみたいだから心配だったんだけど落ち着いたようだね。」
ありがとうよカカシ、とお礼まで言われた。
「あの。どういうことなんですか?」
五代目は、どうしてイルカのことを詳しく知っているのだろうか?
「だって。海野夫妻はイルカを拾った時、ちゃんと里に報告してきたよ。不思議な生き物を拾いましたってね。私も、その頃里にいたし見たんだよね、半透明のイルカをさ。」
「そんなことが。」
「だから、知ってるやつは知ってるのさ。イルカが、この星の生き物じゃないかもしれないってね。といっても一応機密扱いなんだけどね。」
五代目が軽快に説明してくれた。
「特に害悪を為すような感じはしなかったし、地球征服って言っても大体にして子供の言うことだったしねえ。まあ、里では要注意人物として一応マークはしていたけど。私もイルカの体調管理とかしていたし、知らない仲じゃないのさ。」
何だ、五代目は全部知っていたのか、とカカシは肩の力が抜ける。
それにね、五代目が思い出したように言った。
「海辺で拾って体が半透明だったから、私は『海月』と名づけたらと薦めたんだがね。」
見事に断られたよ、と言って苦笑いした。
クラゲじゃなくて心底良かった、と思ったカカシは本音が出てしまう。
「それで良かったですね、変な名前じゃなくて。」
綱手のネーミングセンスは今一つだ。
「なんだって!」
ぎっと睨みつける五代目からカカシは一歩下がった。
「じゃあ、まあそういうことでイルカ先生は俺が一生、面倒見ますから。」
イルカに情が移り、心のどこかで可愛いと思っている自分がいる。
それは、まだカカシにも解らない、名前の付かない仄かな気持ちだけど。
でも、もうイルカのことを手離すのは無理だろう。
序でに口移しで水を飲ませたときにキスもしたと言えば五代目は、ちょっと眉を顰めたものの了承したようだ。
「ああ。」
五代目は大きく頷いた。
「まあ、いいさ、頼んだよ。きっと海野夫妻も空の上で喜んでいるさ。」
カカシは一礼して火影の執務室を後にすると、イルカのいる家に足を向けた。
何だか拍子抜けだけど、めでたしめでたしだ。
これで良かったんだな。
総てが片付いたとカカシはイルカの待つ家に急ぐ。
二人がこれからどうなるか分からないが、多分、未来は幸せに満ちているに違いない。
更にその数日後。
カカシは、事の次第をどこからか知った紅とアスマから複雑な表情で「おめでとう。」を言われたのだった。
終り
地球征服物語 6
text top
top