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ネコは人にあらず13



★オリキャラ注意


撫でられる?
撫でられるって誰が誰を?
カカシの顔を見つめていると人の悪い笑みが目に入る。
なんだか、とても嬉しそうで。
どういうことだ、とイルカは知り合いの方へ助けを求めるように振り向いた。
「なるほどねえ」
知り合いは、うんうんと一人で頷いている、これまた満足そうに。
「ちょっと一人で納得すんな!どういうことだよ、これは?」
説明を求めると、すんなり、あしらわれた。
「どういうことって言われてもねえ」
「最初から薬の効き目について言えってば」
「はいはい」
人を食ったような返事をしてから知り合いは簡潔明瞭に説明を始めた。



「この薬はね、飲んで最初に見た相手を次に見ると動物の耳と尻尾が生えてくる。距離が離れれば耳と尻尾は消える」
「それは聞いた」
「で、耳と尻尾が生えれると見た相手に対して無条件で懐きたくなって、なおかつ相手は動物の耳と尻尾が生えた相手に無償の愛の感じて、無性に愛しくなるんだよ。で、撫でずにはいられない」
どうやら無償と無性を掛けたらしい。
「ちなみに動物の耳と尻尾は薬を飲む前、最後に見た動物の耳と尻尾が生えます」
そういえばイルカは薬を飲みに、ここに来る前に黒猫を目撃していた。
「変な動物だったら、どうすんだよ?」
突っ込みを入れると知り合いは肩を竦めた。
「そこは抜かりがないよ。あの黒猫はオレだったんだから」
「はあ?」
「だから最初からイルカに黒猫の耳と尻尾が生えるように算段しておいたんだ」
脱力感にイルカは襲われる。
「なんなんだ、それ」
「上手くいっただろ?」
知り合いは親指を立ててウインクしてくる。
「上手くって・・・。じゃあ、もしもカカシさんがいなかったら、その時はオレは誰に撫でられていたわけ?」
疑問をぶつけると知り合いは立てていた親指で、くいっと自分を指差した。
「オレかな?」
もっと脱力した。
「だいたいさ、この薬は、どんな役に立つわけ?」
それが一番、知りたいことでもあった。
バカバカしいような、この薬。
何の研究で何の開発をしているのか、どのように木の葉の里の役に立つのか気に掛かる。
「よくぞ聞いてくれました!」
知り合いは胸を張った。
「これを戦場で敵に飲ませれば一発で闘いは終わる!」
確かに、そうかもしれない。
でも。
「誰が、いつ、どうやって敵に薬を飲ませるんだ?」
「・・・・・・あ」
そこまで考えていなかったらしく知り合いは黙り込んでしまった。



「だいたいなあ、いつも思いつきで薬を作るから、こんなことに・・・」
食って掛かるイルカの口が後ろから塞がれた。
カカシの手によって。
もがもが、と何かを言おうとするイルカの口を封じている。
「あのさ、ちょっと訊きたいんだけどね」
そういえばカカシは訊きたいことがあると言っていた。
それを思い出したイルカは動きを止める。
「イルカ先生に、もう耳と尻尾は生えないって言っていたけど」
「薬を飲まない限りは」
「また、この薬を飲んだら耳と尻尾は生えるよね」
「そうですね」
「そのとき、薬を飲んで最初に見た人にイルカ先生は懐いちゃうの?」
「そういうことになりますね」
「オレ以外のやつがイルカ先生を撫でたりするわけ?」
「まあ、そうなりますよね」
「ふーん」
カカシが知り合いに薄っすらと笑みを浮かべる。
「今後はイルカ先生を実験台にして開発した薬を飲ませるのはなしね」
「えー」
「だって変な薬を飲んでイルカ先生がオレじゃない人間に懐いたら困るもの」
主に困るのはイルカ先生に懐かれてた相手だと思うけどね、とカカシは物騒な発言をした。
「じゃあ、しょうがないですね」
知り合いは、あっさりと承諾した。
「イルカは今日限りで薬の試飲役は終わりということでいいです」
「うん、そうして」
「分かりました」
何故かカカシとの間でイルカのことが取り決めされていた。
「ということで、オレたちは帰るから」
カカシはイルカの口を手で塞いだまま、片手でイルカを持ち上げて退室した。



出口まで首尾よく持ち上げられて外に出たところで、やっとカカシはイルカの口から手を外した。
ついで地面に下ろされる。
「はあー」
大きく息を吸い込むイルカ。
「苦しかった・・・」
「あ、ごめんね。イルカ先生」
慌てて謝ったカカシはイルカを下ろしたものの、手は離さない。
イルカの体に触れたままだ。
正確に言うとイルカの腰に腕が回っている。
「あのう、カカシさん」
その体勢に、ひどく居心地の悪いものを覚えてイルカは身動ぎした。
もじもじと体を揺するがカカシは察してくれない。
「え、と、そのですね」
男と男が、いつまでもくっ付いているのは余り良い図はない。
もう薬の効き目は切れたのでカカシがイルカを無性に撫でたいと思ってはいないはずであるのだが。
でも、さっき・・・。
イルカはカカシの発言を思い出していた。
・・・正々堂々、撫でられるとか言っていなかったけ?
それってオレのことを指すのかな。
思うと同時にイルカの体が熱を帯びる。
カカシさん、オレのことを撫でたいとまだ思っていてくれている?
もうネコの耳も尻尾もないけれど。



「イルカ先生」
「あ、はい」
カカシの話しかけられてイルカは、はっとしてカカシを見た。
真剣な眼差しがイルカを射すくめる。
何かを言いたげなカカシは直球に訊いてきた。
「イルカ先生の好きな人って誰?」
「・・・・・・は?」
「ほら、ここの施設に入る前に『オレは、こんなに好きなのに』って言ってたでしょ」
イルカの呟き声は、しっかりとカカシに聞こえていた。
「まさかラーメンが好きとかじゃあ、ないでしょう?」
先手を打ってカカシが牽制してくる。
「他にも子供がどうとかもなしですよ」
冷や汗が、だらだらを流れ出てきた。
やばい、どうしよう。
本当のことは言いたくない。
カカシが好きだとは・・・。
「オレはね、イルカ先生」
カカシが、もう片方の手をイルカの腰に回してくる。
完全にイルカはカカシの腕の中に包囲されていた。
「イルカ先生が好きです」
「え・・・」
まさかの告白だった。



不意を突かれたイルカは、つい本音を漏らしてしまった。
「オレも、です。オレもカカシさんが・・・」
言ってから口元を押さえる。
しまった、と。
「やっぱり」
イルカの言を聞くとカカシは、にっこりと笑った。
本当に嬉しそうな顔でイルカは、その顔に見蕩れてしまう。
ネコの耳と尻尾が生えていた時のイルカを撫でていた顔と同じであった。
柔らかい手がイルカの頭に添えられた。
その手がイルカの頭を撫でてくる。
とても気持ち良かった。
あまりの気持ちよさと心地よさにイルカは自然と目を閉じてしまう。
ふっと何かが唇を掠めて名残惜しそうに離れていった。
目を開けると目の前にカカシの顔がある。
なんだか、してやったりの顔をして目を細めていた。
「カカシさん」
「はい、なんですか」
機嫌よくカカシは答える。
「オレに耳と尻尾がなくてもオレのことが好きなんですか?」
「そうですよ」
「耳と尻尾がなくてもいいんですか?」
「もちろんです」
「それでいいんですか?」
カカシは微笑んだ。
「まあ、それは切っ掛けに過ぎませんから。ネコのイルカ先生じゃなくてオレは人間のイルカ先生が好きなんです」
「カカシさん」
切っ掛けはおかしな薬を飲んだイルカに生えたネコの耳と尻尾だったが。



「終わり良ければすべて良し、ですよ」
そうカカシは結んだ。
「恋の切っ掛けなんて些細なものです」
カカシは結論付けた。
「まあ、元々、イルカ先生が気になっていたのもあるけどね」
「え」
その言葉はイルカにも聞こえなかった。
「さ、イルカ先生」
カカシはイルカの笑いかける。
魅力的な笑みだった。
「家に帰りましょうか」
「あ、はい」
「家に帰ったらね」
にこにこしながらカカシはイルカを連れて歩き出す。
腰に回っていた手は肩を抱いていた。
「思う存分、イルカ先生のことを撫で回しますからね〜」
「あ、でも、オレ・・・」
「いいからいいから、オレに任せてね〜」
若干、カカシの言い方に引っ掛かりを感じるが。
ネコの耳も尻尾も生えてない人のイルカはカカシの言うことを微塵も疑いもせずに素直にカカシに連れられて行く。
もしも耳が生えていたら嬉しげに揺れているに違いない。
帰る家は多分、カカシの家か。
どちらの家にしろ、これから先、二人で住まうような予感が漂っている。
カカシはネコではなくて人のイルカを可愛がろうとしているはずだ。
決して離れることない。
いつまでも。



終わり




ネコは人にあらず12


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