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ネコは人にあらず1



「あ、こんにちは!」
後ろから声を掛けれてからカカシは振り向いた。
場所はアカデミーの裏庭である。
「あー、ども」
気配には、とうに気がついていたが声を掛けられるまでは振り向くのが躊躇われた。
声を掛けてきた本人自身に興味があると悟られないように。
興味があるのは、もちろんカカシである。
「どちらへ行くんですか?」
追いついてきた人物はカカシの隣に並んだ。
結っていた黒髪が、さらりとカカシの耳を掠めた。
「控え室に行くところです」
「そうですか」
にこっと笑ってカカシを見てくる仕草は子どものように無邪気だ。
「イルカ先生こそ」
ここでカカシは相手の名を呼んだ。
「どちらへ?」
「ああ、オレは」
照れた顔は可愛らしい。
「ちょっと薬品関係の部署に呼ばれていて」
「またですか・・・」
カカシはイルカの言葉を聞いて秀麗な顔を僅かに顰めた。
「この前も行っていませんでしたっけ」
咎めるような口調で言うと「ええ、まあ」とイルカは言葉を濁す。
最近、イルカは暇さえあれば薬品関係の部署に出入りしている。
知り合いがいるので、ちょっとした実験に付き合っているとの話を、ちらっと聞いたので密かに危惧していた。
任務には多くの薬品が使用される。
医療関係から術に関わるのまで様々で種類は数知れない。
薬品の開発は必至だが開発に直接関わっていないイルカが携わるのはカカシは納得がいかなかった。
「体に負担にならない試作品の薬の試飲をしているだけなので大丈夫ですよ」
「・・・それは危ないんじゃないですか」
「大丈夫ですよ」
危険はないです、と事も無げにイルカは言う。
「試作品っても安全なものですから」
結構、面白いんですよ〜と暢気にしている。
「あのねえ、イルカ先生」
カカシの眉が険しくなったのを見てイルカは「カカシさんは意外に心配性なんですね」と言い走ってカカシとの距離を取った。
そして振り返って手を振った。
「ご心配ありがとうございます」
一礼してイルカは行ってしまった。



イルカを見送ってからカカシは、はあと息を吐き出した。
なんか、あの人、放っておけないんだよなあ。
あの人とはイルカのことだ。
いい大人なんだから構わないでおけばいいんだよな・・・。
自分に言い聞かせるがイルカが傍にいると一挙一動、気になって、気がつけば視界に入っている。
どうしたんだろ、オレ。
他人が気になるなんてカカシにしては珍しいことだった。
やっぱ、あれかな。
ポケットに手を突っ込んで一人歩く。
イルカ先生の元教え子を指導しているってのがネックなのかな〜。
現在、カカシは上忍師に就いてはいるのだが指導している下忍の子ども三人はイルカのアカデミーでの教え子なのだ。
ちなみにイルカはアカデミーの教師で受付所の仕事もしていて、火影の付き人のようなこともしていて、あちこち姿を見かける。
むしろイルカの姿を見ない日がないことはないというくらいだ。
カカシとは特に接点はないのだが顔を合わせれば時々、言葉を交わす。
さきほどのように長く言葉を交わしたのは初めてであったが。
一緒に食事をしたこともなければ酒を飲んだこともない。
上忍と中忍の間柄なので友達でもなかった。
本当に知り合いというのが相応しい。
なのに。
イルカのことが気になってしまう。
さほどイルカのことを知っているわけでもないのに。
胸の中が、もやもやとしている。
この感情の名称が解らない。
「あー、なんだかなあ」
頭をがしがしと掻いたカカシは、せかせかと控え室に向って歩き出した。



次の日。
朝、受付所でイルカに会うと元気がなかった。
元気に挨拶はしてくれたのだが顔色が悪かったのだ。
任務の依頼書を受け取ったカカシは、しばしイルカの前から動くことが出来なかった。
いつもなら、すぐに立ち去ってしまうところだが。
イルカの顔色を見ていると急に胸が、ざわついてくる。
「カカシさん?」
動かないカカシを不審そうに見る。
「どうかしましたか?」
それを聞いてカカシは、むっとした。
「どうかしているのはイルカ先生の方でしょ?」
「え・・・」
「ちょっと来なさい」
イルカの腕を掴むと立ち上がらせた。
受付をしている他の中忍に声を掛けた。
「この人、医務室に連れている行くから」
「カカシさん!」
悲鳴のような声を上げるイルカを引き摺ってカカシは強引に医務室に連行した。



医務室に着くなり、有無を言わさずカカシはイルカのベッドに座らせて熱を測った。
「カカシさん、あのう」
「黙って」
「・・・はい」
熱を測ると平熱である。
「カカシさん、オレ、仕事が」
こつんとイルカの額に自分の額をぶつけてくるカカシをイルカは居心地悪そうにして見ている。
カカシの為すがままになっていた。
「熱はないですから、そのう」
次にイルカの脈を測るカカシ。
まるで健康診断のようだ。
「食欲はありますか?」
イルカの訴えを無視してカカシは質問してきた。
「あまり・・・」
「朝は食べたんですか?」
「お茶だけです・・・」
「ふーん」
腕を組んでイルカを観察する。
「体調に変化がないということは」
イルカを睨む。
「昨日、変な薬を飲まされたか何かしましたね」
「う・・・」と言葉に詰まってイルカは答えない。
「何を飲まされたんですか」
かなり、きつい口調だったが、それでもイルカは答えない。
「イルカ先生」
痺れを切らしたカカシは、くいっとイルカの顎を掴むと上を向かせた。
視線が交差する。
「言いなさい」
調べることも出来るがイルカの口から聞きたかった。
「えーっと、ですね」
上目遣いになりながら、恐る恐るイルカは答え始めた。
「なんでも食欲がなくなる薬だそうです」
「・・・・・・は?」
「一日だけ食欲がなくなるっていうことなんで今夜には薬の効き目がなくなって食欲が出るかと・・・」
どーっとカカシに疲れが訪れた。
イルカが元気がなかったのは食欲がなく食べ物を摂取してないためだったのだ。
がくーっとなったカカシは本音を漏らしてしまう。
「なんて、しょうもない薬なんですか〜」
「だから大丈夫って言ったじゃないですか」
イルカは恥かしそうに目を瞬かせた。
「しょうもない薬なんですけど面白いんです」
「っとに、もー」
眉間の皺を深くしたカカシは懐から兵糧丸を一粒、取り出した。
顎を掴んだままイルカの唇に押し当てる。
ごくり、とイルカは、それを飲み込んだ。
「これは?」
「オレが開発した特別な薬です」
しれっとカカシは言った。
本当は、ただの兵糧丸だったのだが。
「ど、どうも」
顎を掴まれたままイルカは礼を述べる。
「あのね、イルカ先生」
ひょいとカカシがイルカに顔を近づけてきた。
唇が触れそうだ。
「もう、薬品の試飲はやめなさい。あなたには合いませんから」
「でも、今日も夕方に約束をしていて」
「約束?」
「昨日、飲んだ薬品の効果の報告と、新しい薬の試飲をするって」
「やめなさい」
「約束したので」
「駄目です」
「でも、約束が・・・」
イルカは頑固だった。
カカシも意地になる。
特に知りもしないイルカに対して何を意地になる必要があるのか・・・。
もはや目的を見失っているような気がする。
「だったら」
強い口調で押し切る。
「オレも一緒に、その薬品の試飲とやらに同行しますから」
「それは・・・」
「もう決めましたから」
きっぱりと宣言した。



それからイルカを仕事に戻らせたカカシは自分も任務に行く。
夕方、イルカを捕まえて一緒に薬品の開発する部署へと宣言どおり同行した。
イルカは「本当に行くんですか?」と信じられないような顔をしていたが。
カカシの決心は変わらない。
重い足取りのイルカと怖い顔のカカシ。
歩く二人の目の前を黒猫が横切った。
黒猫は二人を見て「にゃああ」と一声、鳴いたのであった。




ネコは人にあらず2


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