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カラフルライフ 1



その日、アスマが上忍の控え室に行くと雰囲気が芳しくなかった。
ストレートに表現すれば悪かった。
上忍の控え室ともなれば殺気だったのが偶にいてもおかしくなかったのだが、その日は明らかにいつもと違っていた。
諸悪の根源が上忍の中でも実力を一、二を争う、はたけカカシだったのである。
ぴりぴりと焼け付くような殺気が控え室内を満たしているが、その原因がカカシなのだ。
やれやれ、とアスマは心の中で呟き肩を落とした。
何が理由で揉めているのやら・・・。
せっかく控え室で休もうと思ってやってきたのに。
カカシのやつめ、面倒なことを。
とカカシと見ると座っているカカシの前には、うみのイルカが立っていた。
イルカは中忍で仕事の関係で時折、上忍の控え室を訪れる。
連絡事項を伝えに来たり、必要な書類を渡しに来たりを様々だ。
それにイルカは同性同士でありながらも、もしかしてカカシと深い仲ではないか、と噂されるほどカカシと仲が良い。
カカシも、また任務以外ではイルカの傍を付かず離れずにいる。
イルカは常に冷静沈着でク−ルなカカシと違い、大らかで人当たりが良く、いつも笑顔の爽やかな青年だった。
アスマも好感を抱いている。
だけども、そのイルカが何やら怒った目でカカシを見ているのだ。
カカシも、また珍しくイルカ相手に少しだけ不機嫌そうで。
・・・面倒くせーことになりそうだ。
アスマは控え室に入ってきたばかりだというのに、そーっと足音立てずに後ろに下がる。
そのまま控え室を出て行こうとしたのだが。



出て行こうとした途端、がしっとアスマの手は誰かに掴まれ控え室に引きずり込まれた。
「逃がさないわよ」
そう言って、にやりと口を歪めたのは同じ上忍でくの一の紅である。
「一人で逃げるなんてずるいわ」
もちろん、この控え室内の状況で声なんて出すわけにはいかないので読唇術で相手の口の形を読んでいる。
「逃げずにはいられないだろ」
あと一歩で逃げられたアスマは激しく後悔していた。
控え室なんて来なくても休める場所は他にもあったのに、と。
「こんなところ一秒たりともいたくねえ」
本音を言うと紅も同意した。
「それは私も同じよ。でもね」
ちらりと視線をカカシとイルカに走らせる。
「カカシの出す殺気じみた殺人光線の所為で誰も一歩も動けないでいるのよ」
動いた瞬間、抹殺されそうだわ、と紅は正論を述べた。
「おまけに、こんなに周囲に迷惑な殺気を振りまいているのに目の前のイルカだけは器用に避けて殺気を発しているのよ」 紅は不満そうだ。
「もー、イルカにだけは怒っても何しても気遣っちゃうんだから甘いわよねえ」
「全くだ」
アスマは心の底から同意した。



「で?」
アスマと紅の声に出さない、ひそひそ話は続いた。
「いつから、こんなことになってんだ?」
「ちょっと前からよ」
「やっぱカカシが悪いのか?」
「そうねえ」
紅は柳眉を潜めた。
「今回は違うみたい、カカシがイルカのことを怒っているみたいなの」
それは本当に珍しかった。
明日は雨か、とアスマが思ってしまったほどだ。
「さっき、イルカがカカシに火影さまの伝言を伝えに来てね、それで、ちょっとコーヒーでも飲んでいきませんか?ってカカシがイルカのことを誘ったのよねえ」
「ふーん」
「でもイルカは仕事中だし上忍の控え室で中忍の自分がコーヒーなんておこがましいって言ってね」
「へえ」
「そしたらカカシが何故か怒ったみたいでね、イルカに『オレのこと嫌いなんでしょう?』っていう展開になっちゃったの」
「なんだ、そりゃ」
「怒ったというより拗ねたって言った方がいいのかしらね」
「そんなのどっちでもいいがよう」
アスマは猛烈にタバコが吸いたくなってきた。
一種の現実逃避かもしれない。
「イルカは特におかしいこと言ってねえだろ」
「まあ、そうよねえ」
忍には階級があるので、どんなに親しくてもある程度、お互いに一線は引いている。
それが仕事や任務中なら尚更だ。
「それからイルカが『どうしてそんなこと言うんですか?』ってカカシに食って掛かって今は膠着状態」
「なんて、傍迷惑な・・・」
アスマは素直に本音を言ってしまう。
「痴話喧嘩なら他でやれって」
「なら、それをアスマからカカシに言ってちょうだいよ」
紅はアスマをきつく睨む。
「困っているのよ、ここにいる全員が。一刻も早くこの場から離脱したいのに、にっちもさっちも行かなくて」
「そうは言われてもなあ」
これまたアスマは本音を吐いた。
「俺だって命は惜しい」
そう、多分、おそらく、今の状態のカカシに何か言えば余計なとばっちりを受けるのは確実だ。
命の保障はないだろう。
誰だって命は惜しい。
しかし、この場を乗り切るにはどうしたらいいのだろう。
その鍵を握っているのはイルカであった。



「カカシさんのことが嫌いだなんて」
イルカは悲しそうな顔でカカシを見つめた。
普段は元気いっぱいの、その瞳が水分をたぶんに含んでいる。
要するに潤んでいるようにみえた。
「そんなことあるわけないじゃないですか」
悲痛な声である。
「す、すみません、ごめんなさい」
怒っていたらしいカカシはイルカの様子を見て、即効、白旗を揚げた。
あっという間に殺気も霧散している。
この隙に上忍の控え室を去る上忍が幾人もいたのだがアスマと紅は主に紅の好奇心から残っていた。
「ごめんなさい、イルカ先生。嘘です、誤解です。イルカ先生がオレのこと嫌いだなんて一片も思ったことありませんから」
謝りながらもカカシの手は既にイルカの手を握っていた。
両手でイルカの手を優しく包み込んでいる。
「違うんです、ちょっとだけ、ほんのちょっと言ってみただけでなんです」
「なんで、そんなこと・・・」
「それはですねえ」
カカシは、あはは〜と誤魔化し笑いをした。
「だってイルカ先生、朝、起きた時にオレの腕枕で寝ていなかったでしょ」
「え、そうでしたっけ」
「そうですよ〜、オレに背を向けて壁の方を向いて寝ていたじゃないですか」
本当にカカシは拗ねていたのだ。
他愛もない理由で。
しかし衝撃の事実が明かされてしまったことにカカシとイルカの二人は気づいているのか、いないのか。
アスマの隣にいた紅は拳を握って目を吊り上げていた。
「なに、それ!」
声を出さずして静かに怒っている。
「ばっかばかしい!なによ、単なる惚気じゃないの!」
背後に怒りの炎がめらめらと燃えているのがアスマには見えた。
しかし機を逃してしまったアスマに逃げ場はない。
アスマに二度目の危機が訪れていた。



カラフルライフ 2


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