好きと言わない6
「ごめんね」
好きだとイルカの告白した後、カカシに謝られた。
「ごめんね、イルカ先生に好きだと言うのを忘れていました」
「忘れて?」
「うん、イルカ先生が嫌いとか、そんなんじゃないくて。本当に忘れていたんです」
好きだというのを忘れるなんてことがあるのだろうか?
イルカが訝しげに眉を潜めるとカカシがイルカを抱き寄せた。
「そんな顔しないで」
カカシの腕の中はあたたかい。
「俺ね、イルカ先生に好きだと告白されてね」
ぎゅっとカカシの腕に力が入った。
「幸せすぎて忘れていました、イルカ先生に好きだと言うのを」
そうだったのか・・・。
カカシの言葉は、すっと融けるようにイルカの心に染み渡ってきた。
「眠っているイルカ先生には、いっつも好きだと言っていたから」
それもあるかも、とカカシにイルカの知らない事実を知らされた。
「眠っているときに言っていたから起きている時に言うのを忘れちゃって」
あははは〜、と空笑いをしたカカシは、すぐに真面目な顔になった。
「イルカ先生」
声に真剣さが滲んでいる。
「俺を幸せにしてくれてありがとう」
そう言われて優しく口付けられた。
「あ、あの」
カカシの優しく口付けられたイルカは焦ってしまった。
雰囲気は言うならば甘く蕩けるようで、何となく口付け以上のことを示唆しているようであったので、それに流される前にイルカは訊いておきたかったことがあった。
「カカシさん、俺のことが本当に本当に本当に嫌いじゃないんですね?」
確認しておきたいことナンバーワンの事案だった。
「そう言ったでしょ。イルカ先生のことが本当に本当に本当に本当に好きですよ、とってもとっても。嫌いになるなんて有り得ませんから」
カカシはイルカの頬や額に唇で触れながら言う。
「俺がイルカ先生を嫌いになるなんて、この世で生きている限り絶対にないだろうし、ジョークでも有り得ません」
どっかで聞いたような台詞だった。
「俺が眠っている時に好きだって言ってくれていたっていうのは・・・」
いつ、言っていたのか不思議だった。
「ああ、それはね」
カカシは、にーっと笑った。
「任務で深夜、早朝に帰ってきたときね、イルカ先生がすやすや眠っていて可愛くてねえ、好き好き大好き〜って言ってしました」
他にも色々とね〜とカカシは子供が悪戯するような顔つきになる。
「眠っているイルカ先生に好き好き大好き〜って囁くとね、とっても嬉しそうな顔になってねえ」
また堪りませんでした、と恥ずかしさ全開になるようなことを言われた。
かーっとイルカの体が自然と熱くなる。
自分の知らない自分のことを聞かされるのは照れと恥ずかしさで穴があったら入りたいような気分になった。
「も、いいですから」
黙ってほしいとお願いするとカカシは「じゃあ続きは、また今度ね」と恐ろしいことを言う。
「ええっと」
イルカは慌てて話題を変えた。
「何で俺がアスマ先生と紅先生と飲んでいるのが分かったんですか?」
そういえばカカシは店に来ていた。
あれには驚いた。
任務から帰ってきたカカシには何も情報はなかったはずだったのに、どうやってイルカを見つけだしたのだろう?
純粋な疑問だった。
「ああ、それはねえ」
さらっとカカシは言い切った。
「家にイルカ先生がいなかったのでアカデミーに行って受付所に行って火影さまのところに行って、一通り捜していたらイルカ先生がアスマと紅といたって知らされたので、二人に飲みに連れて行かれたんだと推察して」
二人の行きつけの店を片端から当たったんですよ〜、と事も無げだ。
嫌な予感がしてイルカは、怖々訊いた。
「何て言って捜していたんですか」
「そりゃあ、もちろん」
カカシは、にこっとする。
「イルカ先生はどこですか〜って、普通に。俺がイルカ先生をどれだけ大事に思っているのを知っているなら教えてくれるよねえって。教えてくれなかったらどうなるか分かっているよねえとまでは言いませんでしたけど」
「・・・それって普通じゃないですよ」
なんと言う傍迷惑な捜し方だろうか。
それに。
「そんな風に言って回ったら、みんなカカシさんと俺の関係を薄っすらとじゃなく、はっきり分かってしまうじゃないですか!」
思い起こせばアスマと紅も酒の席で、そんなことをぼやいていたような気がする。
「まあまあまあまあ」
カカシはイルカを宥めた。
「些細なことですよ、そんなことは」
「些細なことって」
抗議するとキスで唇を塞がれた。
「もう三年も付き合っているんですから、いいじゃないですか」
そう言われると、そうかなとイルカも思ってしまう。
「俺たち、三年も好き合っているんですよ、すごいじゃないですか」
「はあ」
「好きな人が三年も変わらないなんてね。一途で純愛、ピュアでイノセントとは俺たちのことですね!あ、これからも好きですからね」
ずーっとね、と確信しているかのようにカカシは断言する。
「イルカ先生が好きですよ」
「・・・俺も」
イルカは自分の思いもカカシに告げた。
カカシだけに好きだと言わせるのは悪いと思ったから。
好きなら、お互いが気持ちを伝えないと上手くいかない。
それでイルカは悩んでいたのだ。
「俺もカカシさんが大好きです」
「うん」
抱き合ったまま言うとカカシと目が合った。
とても近い。
カカシとの距離が。
「俺もイルカ先生が好きです」
引き寄せられるようにキスをして、カカシは言った。
「これからはイルカ先生が起きている時も眠っている時も好きだと言いますね」
「あ、はい」
「時間を余すことなくイルカ先生と好きだと言い続けます」
カカシの言葉を聞いてイルカは、とても安心してしまった。
心から安堵した。
もう悩まなくていいんだと。
カカシのことを好きでいていいんだと。
その後、カカシは有言実行を確実にして。
イルカはカカシが好きだと言わないことで悩むことがなくなった。
ただし、別の悩みは増えたけれども。
それはそれで、幸せの範疇だったので問題はなかったのであった。
終わり
好きと言わない5
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