真実と嘘1
「おかしな術にかかってきたねえ。」
五代目火影の綱手はイルカを目の前のして溜め息をついた。
「なんというか、厄介としかいいようがない。」
イルカにかけられた術の分析を終えた綱手は諦めたようにイルカを見つめる。
「術の使用目的が、いまいちはっきりしないし、新術のようだし、解術が分からん。」
「申し訳ありません、火影様。」
海野イルカは深く頭を垂れた。
「油断しました。」
場所は深夜の火影の執務室で、綱手とイルカの二人だけであった。
イルカは、ひどく肩を落として項垂れている。
「まあ、お前に怪我がなくて何よりだったけれどね。」
慰めるように綱手はイルカに言った。
「それに深夜だったのが幸いしたみたいだし、里の者には誰にも会ってはいないのだろう?」
「はい。」
「なら、いいよ。」
ふっと綱手の眼差しが温かくなる。
「分析によると二週間ほどで術の効果は薄れると思うから、暫く、里から離れて一人で過ごすことになるね。」
「心得ております。」
「皆には私から言っておくから。そうだねえ、里の西の山の整備とトラップ補修に行っておいで。その山には誰にも近寄らせないようにするから。」
「すみません。」
綱手の温情にイルカは、もう一度、深く頭を下げた。
綱手は、もう一度、あーあと溜め息をついた。
「今、イルカに補佐を抜けられると辛いよ。仕事が溜まっているのに。」
横目で机の上の書類の山を見る綱手は心底、うんざりしたような表情であった。
「本当に申し訳ありません。術の効果が切れたら、直ぐに戻って火影様の仕事を手伝わせていただきますので。」
イルカは何回も頭を下げに下げた。
「分かった、分かったって。」
綱手は、もういい、という風に手を振る。
「その術はイルカの所為じゃないし、術をかけた相手の敵が相当な、うっかり者だったんだろう。」
でなければ大馬鹿者だよ、と綱手は憤っている。
「男のイルカに、周囲の人間を、誰彼構わず、その気にさせる術をかけるなんてねえ。」
その気にさせる、つまり、惚れてしまったり好きになったりということなのだが。
綱手は曲りなりにも火影あったしイルカの術が、おかしなものだと一目で見抜き、用心して防御の術を自分に施した。
おまけにかけた敵本人が、その場で自分の術中に落ちて、イルカに惚れた挙句、好きな人を殺すなんてできない、自分達は結ばれる運命にない、なんて三文芝居のような台詞吐いて逃げてしまったのである。
それを報告すると綱手は苛立ったように、どん、と執務室の机を叩いた。
「なーにが結ばれない運命だ、メロドラマの見過ぎだっての!」
変なところに怒っている。
「というわけだから、イルカ。」
火影の威厳を素早く取り戻して綱手はイルカに告げた。
「二週間経ったら戻っておいでよ。待っているからね。」
「はい。」
イルカは頷き、その場から、すっと姿を消したのだった。
「もう、そろそろ二週間経つよな。」
イルカは一人呟いた。
指を折って、山で過ごした日にちを数えてみると明後日で、ちょうど二週間である。
「早く誰かと会いたいなあ。」
里の西の山に一人来て、随分となる。
綱手に言われたとおりに山の中の山道の整備やトラップの補修などをしていたが、二週間も経つと総て終わり、やることがなくなってしまった。
一人で体術や忍術の修行をしているが、少し寂しい。
所謂、人恋しいというやつだ。
今日も日がな一日、鍛錬をして過ごし、やっと夕暮れ時になってきた。
「夕飯の支度でもするか。」
イルカは西の山に中腹に立っている、小屋に寝泊りしている。
休憩所用の簡易な作りの小屋であったが寝泊りには、それで充分だ。
小屋に戻って、水を入れる容器を持つを沢に降り立つ。
水を汲もうとしたイルカの目に何かが飛び込んできた。
誰かが倒れている。
血の匂いもした。
慌てて駆け寄り、抱き起こすと木の葉の額宛が目に入る。
「木の葉の忍。」
そして、その人はイルカがよく知る人物であった。
「カカシ先生!」
呼びかけても反応がない意識を失っているようだ。
はたけカカシが腕から血を流して、川岸に倒れていたのであった。
真実と嘘2
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