至難のわざ1
イルカはカカシに告白してみた。
言うなれば、愛の告白である。
自分と同じ同性である男性のカカシに告白なんて、ちょっと片腹痛いと自分でも思ったけれども想いは止められず、一応、どきどきしながら、ただただ純粋な気持ちで胸を高鳴らせながら告白してみたのだ。
好きな人に好きだと告白したいだけあったイルカは告白して、それからどうこうなろうとか、あれやこれやなどとは考えていなかったのがイルカらしい。
アカデミーの資料室での資料整理をしていたイルカの仕事を、偶々暇だったカカシが手伝ってくれて、資料室で二人きりの時に、思い切って告白をしてみるとカカシは実に神妙な顔をした。
イルカの告白に対しては茶化すことなく真剣に耳を傾けてくれたし、最後まで聞いてくれたのに反応がイルカの想像を超えていた。
告白を聞き終わったカカシは、顎に手をやり何事か考えている。
「カカシさん、あのう。」
告白を聞いていただけたので、もういいです、とイルカは言おうと口を開いたのだが、先にカカシに言われてしまった。
「イルカ先生。」
「はい、なんでしょうか。」
小首を傾けてイルカがカカシを見上げるとカカシは、ふっと息を吐き出した。
そして言った。
「俺を好きになってはいけません。」
「は?」
カカシは真面目な顔をしていて真面目な声でイルカに諭すように語りかける。
「俺を嫌いになってください。」
衝撃的な言葉だった。
イルカは声もなく、ただただカカシを見詰めることしなできない。
カカシはイルカの肩を掴むと顔を近づけてきて再度、言った。
「俺を嫌いになってください、ね?」
二人の顔の距離は鼻先がくっ付くほどで、カカシの端正な顔がイルカには、よく見える。
カカシの瞳には自分が映っていて、カカシの瞳の色も分かった。
本気でカカシは言っているのだ。
「俺を好きになるなんてことはしないで。・・・いいですか?」
カカシの次の言葉にイルカは更に衝撃を受ける。
「俺を嫌いになって、他の・・・。気立てのいい素直で明るく可愛い笑顔の素敵な娘さんと一緒になって幸せな家庭を作るんです。」
急に、そんなこと言われても、とイルカは、自分の心を整理できず絡まって複雑になる。
告白しただけなのに、いきなり自分の気持ちを拒絶されて、あげく更に他の人を好きなれって、どんな拷問?とまで思っていた。
「あなたは、まだ若いんです。」
カカシが、きっぱりと言い切った。
「若いんだから、もっと他に目を向けないといけません。」
「でも・・・。」
「でもも、しかしもありません。いいですか、イルカ先生。俺のことを好きだなんて、一時の気の迷いですよ、きっと。俺には解ります、イルカ先生は・・・。」
そこでカカシはイルカから、すっと自分の身を離した。
「イルカ先生は幸せになれますから。俺が保障します。」
最後にイルカを見詰めて、優しく微笑みカカシは姿を消した。
資料の整理は途中だったはずなのに、何故か終わっていた。
一人、取り残されたイルカは途方に暮れてしまった。
カカシに言われた言葉を思い出して、深い溜め息が出てしまう。
「そんなこと言われたって、さあ・・・。」
好きな人を急に嫌いになるなんて無理な話である。
ずっと好きだっただけに不可能に近い。
「好きだと言いたかっただけなのになあ。」
イルカは頬杖を突いて、ぽつりと呟いたのだった。
至難のわざ2
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