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気がつけ、そこの二人!



上忍夕日紅は、常々、疑問に思っていることがあった。
場所は上忍の控え室。
紅は、ある人物とこの部屋に二人きりだった。
その人物とは紅の前に座っている男で里きっての凄腕の上忍だ。
普段は眠そうな目と、やる気のなさそうな態度で愛読書と称する年齢制限のある本を ところ構わず読んだりしているのだが。
その上忍の名は、はたけカカシという。
愛読書以外に特に興味を示さなかったカカシであるが、最近は、そうでもないようであった。



上忍の控え室の扉が控えめにノックされた。
その時、紅の目にはあるはずのないカカシの触角が頭の上に、ぴんと立った気がした。
レーダーのように。
目は本のページに落とされているのに気持ちは扉をノックした人物に向いている。
傍目で見ていて解るほど。
「失礼します」
一礼して控え室に入ってきたのは顔見知りの中忍であった。
紅の前まで来ると「下忍の指導要綱についての連絡事項です」と書類を渡してきた。
「ありがとう」
礼を言って紅は受け取る。
この中忍は紅が受け持っている下忍のアカデミーの先生であった人だ。
名前は、うみのイルカ。
年若い青年である。
裏表のない気質とまっすぐで正直な性格が紅は気に入っていた。



イルカは紅に連絡事項の書類を渡すべく、カカシにも声を掛けた。
「カカシ先生」
「イルカ先生!」
カカシは読んでいた本から顔を上げる。
待ってました、と言わんばかりに。
イルカが控え室に入って来た時から、自分の方へ来るのを今か今かと待ち構えていたのだ。
そわそわとした気配は僅かで同じ上忍である紅は察することが出来たがイルカは気がついていない。
イルカは紅と同じようにカカシに書類を差し出した。
「下忍についての指導要綱の連絡事項の書類です」
実はカカシも紅と同じく、下忍と受け持っている身なのだ。
それもイルカの教え子達である。
「ありがと、イルカ先生」
嬉しそうに笑ったカカシは立っているイルカを見上げた。
「いつもすみませんね」
「いえ、仕事ですから」
イルカも笑い返して二人の間に和やかな雰囲気が漂う。
自然とカカシの手はイルカの手に伸びていた。
カカシの手が、きゅっとイルカの手を握る。
大切そうに。



「イルカ先生、よかったら今晩、食事でもどうですか?」
「そうですね、仕事の予定がなかったら・・・」
「近頃、忙しくて碌に話していないじゃないですか」
紅は話す二人を、じっと見つめる。
カカシはイルカの手を握りながら話しているのだがイルカは特に嫌がる素振りを見せず、カカシに手を握られたままだ。
「ねえ、イルカ先生」
イルカの手を握っていたカカシは上手いこと誘導して、とうとうイルカを自分の隣に座らせた。
持っていた本を置いてイルカの手を両手で包み込む。
「俺、寂しいなあ」
甘えるように強請っている。
「寂しいって。カカシ先生、もう大人じゃないですか」
イルカは苦笑した。
「イルカ先生と一緒がいいんです」
カカシのお願いに根負けしたイルカはカカシとの夜の食事を了承して上忍控え室を出て行った。



カカシとイルカの一連の言動を見ていた紅は背中が非常にむず痒い。
背筋が、ぞわぞわとした。
なんというか、見てはいけないものと見てしまった。
そんな気分だ。
紅の気持ちも露知らず、イルカが控え室を出て行ってしまうとカカシは再び、本を読み出した。
そう最近のカカシの興味は愛読書の本よりイルカなのである。
イルカとカカシは何かと気が合うらしく一緒にいる姿を見かけることも度々だ。
頻繁にカカシの横にいるイルカを目にする。
いやイルカの横にカカシがいるのか・・・。
寧ろイルカと一緒にいるところしか見ていない。
「なに?なんか用?」
紅が余りにもカカシを見ていた所為だろう。
不意にカカシが顔を上げて紅を見た。
その顔には先ほどイルカに見せた愛想の欠片もない。
無表情に近い顔だ。



「用ってほどでもないんだけどね」
「だけど?」
紅は気になっていたことを、ずばり訊いてみた。
「カカシとイルカって何?」
「何って何よ?」
カカシは不可解な顔をしている。
「どんな関係かって訊いているの」
「どんなって言われても。見たまんまでしょ」
見たまんま、と言うと・・・。
「じゃ、恋仲ってことなの」
紅が見たままに言うとカカシは理解不能とばかりに眉を潜めた。
「それ、本気で言っているの?」
ちょっと、むっとしているようでもある。



少し怖いものを感じたが、そこは怖いもの見たさで紅は追求する。
「だって、あんなに仲がいいんじゃ恋人とも思われても仕方ないじゃない。人前で手なんて握ったりして」
「ばっかじゃないの」
ふふん、とカカシは目を細めて紅を見た。
「俺もイルカ先生も男だよ。男同士で恋人って、おかしいでしょ。それに男同士でも手くらい握るよ」
「そうかしら」
果敢にも紅は反論した。
男同士でも手くらい握るとカカシは言っているがイルカ以外の人間と、そんなことしているのなんて見たことがない。
「好きだったら男同士とか関係ないわ。性別なんて些細な問題よ、本当に好きならね」
「なーに言ってるんだか」
ちっともカカシは意に介さない。
「俺とイルカ先生は、いいお友達なの。変なこと言わないでよ」
自分達の中に水を注すな、と言いたげであった。
そこでカカシは本を読み出して話は終了となってしまった。




その夜、紅は目撃した。
カカシとイルカを。
偶々、紅が別の人間と入った店に二人がいたのだ。
カカシとイルカは二人で楽しそうに話している。
仲睦まじげに。
カウンターに座っていた二人は肩がぶつかるほど近くに座って、キスをしてもおかしくないほど顔を寄せていた。
「なに、あれ」
そんな二人と見て紅は憮然と呟いた。
「まるっきり、恋人じゃないの」
酒が入っていたこともあって愚痴も出る。
「友達なんて都合のいいこと言っちゃってさあ」
カカシとイルカに気づかれない位置に座っている紅は二人を観察してしまう。
「男心って、さっぱり解らないわ」と肩を竦めた。



紅がカカシとイルカを肴に酒を飲んでいると二人に誰かが近づいてきていた。
どちらかの知り合いらしい。
その人間は挨拶代わりのつもりで軽くイルカの肩を叩こうとしていたのだが、その時、カカシが邪魔をした。
イルカの肩を引き寄せて相手がイルカに触れようとするのを阻止したのだ。
そして追い払ってしまった。
「なによ、あれは」
紅は憤る。
「まるっきり、嫉妬じゃないの」
イルカが誰かに触られるのがカカシは嫌なのだ、どう見ても。
見たところカカシもイルカも食事をしながら多少の酒を飲んでいるようだった。
酒を飲めば、いつも抑えている部分も出てしまう。
つまり本音だ。
それが、今の光景だったのだろう。
「友達なら男同士でも手を握るのも当たり前で肩を抱くのも当たり前なの?」
納得がいかない紅は八つ当たりをするように、くいくいと酒を開けていく。
「そんくらいにしとけよ」
紅と席を共にしていた同じく上忍の猿飛アスマが諌めた。
「カカシとイルカは自覚がないんだから、どうしようもねえ」
アスマが諌めたのは紅が飲んでいる酒ではなく、カカシとイルカのことである。
「お互い、心の奥底にある気持ちに無自覚なんだからなあ」
そう言ってアスマは溜め息を吐く。



アスマも紅と同じで散々、カカシとイルカの言動を目の当たりにしているのである。
以前に紅と同様、二人の関係を尋ねて確認していたのだが、その度に返ってくるのは『友達』の二文字。
カカシがイルカのことを特別に想っているようなのは確かで、その逆もまた然りなのだが。
「まあ、あれだ」
定番の台詞を言う。
「他人の恋路に首を突っ込むと馬に蹴られるぞ」
「そうね」
紅も諦めたように頷いた。
「所詮、二人の問題ですものね」
外野がとやかく言ってもしょうがないのである。
それは解った。
でも・・・。
「二人が無自覚でいちゃついてラブラブなのにラブラブじゃない、友達だって言うのが嫌だわ」
「それは、まあ・・・」
「それに一番、嫌なのはね」
紅は宣言した。
「見ている、こっちが恥ずかしいってことなのよ!」
「潔く諦めろって」
アスマが深い溜め息を吐いた。



紅とアスマが不毛な会話をしている、その向こうで。
カカシとイルカは見つめ合って仲良さそうに話していた。
その目は、お互いしか見ていなくて。
見つめる目が、なんとも優しげで。
二人を見ている方が照れて目を逸らしてしまうほどである。
カカシとイルカが、その秘めたる想いに気がつくのは、まだまだ先のようであった。



気がつくか、あの二人!


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