1.切っ掛け
「おーい、どこだ。出て来ーい。」
カカシは自分の忍犬を探していた。
勝手に何処かに行くなんて、忍犬の風上にもおけないヤツだ。
そりゃ自分は若くて、まだまだ修行が足りないかもしれないけどさ。
でも、一応、主人だろうが。
一応・・・。
自分の考えに、ちょっと落ち込む。
と、とにかく用事があるんだから探さなきゃ。
「パックーン。」
忍犬の名前を呼びながら、人気のない茂みに踏み込むと探していたパックンはいた。
しかし、誰かの両手にしっかりと抱きかかえられている。
胸に抱かれて嬉しそうに尻尾を振っていた。
誰かのパックンの頭を撫でる手つきはゆっくりで、とても穏やかだ。
カカシが来たことによって、その誰かは俯いていた顔を上げた。
「誰?」
問いかけてくる瞳は黒い色。
声は少し幼い。
「え、と。その犬・・・。」
カカシが言いかけると、黒い瞳は揺れて犬に視線を戻した。
「ああ、この犬、君のところの子だったんだ。」
黒い瞳の持ち主は、名残惜しげにパックンの頭を一撫でするとカカシにパックンを差し出してきた。
「ごめんね。心配していたでしょう。」
はい、とパックンを差し出されカカシは反射的に受け取る。
「あ、うん。」
「その子の名前、パックンて言うの?」
黒い瞳で聞いてきた。
「あ、うん。」
「そう。じゃあね、パックン。」
パックンに微笑む。
「君も、さよなら。」
カカシにも、少し笑ってくれた。
「あ、うん。」
最後に、そう言うと黒い瞳は茂みに消えた。
「おい、カカシよ。」
黒い瞳が消えてから、動かないカカシにパックンは声を掛ける。
「ワシに用事があったんじゃないのか。」
カカシは微動だにしない。
「カカシ!」
大きく呼びかけると、やっとカカシはパックンの方を見た。
「な、何?大きい声出して。」
「さっきから、呼んでいるのに返事をせんからであろう。」
「あ、そうなの?」
「そうじゃ。それにイルカに話しかけられても同じ返事しかしないで。どうしたんじゃ?」
「イルカ?!」
変な箇所に反応を示すカカシにパックンは眉を顰めた。
「カカシ、本当にどうしたんじゃ?」
「あの子、イルカって言うの?」
「そうじゃが・・・。」
「イルカって言うんだあ。」
夢見るように、ほわんとしながら呟いている。
カカシはパックンを地面に下ろして歩き始めた。
「イルカねえ、イルカ。」
嬉しそうにスキップまでしている。
「カカシ、どうかしたのか?」
どこかで、頭でも打ったのか、とパックンは心配になった。
「用はいいのか?ワシは何をすれば。」
「ううん、もういいの。」
「は?」
「用はもう終わり。さすが、パックンだねえ。」
機嫌は最高潮だ。
こんなカカシは、なかなか見れない。
パックンはカカシの機嫌の原因が解らず、ただただ不気味そうにしていた。
そうか、あの子の名前はイルカって言うんだ。
気になる子だったから、名前を聞きたかったんだけど。
でも、聞けなくて。
でも、知りたくて。
切っ掛けが欲しくて、パックンに一肌脱いで貰おうと思ったら、もう脱いでいた。
やったね!
偉いぞ、パックン!
でも、思わぬ処で会ったから上手いこと話せなくて残念だったなあ。
次に会った時は勝負だ!
何の勝負か知らないがカカシは決意を固めるのだった。
2.指切り
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