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★流血表現あり
★オリキャラ注意




目の前の男を見つけて俺は足を止めた。
場所は里から離れた森の中。
倒れている男は死に瀕している。
それは一目見て分かった。
体は裂けて血だらけで顔には死相が色濃く出ている。
数分で命が尽きるだろう。
顔覆っていた覆面も額宛もない。
忍服もベストも、ズタズタでボロボロだった。
光り輝いていた銀髪は血と泥で薄汚れている。
この男は多分、里のために戦って死にかけているのだと思う。
里に帰ってきたばかりらしく姿を見かけただけで話したことはないが、男は有名でビンゴブックに載るほどだったので名前は周知していた。
俺はアカデミー勤務で今のところ接点らしきものがない。
男の名は、はたけカカシ。
写輪眼を持ち、コピー忍者として名を馳せている。
木の葉の里の上忍だった。



俺は目の前に倒れている、はたけカカシの手首にそっと手を当てた。
脈は弱弱しい。
今にも止まりそうだ。
このままじゃ、はたけカカシは確実に死ぬ。
死んでしまう。
それは避けなければならない。
この人は木の葉の里に必要な人間だ。
俺でも、そんなことは十分に分かる。
はたけカカシを死なせてはならない、絶対に。
人知れず、こんなところで死んでいいような人じゃないんだ。
そう、はたけカカシは生きなければならない。
急いで里に救援の式を飛ばしたが救援が来る前に、はたけカカシは死んでしまうこと必至だ。
救援は間に合わない。
俺も短期の任務の帰りだから応急措置の医療用具しかない。
しかも医療忍術にも長けていない。
はたけカカシを助けることは俺では不可能だった。
俺は取って置きの奥の手を出すことにした。
奥の奥の奥の手だ。
成功するか、分からないけれど。



「おい!出て来い!」
誰もいない森の中に俺は呼びかけた。
「いるんだろ?ちょっと出て来い!」
森は静まり返っている。
「早く!急いでいるんだ!」
切羽詰った声に、やっと返事が返ってきた。
「なーんだよ?急に」
何もなかった空中に突如、人が現れた。
漆黒の長い髪に漆黒の目を持つ優男、全体的に黒い服の人間。
そんなやつが空中に、ぷかぷかと浮いて俺を面白そうに見ている。
「なーんか用?うみのイルカ」
俺のフルネームを呼んで、からかう気満々だ。
「用があるから呼んだんだ」
「へーえ」
そいつは空中で一回転して俺を見下ろした。
「用ってなんだよ。まあ、言ってみ」
「この人を助けてほしい」
単刀直入に俺は欲求を言った、はたけカカシを指差して。
「死にそうだから助けて生かしてほしいんだ」
「ふーん」
やつは、ちらりと、はたけカカシを見た。
「こいつ、ほとんど死者になっているけど?死ぬよ」
「そんなの分かっている」
「あと二分の命」
「いいから、この人を助けろよ」
「あのねえ」
姿が消えたかと思ったら、ひょいと俺の鼻先にやつは出現した。
「死者を生者にするには、それなりの代償ってもんがいるんだよ」
分かってる?と鼻先に人差し指を突きつけてきた。
それを払いのけて俺は、やつを睨みつけた。
「代償が何でも構わないから、この人を助けろって」
会話をしている間にも、時は過ぎていく。
もう、とっくに二分経ってしまったんじゃないだろうか。



俺が、はらはらとして、はたけカカシを見ると、やつは口角を吊り上げた。
にやりと笑ったのだ。
「平気だよー、この人間の時間は止めてあるから今は死なないよー」
「あ、そう」
ほっとした。
さすが悪魔だ、大魔王なだけある。
俺の目の前にいるやつは人間の姿をしているけれど、断じて人間ではない。
人間が空中に浮かべるはずはないし、ましてや時間を止めるなんて芸当はできやしない。
やつの話によると自分は悪魔で、魔界では大魔王の地位にいて偉い!ということだ。
興味がないので余り真剣には聞いていないが。
名前も聞いたけど、うろ覚え。
不思議な縁で知り合って、それから時々、顔を合わせている。
悪魔は人間を契約を結び、最後に魂を奪うという伝承を聞いたことがあるが目の前の大魔王を名乗る悪魔と俺は契約も何も交わしていない。
悪友というか、腐れ縁みたいな感じの関係だった。
大魔王は初めて会った時から、ちっとも容姿が変わらない。
若々しいのに老けていた。
「で、代償は?」
改めて訊くと大魔王の目の奥が冷たく光った。
「イルカの命」
端的に分かりやすい答えだった。



「いいよ」
即答した。
俺の命一つで、はたけカカシが助かるのならお安い御用だ。
なんてラッキーぐらいしか思わなかった。
「簡単に言うなあ」
大魔王の方が呆れていた。
「自分の命が惜しくないのか?」
「ぜんぜん」
どうせ、いつか死ぬのだから惜しくはない。
早いか遅いかの違いだ。
幸いにも俺には縁者がなく独りだから俺が死んでも誰も悲しむ者はいない。
俺より、はたけカカシが生きていた方が価値がある。
それを説明すると大魔王は眉根を寄せた。
「人間同士でも命にランクがあるのか」
「ないこともないんじゃないか・・・」
これは自信がない。
命は、みな平等だとは思うけど・・・。
「変なの」
大魔王は一言で切って捨てた。
「まあ、いーや。他ならぬイルカの頼みだからなー」
引き受けてやるよ、と大魔王は尊大に言い放つ。
「それに大負けに負けて本来のイルカの命の半分で、この人間を助けよう」
「本来の命の半分って?」
分からなくて尋ねると大魔王は空中を、くるくると回転しながら答えた。
「あー、例えばイルカの本来の寿命が八十年なら、その半分に四十年分を貰うって事かな」
「それって少なくとも俺は五十年は生きられるってことか?」
だって俺は今、二十五歳。
「そういうことー」
「じゃあ、もしも寿命が五十年だとして今、半分の二十五年分を、この人にあげたら、どうなる」
「すぐ死ぬ」
明朗簡潔の回答だった。



分かりやすくて非常に良い。
「それでいいよ」
俺が頷くと大魔王は、すっと俺に人差し指を突きつけた。
意識的にだが、ずんと体が沈み何かが吸い取られるような気がする。
それから、その指がはたけカカシに向けられた。
一瞬だが、はたけカカシの体が光った。
すると見る見るうちに、はたけカカシの体の傷はなくなり顔に生気が戻ってきた。
死の淵から、この世界に舞い戻ってきたのだ。
ほっとすると同時に俺の視界が揺れた。
足元を見ると血だまり。
がくっと膝が地面に突いた。
なんだ、これ・・・。
目の前が急速に暗くなっていく。
「あー、そうだ」
大魔王の暢気な声がした。
「代償として命の半分を失って、副賞で助けた人間の怪我を倍で引き受けることになるから」
それを早く言え・・・。
悪魔だけあって何が重要なことか分かってない・・・。
その人間が助かってよかったね、じゃーねーという声を残して大魔王は消えた。
さっきのはたけカカシの倍の怪我を俺がしているということは、もしかして俺の命は五十年で今、ここで死ぬのかと思ったのだが。
暗くなる視界の隅に、はたけカカシが起き上がるのが見えた。
俺を見て、びっくりしている。
これでいいんだ、と俺は目を閉じたのだった。



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