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俺の恋人 2



上忍てのは、ホント厄介な連中だとつくづく思った。
隣の会話を聞きながら。



上忍だけで任務に来ていて、今はちょっとした待機時間。
その待機中に数人の上忍たちが話していたのだ。
「お前らなあ、里で俺が彼女といる時につけて来るのはやめろ。」
最近、恋人ができたという上忍の一人が何人かを指差して怒っていた。
「デート中に姿を隠していても気配でバレバレなんだよ。彼女も気味悪がるし迷惑なんだよ。」
「え〜。」
「いいじゃ〜ん。」
指差された上忍連中は肩を竦めてはいるが、反省の色がこれぽっちも見られない。
「人の恋人って気に掛かるし。」
「そうそう。つい、好きになっちゃうんだよね。」
だよね〜、と顔を見合わせて言っている奴らはもちろん恋人というものはない。
「お前ら、自分で恋人作ればいいだろうが。」
恋人との仲を邪魔されている上忍がしごく当たり前のことを言う。
「人の恋路を邪魔するな。」
「でもさ。」
「俺達、戦いに明け暮れているだろう、だから。」
「愛が欲しいんだよな。」
「だから愛し合ってるから恋人たちの愛を少し分けてほしいだけなんだ。」
急にしんみりした雰囲気なる。
「そうか、そうだよな。愛されていたいよな。」
怒っていた上忍はさっきの勢いはどこへやら。
なんとなく、連帯感が生まれつつある。
だから、俺は言ってやった、一言だけ。
「それでいいの?恋人取られそうだけど?」
はっと気を取り直した件の上忍。
「それとこれとは話が別だぜ。とにかく俺と恋人との仲を邪魔するな。」
最後にぴしりと言うと、その場から離れていった。
「ちっ。カカシが余計なこというから。」
「人の恋人ってところがいいのにな〜。」
口々に文句を言われたが知ったことか。
それから、大事な恋人の大事なイルカ先生のことを隠そうと心に決めた。





久しぶりに里に帰ってきて、イルカ先生とご飯を食べに行く。
ああ、好きな人が傍にいるって心から落ち着くなあ。
何より、大切な時間だよ。
あれやこれや楽しく話しながら、飲食街に来たらバッドタイミング。
会いたくない奴らと会ってしまった。
人の恋人が気になって、恋路を邪魔をする上忍集団。
どうしようか、イルカ先生と一緒だし。
上忍集団をどう誤魔化すか、思案しながらイルカ先生をチラリと見ると。
寂しげな顔をして立ち去ろうとしている。
ええっ、ちょっと待ってよ。
呼び止めようとした時、上忍の一人がイルカ先生を指差した。
皆、一斉にイルカ先生に注目する。
それは誰か、と素性を俺の聞いてきた。
ここで正直に答えれば、どうなるか結果は見えている。
話題を他に向けないと。
さり気なくイルカ先生を俺の背後に隠しながら、在り来たりのことを言った。
恋人じゃない、単なる知り合い、と。
上忍たちは興味を失くしたようなので作戦は成功したかのように見えたのだが。
だが、背後のイルカ先生の顔を見ると、血の気を失って白くなっている。
何の表情も無く、立ち尽くしていた。




上忍たちに誘われて、つい飲みに来てしまったが。
イルカ先生の顔が焼きついて離れない。
彼にあんな顔をさせるつもりはなかった。
あんな表情をするなんて。
俺は重大な間違いを犯しているような気がする。
隠そうとする余り、やり方を間違ったのかもしれない。
恋人じゃないなんて言うべきじゃなかった。
俺が言われたら立ち直れないかも。
いや、もしかして、もしかするとイルカ先生は俺に愛想を尽かして見切りを付けて最悪の事態になるかもしれない。
そしたら、二度と再びイルカ先生は俺の元に戻って来ないかもしれない。
考えると、倒れそうになってきた。
「俺、用事を思い出した。」
上忍連中を飲みに来た店の前で振り切って、イルカ先生の家まで全力疾走した。






イルカ先生が見つからない。
自分の家にも俺の家にもいない。
どこに行っちゃたんだろう。
俺と別れてから、誰かに誘われたりしたのだろうか。
イルカ先生が俺以外の誰かと一緒だと考えると嫉妬で胸が妬き切れそうだ。
それとも、誰かにイルカ先生の力だけでは抗えないような目に合わされているのか。
心配し過ぎなのかもしれないが。
探す当ても無く、とぼとぼと土手を歩いていると懐かしい気配がした。
聞き慣れた声もする。
イルカ先生が「カカシさんのバカーッ!」と叫んでいた。




どっと力が抜けた。
良かった、見つかった、無事だ。
更に叫ぶイルカ先生の声が聞こえてきた。
何だか酔っているようだ。
「イヤならイヤって言えばいいじゃんか。カカシさんのばかーっ。もう、別・・・。」
最後まで言わせる気も、聞く気もなかった俺は。
イルカ先生の背後に瞬時に立って手で口を塞いだ。
驚いてイルカ先生が振り向く。
その顔は強がっているけど、目は哀しげで。
俺は素直に謝った。



散々、お酒を飲んだイルカ先生を背負って家路につく。
背中に感じる体温に、ほっとする。
ほっとしながら、イルカ先生に説明した。
さっきの奴らの悪癖を。
人の恋人にちょっかいかけずにいられないことを。
先ほどの行為の許しを求めるとイルカ先生が背中で頷くのが分かった。
それから、驚くべきことを聞いてきた。
自分のことイヤになったのではないか、と。
それを聞くのは俺の方だと思うのだが。
イルカ先生を嫌いになるなんて有り得ない。
もっともっと好きになるのは自信を持って言えるけど。
俺が、そう答えると、間もなく背中のイルカ先生は眠りに落ちた。






その後のことなんだけど。
どこで、どう聞きつけたのやら、俺とイルカ先生の関係が例の上忍たちにばれたらしい。
ばれたのなら、あいつ等のやることは分かっている。
そして、関係がばれてもいい、と思った。
イルカ先生が上忍たちに囲まれて辟易しているところに華麗に現れてやった。
俺の背中にイルカ先生を隠す。
それから、びしっと言った。
「俺の恋人に手を出すな!」
これでいいよな?
イルカ先生の顔を、こっそり見ると。
とても嬉しそうな顔をしていて。
その顔は生涯、忘れられそうになかった。



俺の恋人 1

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