俺の恋人 1
ばかばかばかばか。
俺はものすごく早足で歩いていた。
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。
何度も心の中で繰り返す。
バカバカバカ、カカシさんのバカーッ!ってな感じで。
さっき、夕飯を食べにカカシさんと一緒に来たら数人の上忍に会った。
みんな、カカシさんの知り合いで仲良さそうに見えた。
カカシさんを囲んで、楽しそうにしている。
俺は、この上忍の誰も知らなかったし、話の輪に入れず一人ポツンと置いてけぼり。
俺って、そういえば中忍で階級違うし、これが当たり前なんだっけ。
カカシさんと付き合うようになってからは忘れがちだったけど、これが現実。
どうしよう、この場は消えた方がいいかな。
でもカカシさんがご飯食べに行こうって誘ってくれたんだけど。
でも、どう見ても明らかに俺の方が場違いだよな。
そっと踵を返して立ち去ろうとすると一人の上忍が、ひょいと俺を見た。
「ん?そういやカカシ、それ誰?」
一人が言うと、皆が俺の方を一斉に注目した。
上忍の目に晒されて固まる俺。
一歩も動けない。
「ああ、その人ね。」
カカシさんが俺の前に立ったので、俺は上忍の視線から隠れることができた。
ほっと息を吐く。
「この人、今の受け持ちの子供達の元先生なの。」
一人がニヤニヤして聞いてきた。
「もしかして、恋人か?」
「違うよ。」
カカシさんはきっぱりと言い切った。
「単なる知り合い。さっき、そこで偶然会っただけ。」
「ふーん。」
カカシさんの発言を聞いて俺に興味を失ったようだ。
無遠慮な視線はもう来ない。
「じゃあカカシ。久しぶりに会ったんだから飲みに行こうぜ。」
そう誘われて、カカシさんは一瞬俺の方を見たのだが。
そのまま行ってしまった。
そして今に至る。
だから、俺は夜道を一人で全速力で歩いているわけだ。
手には自棄酒を持っている。
途中、酒屋があったので有り金をはたいてお酒を買い込んだ。
気が付くと、河原まで来ていた。
ちょうどいいや。
ここで自棄酒してやる。
もう何でもいいや、どうとでもなれよ、と思った俺はガンガンと酒を空けていった。
「カカシさんのバカーッ。」
大分酒が回ってきたので、夜空に向かって叫んでみた。
少しすっきりする。
幸いこの辺には民家がないので大声を出しても大丈夫だ。
付き合ってくださいって言ってきたのはカカシさんなのに、さっきの仕打ちは何なんだよ。
何で無視して行っちゃうんだよ。
俺のことがイヤなのか?
「イヤならイヤって言えばいいじゃんか。」
知人に紹介したくないのも分からなくもないけど。
俺は、どうせ男だし、取り得も禄にないし、給料は少ないし。
なんか、自分で自分に止めを刺している気が。
ぱかん、と新しくカップ酒の蓋を開けた。
ゴクゴク、飲んで景気をつけてから、また叫んでみた。
「カカシさんのばかーっ!もう、別・・・。」
「だーめ。」
後ろから誰かの声が聞こえて口を塞がれた。
「そんなこと言わないで。ちゃんと説明するから。」
振り向くと、カカシさんが困った顔して立っていた。
「さっきはごめんね。」
「あーあ。イルカ先生、こんなに飲んじゃって。」
食べずに飲んだら駄目っていつも言ってるでしょう?と言いつつ、カカシさんは俺の買ってきたビールを手に取った。
喉が渇いていたようで、あっという間にビールを一本開けてしまう。
「イルカ先生のこと探し回っていたんですよ。さっきの奴らを巻いて家にも帰ってみてもいないから、もう心配で心配で。」
俺のことを探して走り回っていたらしい。
「そしたら、川の方から俺のことをバカとか言ってる声が聞こえるし。」
来てみればイルカ先生だし。
カカシさんが俺を見て安心したように笑った。
「良かった、無事で。」
そんなカカシさんを見ていたら俺も安心したのか、どっと酔いが回ってきて立っていられなくなった。
俺はカカシさんに背にいる。
酔っ払った俺をカカシさんが背負っているのだ。
「さっき会った奴らはね、悪友でねぇ。人の恋路を邪魔するのが大好きなんですよね。」
カカシさんの話を俺はうつらうつらしながら聞いていた。
「他にやることあると思うのに、人の恋人にちょっかい出すのが大好きで止められないって言うんですよ。」
ふーん、上忍て変わってるなあ。
「だから、イルカ先生との関係を隠すためにあんな態度を取ってしまったんだけど。ごめんね、許してくれる?」
そうか、ならいいか。
眠くなってきたし。
「俺のことがイヤとかではないんですよね?」
きちんと聞いておきたくて聞いてみた。
「まさか。もっともっと好きになるけど、その反対はないですよ。」
「よかった。」
心底、俺はほっとして。
カカシさんの背中で眠りに落ちた。
後日。
俺は例の上忍たちに囲まれていた。
「今日、飲みに行かないか?」
何故か飲みに誘われていた。
「カカシ抜きで、俺たちと。」
「あんた、カカシの恋人だろう?」
「この前、カカシは必死で隠していたけどさ。」
俺とカカシ先生の関係は知れていた。
「なあなあ、いいだろ?」
上忍たちに詰め寄られて俺に逃げ場はない。
「こら!やめろ、お前ら。」
ドロンと煙が上がってカカシさんが俺の前に現れた。
ちょうど、俺が上忍たちから隠れる位置だ。
「人の恋人を好きになる悪癖直せって言ったろ。」
びしっとカカシさんが上忍たちを指差す。
「俺の恋人に手を出すな!」
恥ずかしかったけど。
やっぱり、すごく嬉しかった。
俺の恋人 2
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