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モテ期祝来



「え、証明って」
カカシさんの要望に正直、俺は戸惑った。
「証明って、どうやるんですか?」
持ち主の俺が抱き枕だといえば、それは抱き枕以外の何物でもないんじゃないのか。
「そうですねえ」
カカシさんは嫌な感じの笑みを浮かべた。
なんか、ろくでもないことを考えているような・・・。
そんでもって、それは的中した。
「俺の前で、実際に枕を抱いてみてください」
「はあ?」
「いつも、やっている通りでいいですから」
「いつもって」
「イルカ先生のやり方で枕を抱いてみてほしいんです」
って、それは・・・。
「なんで、俺がカカシさんの前で枕を抱いて見せないといけないんですか?」
抱き枕の存在を告白しただけでも、すっごく恥かしかったのに。
なのに枕を抱いてみろと?
カカシさんの前で?
そんなの絶対にやだ!



断固拒否した。
「嫌です」
「なんで?」
「なんでって・・・。それは俺の言葉ですよ。恥かしい事実を知られた上に、それをを実行しなきゃならんのです」
しかもカカシさんの目の前で。
夕飯をご馳走になったのは礼を言うけど、用事が終わったのなら退散してほしい。
一応、和解というか仲直りはしたのだし、後は個人の問題だと思う。
所謂、デリケートでプライベートなことだ。
だいたい、抱き枕は俺の大事な心の癒しで、心の糧だし。
カカシさんがいなくなったら、ちょっと抱きしめて安心したいと思っているのに。



カカシさんは、にっこり笑った。
笑うと、ほんと男前でカッコいい。
同じ男だけど嫉妬してしまう。
でも口から出る言葉は・・・。
「そんなの決っているじゃないですか」
とんでもなかった。
「俺が見たいからですよ」
「・・・お断りします」
丁重に言うとカカシさんは眉根を寄せた。
「そう?」
「そうです」
俺は重々しく頷いた。
「ふーん」
カカシさんは腕を組んで、何事かを考えている。
「じゃあさ」
今度は何を言うんだろ?
何故か両手を大きく開いた。
「俺に抱きついてみたら」
どうぞって勧められたが。



訳が解らない、意味不明の展開だった。
何ゆえ、俺がカカシさんに抱きつかないといけないんだ?
どうして、今、ここで?
「俺が抱き枕の代わりになりますよ」
・・・・・・なんだろう、これ。
・・・・・・なんだろう、この展開。
「意外に抱き心地いいと思いますよ、俺」
ふっとカカシさんは微笑んだ。
さっきみたいに嫌な感じではなくて優しく。
本当に優しい顔だった。
「そんなに警戒心、ばりばり出さないで」
怖くないですよ〜、と子どもをあやすみたいに言われた。
「怖がらないでいいんですよ」
なんでカカシさんが急にこんなことを言い出したのか解らないけれど。



背後にはベッドで前方には両手を広げたカカシさん。
ベッドに逃げる手もあるが逃げても捕まえられるのがオチだ。
部屋は狭いし、玄関はカカシさんの向こう側だし。
それとも素直に枕を抱いて見せたらいいのか・・・。
考えながらカカシさんを、じっと見ていると広げた両腕に誘われているような気がしていた。
カカシさんの広い胸は案外、居心地いいのかもしれない。
なんで。
なんで、この時、俺はこんなことを思ったのか・・・。
つい、ふらふらと俺は引き寄せられるように両手を広げるカカシさんに抱きついてしまった。
首に腕を回して抱きしめると温かさが伝わってくる。
その体温に、とっても安心した。
そしてカカシさんは俺を抱きしめてくれて。
俺は抱きしめられる温かさと安心感、そして人に触れることの懐かしさを久方ぶりに味わったのだった。



カカシさんに抱きしめられていて思ったのだが・・・。
気持ち悪く、はない・・・。
さっき俺、安心とかって考えていたよなあ。
カカシさんの首から手を離して、カカシさんの顔をまじまじと見た。
いたって普通のカカシさん。
別に変わりはない。
・・・おかしいなあ。
俺は首を捻った。
前に一度、受付所で、その〜、アレだアレ。
耳を舐められた時は気持ち悪いと思ったのに、今はなんで思わないんだろう。
変だなあ。それが顔に出たのかカカシさんが尋ねてきた。
「どうしたの、イルカ先生」
「え」
「変な顔しているよ」
「変って・・・」
「不思議そうにしています」
「不思議・・・」
そう、不思議だ。
気持ち悪いとは思わないで、むしろ、その反対だと思うなんて。
「言いたいことがあったら言ってしまった方がいいですよ」
溜めていると体に悪いとか何とか言われて、俺は正直に言ってしまった。
「あのですね」
「うん」
「変なんです」
「何がです」
「カカシさんが・・・」
「え、俺が変?」
「そうじゃなくて」
びっくりしたようにカカシさんの目が開いた。
ぱっちりと開いた目が、ちょっと可愛い。



そんな顔を近くで見ていたら照れくさくなって下を向いた。
「そうじゃなくて、言ったら怒るかもしれませんが」
「怒りませんよ」
「以前、受付所でカカシさんに耳を・・・」
「舐めたときね」
さらっと口に出しているけど恥かしい単語だな・・・。
「その時はトラウマが思い出されて気持ち悪いと思ったんですけど、今は」
「今は?」
「ええっと、気持ち悪くないんです」
上目でカカシさんと見ると、よく分かっていない顔。
説明と付け足した。
「その・・・。こういうこと前にもされて、その時は気持ち悪くて」 カカシさんが一瞬、険しい顔になる。
「気持ち悪いとしか思わなかったんですけどカカシさんとだと・・・」
気持ち悪くないんだよなあ。
「今は気持ち悪くないんです」
・・・気持ち悪い、と連呼して気を悪くしたかな?
すると再び、カカシさんに抱きしめられた、ふわっと。
「それはですね」
あたたかくて優しい声。
「愛があるからですよ」
そう言われた。



「愛?」
「そう、すべての行為に相手を思いやる愛があれば気持ち悪くなんかないんです」
カカシさんは語る。
「イルカ先生がされたのは一方的なものでしょう、そこに感情は伴ってなかったじゃないですか」
そう言われると、そうかも・・・。
随分、前のことだから詳しくは覚えていないけど、そうだったかもしれない。
「俺はイルカ先生のことが好きで大事にしたいんです。嫌がることはしたくありません」
でも耳を舐めたじゃないか・・・。
じとーっと見つめるとカカシさんは頭を掻いた。
「あれは先走りすぎました。すみません」
また謝ってくれた。
「つまり俺が言いたいのはイルカ先生を愛しているってことなんです」
下を向いていた顔をカカシさんの両手が包み、顔を上げさせられる。
「イルカ先生、好きです」
告白されて。
それから軽く唇が触れて。
でも嫌じゃなかった。
気持ち悪くもなかった。
・・・愛って。
愛って不思議だ。
何もかも凌駕する。
嫌なことも思い出したくないことも全部。



それから何となくカカシさんと一緒にいる。
これって付き合っているっていうのかなあ。
カカシさんが俺の家に来たり、俺がカカシさんの家に行ったり。
二人だけだと、ぴったりくっ付いてだけで何もない。
キスもあれきり。
頻繁にしているのは手を握ったり握られたりくらいで。
二人でいると、とても心穏やかな時間が過ぎていく。
カカシさんは俺の嫌がることはしないって言っていたのは本当だったんだなあ。
・・・いい人だ。
すごく。



あと、カカシさんが宣言していた鉄槌とか止めとやらは、どうなったのか俺は知らない。
カカシさんに話したことは昔のことで何年も前のこと。
しかも任務先でされたことで。
相手のことを俺は覚えていなかったから。
というより記憶を封印していた、自ら。
いつまでも昔の事を引き摺っていた俺だけど、今はカカシさんがいてくれるから、それでいい。
そんなことをカカシさんに言ったら、カカシさんは真っ赤になっていた。
「イルカ先生って大胆ですね」
意外にカカシさんは純情なのかもしれない。
ありきたりな言葉で表現すると俺は今・・・。
幸せだった、とっても。



終わり


モテ期終来


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