AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
ハイスペック専用サーバー
低価格レンタルサーバー


天使の眼1




カカシと並んでアカデミーの廊下を歩いていたイルカが、不意に振り返った。
振り返ったイルカは辺りの気配を慎重に探っている。
それは目には見えないものを探しているような雰囲気を帯びていた。
周囲を警戒して、極度の緊張と少しの怯えが混ざってる。
しばらく、そうしていたが、やがて息を吐き出し緊張を解いた。
最近、こんなことは幾度かありカカシは不安になって尋ねてみた。
「イルカ先生、どうかしたの?近頃、よく振り返るよね。」
カカシは質問にイルカは少し笑って、はぐらかした。
「そうでしたっけ?心配、ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。」
そんなことを言う。
「そう・・・。」
深く追求するのも躊躇われてカカシは言及するのを止めた。
「でも。」
これだけは、と真剣な顔で告げる。



「助けが必要な時は、すぐに俺を呼んでね。」
イルカはカカシの真剣さが伝わったのか、顔を伏せて小声で答えた。
「・・・・・・多分、自分でどうにかなりますから。」
「いいから。絶対に俺を呼ぶんですよ。」
カカシはイルカの答えを聞いて不安が一気に押し寄せてきた。
明らかにイルカは何か問題を抱えていて、それを自分で何とか解決しようとしている。
自分を頼ってくれないことが、たまらなく不安で心配だった。
だから、約束させた。
助けが必要な時は自分を呼べと、絶対に呼べと、必ず助けに行くから、と。



硬く口を閉ざすイルカにカカシは思案した。
もしかして自分には入り込めない未知の領域のことなのかもしれない。
だって、イルカは元天使なのだから。
嘘みたいな話なのだが真実だった。
何しろ、カカシが天界から人間の世界に修行に来ていたイルカの純潔を奪ってしまったものだから、イルカは天界に帰れなくなってしまったのだ。
カカシはイルカのことが好きだったので、我慢できずにイルカにキスしてしまった結果だった。

イルカのキスをした後、カカシの目の前で、天使の羽が舞い散り翼がなくなる様を見なければカカシだって信じなかったかもしれない。
天使の羽が当たり一面、黄金色の光を放ちながら舞っている光景は人間の世界では、お目にかかることはないだろう。
天使だったイルカは、元天使だけあって人間にはない不思議な力も少しだけ持っていた。
相手の悲しみを察したり、感情には特に敏感だった。


そして天界に帰れなくなってしまったイルカは今、人間の世界でカカシと一緒にいる。
有り体に言ってしまえば、人間として、そしてカカシの恋人として暮らしているのだ。
カカシとイルカの心は通じ合い結ばれていた。



「あっ!」
家に帰ってイルカの着替える様のなんとなく眺めていたカカシは声を上げた。
イルカが忍服のベスト、上着を脱いだとき、それは現れた。
「イルカ先生、背中に・・・。」
「えっ?背中?」
自分の背中を見ようをイルカは顔を後ろに向けたが、背中は自分では見えない。
「何かありました?」
イルカの問いにカカシは微かに震える声で言った。
「羽が、翼が生えてます、小さいものですが。」
「ええっ・・・。」
イルカの動きが止まる。
「・・・本当ですか?」
「本当です。」
触れて見ようをカカシはイルカの背に手を伸ばした。
翼はイルカの首より下、肩甲骨の間くらいから生えている。
手のひらより小さな翼だ。



恐る恐るカカシが手を伸ばすと、手は翼を擦り抜けた。
「あれ?」
何度、触ろうとしても擦り抜けて触ることができない。
「輪郭だけで実体はないみたいです。」
動揺しつつもカカシは冷静に観察して、イルカに事実を述べた。
「そうですか・・・。」
カカシから翼のことを聞いたイルカは、そのまま力なく床に座り込んでしまい、深く俯いてしまった。
ショックを受けているようだ。
「やっぱり・・・やっぱりそうなんだ・・・。」
その声から絶望のようなものを感じ取ってカカシはイルカの肩に手をかけた。
「何が、やっぱりなんですか?イルカ先生。」
「カカシさん、俺。」
イルカの瞳には影が差して暗く沈んでいる。
「俺、もう駄目かもしれません。」
「何が。」
カカシは訳が分からず、イルカが何に対してそんなに絶望して怯えているのか解らなくて苛立ち、きつい口調になってしまった。

「イルカ先生、言ってくれなきゃ分からないよ。」
「すみません。」
「謝ってほしいんじゃないんです。理由を教えてよ、俺に。」
問い質すとイルカは口を噤んでしまう。
「ねえ、イルカ先生。」
唇を噛み締め、じっと何かに耐えるイルカの様子に堪らなくなってカカシは、イルカの総てを包み込むように自分の胸に抱きしめた。
「ごめん、きついこと言って。イルカ先生を責めてる訳じゃないんです。ただ、心配なだけなんです。イルカ先生のことが好きだから、俺はイルカ先生の役に少しでも立ちたいんです。」
自分の思いが伝わるように、言葉を一句一句、丁寧にゆっくりと言う。
「好きだから心配なんです。」
「カカシさん。」
イルカが漸く、言葉を発した。



その声は低く掠れていて聞き取りにくい。
「この前から『天使の眼』を感じるんです。」
「天使の眼?」
「天使が俺を見ているんです、姿は見えませんが視線を感じます。再び、俺に翼が生えたのは、その天使の影響かもしれません。」
「だから何回も後ろを振り返って、その天使の姿を探していたんだね。」
イルカは無言で頷いた。
「天界の禁を破り、俺が純潔を失って天界に帰らなかったから、きっと。」
次にカカシが驚愕するようなことを口にした。



「きっと、俺に罰を与えるために天界から天使が来たんです。」
イルカの顔は悲しそうだった。
「俺は処分されるでしょう。・・・・・・お別れです、カカシさん。」




天使の眼 2






text top
top