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協定者たち 1



闇の中は安心する。
夜の暗さに安堵しながらイルカは木々の間を駆け抜けていた。
闇夜の中での視界は抜群だ。
むしろ昼の太陽の中よりも素早く動くことできる。
敵が自分を発見する前に片付けることが易々とできた。
闇は自分の見方だ。
自分は闇の中の生き物なのだと痛感した。





「見つけた見つけた木の葉に住まう我が同胞よ。いつかこの報いを受けるがいい。」
呪詛を撒き散らしながら灰になっていく敵の体を静かに見ながらイルカは言う。
「何度来ても排除する。俺達は負けやしない。」
その目には赤い光が宿っていた。
口には犬歯が突き出ていて月明かりを浴びてきキラリと光った。
敵が完全に灰になって空に散ったのを見届けてからイルカはいつもの姿に戻った。
目は黒く、犬歯は元の長さに。
どこから見ても人間としか見えない姿に。
空を見上げ月を仰ぐ。
小さな溜め息が出た。
「何でそっとしておいてくれないんだろ。」
呟き声が洩れる。
「もう俺達は違う生き物なのに。木の葉に来た時に協定を結び、今はただ生きているだけなのに。」
イルカの声は風に流されて消え、それとともに姿も闇夜に消えた。





「こんにちは、イルカ先生。」
休憩時間にジュースを飲んでいたイルカの横にある男が来た。
畑カカシだ。
里では有名な忍者だ。
実力もある。
気をつけなければ、と思いながらもカカシの方から自分の方に寄って来る。
「こんにちは。」
注意深く挨拶した。
聡い人間はイルカの正体を見破ってしまう可能性が高いから距離を置いているのにこの人間は近づいてくる。
「天気がいいですねぇ。あれ、イルカ先生。今日もまたトマトジュースを飲んでいるんですか?」
イルカは休憩時間にはいつもトマトジュースを飲んでいる。
「ええ、健康にいいですから。」
無難な返しをして、わざとらしくならないように、にこりとした。
「健康には気をつけているんです。」
忍びですし教師ですからね、と当たり障りのないことを言ったはずなのに。
畑カカシは目を細めてイルカを見た。
「ふーん。そういえば、赤い液体が好きな人外の生き物がいるんですよ、知ってます?」
「ああ。吸血鬼でしょう?あんなの空想の生き物ですよ、実際にはいないでしょう。」
動揺をうまく隠してイルカは言う。
カカシの目を見て逸らさない。
「第一、吸血鬼は人の生き血を糧にしているはず。俺が飲んでいるのは赤い液体と言ってもトマト、野菜ジュースじゃないですか。」
「まあ、ね。」
カカシが更に何か言いたげにしていたのでイルカはその場から逃げることにした。
「あ、もう休憩時間が終わりなので仕事に戻らないと。失礼しますね。」
一礼してカカシの前から立ち去った。
カカシの前だと居心地が悪すぎる。
いつか知られてしまうかも。
自分が人外の生き物で、所謂、吸血鬼だということに。




吸血鬼の大概は人の生き血を吸って生命を永らえる。
陽光に弱く、特に朝日に当たるとダメージが強く場合によっては死に至る。
灰になってしまうのである。
そして、ある程度は不老であるが不死ではない。
一定の条件を満たせば死んでしまうのだ。
他にも人間と違うことが多々あるが、工夫して人間の生活に適応するようにしている。
そして何より一番違うのはイルカは人の生き血を必要としない。
赤い液体を一日に少し飲めばいい。
体が赤い液体を血として認識しているから。




木の葉に来て数年、やっと安息の地を見つけたと思ったのに。
ここで一生を終えようとしていたのに。
イルカは唇を噛みしめる。
真性の吸血鬼が追ってきたのだ。
自分達を裏切り者として滅ぼすためだ。
木の葉の長と契約し協定を結びこの地で暮らすことを許されたのに。
昨夜の一件は既に里長に報告し、木の葉にいる数少ない仲間にも伝えた。
所詮、因果な生き物だから、しょうがないのか。



協定者たち 2

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