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夏の風物詩 それから



「花火、綺麗でしたね」
花火の打ち上げが終わってしまうと、残念そうにイルカが言った。
惜しむように打ち上げが終わった夜空を眺めている。
「また、来年も来ましょ」
イルカの手を、そっと握ったカカシが囁く。
「テレビで観るより、生の方が見応えあるし」
「そうですね」
微笑んだイルカが頷いた。
「とっても、迫力がありましたね。観客の多さを除けば、ですが」
「まあまあ、それも一興。いいじゃない」
カカシとイルカの周りは帰途の着く人で溢れている。
さぞかし、電車やバスは混んでいるだろう。
容易に予測できる。
「少し時間を潰して帰りましょ、その方が空いてますよ」
カカシはイルカの手を引いた。
「たこ焼き買って、あ〜んって食べさせ合いっこしましょうよ」
楽しそうにしている。
「食べさせ合うのは、ともかくとして。俺はカキ氷の青いのが食べたいです」
「暑いですもんねえ」
幸いなことに夜店は、たくさん出ている。
選り取りみどりだ。
「じゃ、買いに行きましょうか」
二人は連れ立って、夜店を見に行った。



好きなものを買い込んで、河川敷に並んで座って食べるカカシとイルカ。
「はい、イルカさん。あ〜ん」
語尾にハートマークを付けたカカシが夜店で買った、たこ焼きをイルカの口元に持っていく。
「・・・あの、ちょっと外では」
誰かに見られたら、とイルカは、いつも警戒している。
こんなところ、誰かに見られたら言い訳のしようもない。
妙に胸が、どきどきしてきてしまう。
「大丈夫ですって」
カカシは安心させるように、にっこりと笑い。
「知り合いなんていませんよ〜、それに暗くて誰が誰だか判別なんてつきませんて」
「そうですか・・・」
ちょっと周囲を見回してからイルカは口を開けた。
あ〜ん、と。
「はい、イルカさん」
もぐもぐと口を動かすイルカ。
「美味しい?」
口を動かしながら、こくりと頷く。
そんな仕草がとても可愛く、カカシの目には映る。
「イルカさんのカキ氷も食べたいなあ」
「一口だけですよ」
たこ焼きを貰った手前、イルカは律儀にカキ氷を掬ってカカシに差し出した。
「はい、どうぞ」
「あ〜ん、って言ってくれなきゃイヤ」
おねだりされる。
「早くしないと溶けますよ」
「あ〜ん、って言って」
「・・・あ〜ん」
カカシに押されて、不承不承にイルカが言うとカカシが嬉しそうに口を開けた。
その口にカキ氷が入っていく。
「美味しいですねえ、もう一口」
「しょ、しょうがないですねえ」
また、カキ氷を一口掬ってカカシに食べさせる。
「ん〜、冷たくて、ほーんと美味しいです」
最高、とか言うカカシは上機嫌だ。
「イルカさんと花火大会にも来れて、この夏のいい思い出になりましたね」
「そうですね、いい思い出ですね」
顔を見合わせて、二人して微笑んだときだった。
背後で、数人の足音した。
「あれー?もしかしてカカシ先生とイルカ先生?」
「え、偶然ですね」
「奇遇だな」
振り向くと、そこには・・・。
生徒たちがいた。



「ナ、ナルト・・・」
「サクラにサスケ?」
カカシとイルカが勤める学校に通う生徒たちがいた。
男子二人に女子が一人。
女子は可愛い浴衣を着ている。
あんな人混みで着崩れしていないのが不思議だ。
「な、なんで、ここに?」
突然の生徒たちの出現に、動揺して慌てたイルカは、あたふたしている。
「何でって、俺たちも花火を観にきたんだけど」
「私たち、家が近いから誘い合って来たんです」
言われてみれば、当たり前の話だ。
大きな花火大会なのだから観覧に来るのも、カカシとイルカだけではないだろう。
「子供だけで?」
冷静なカカシが聞くと、手にポケットを突っ込んだままの黒髪の男子が応えた。
「親と一緒に決まってんだろ。あっちにいるぜ」
くい、と顎で遠くを指す。
何人かの人影が固まって、喋っている。
「今日は珍しく兄貴も一緒だ」
「ああ、あの自慢のね」
黒髪の子は無口がちだが唯一、兄のことに関しては饒舌になる。
確か大学生とか言っていた。
「ふーん。ま、いいけどね」
カキ氷を手にして、未だイルカはうろたえている。
「えっと、あー、花火綺麗だったな、うん」
「はい、とても綺麗でした」
女子が、うっとりと夢見るような瞳になる。
「好きな人と観れたら・・・」
ちら、と一瞬、黒髪の男子に視線を走らせた。
「幸せですよね〜」
「そ、そうだな、好き・・・な人と観れたらいいな」
女子の何気ない言葉に赤くなっている。
同時に首元を手で押さえた。
何かを隠すように。
そして、首元に手で押さえたと同時に何かを思い出したのか、更に赤くなる。
目敏く、女子が指摘した。
「イルカ先生、顔、赤ーい」
かわい〜なんて言われて、キャーキャー言われている。
学校では生真面目なイルカなので、普段と違う姿が見れて面白いようだ。
「あのねえ、君たち」
さり気なく、カカシが移動してイルカを自分の体の陰に隠した。
「もう、夜、遅いんだからお子様は帰って歯磨きして寝なさい。あと、ご両親が先生にご挨拶とか言い出したら、全力で阻止するように」
仕事とプライベートは分けているんだからね、と最もらしく言う。



「はーい」
一応、素直に生徒たちは返事をした。
「先生、さよならだってば」
「じゃあな」
「また、学校で」
手を振り、両親の元へ走っていく。
それを見送ってからイルカは、ふーっと息を大きく吐き出した。
ものすごく疲れた顔をしている。
「・・・まさか、こんなところで会うなんて」
「ねー、まさかですよねえ」
のんびりと相槌を打つカカシをイルカは、きっと睨んだ。
「カカシさん、生徒たちに気がついていませんでしたか?」
「まーさーか、ぜーんぜーん、気がついてなかったです〜よ」
カカシは肩を竦める。
「俺だって、びっくりしたんですから」
「その割には落ち着いていませんでした?」
「沈着冷静な性質なんで」
のらりくらりと交わすカカシの様子を見て、イルカは肩を竦めた。
「全く、もう」
買ってきたものを食べ尽くした二人は立ち上がった。
「さ、帰りましょうか」
「はい。・・・ああ、学校で生徒たちと会ったら、どんな顔をすればいいんだろ」
「普通にしていればいいんですよ、普通で」
しょぼんとするイルカの肩をカカシは、ぽんぽんと叩く。
「誰も何も言いませんて」
「そうでしょうか?」
「そうですよ」
カカシとイルカの関係を勘ぐる者がいないか、イルカは心配しているのだ、教師という立場上。
しかし、カカシはイルカに黙っていることがある。
秘密にしていることがある。
いずれはイルカの耳に入ってしまうかもしれないが。



「イルカさん、さっき」
カカシが、にやりとする。
「なあんで、首を押さえたの?」
「それは・・・」
「真っ赤になっていたしね〜」
ぐ、と言葉に詰まるイルカ。
イルカの性格では口に出すのが恥ずかしい事柄だ。
「跡を気にしていたの?」
跡とはキスマークのことだ、カカシが花火の打ち上げが始まったときに仕掛けた・・・。
「暗いから見えないのに」
「・・・明るい場所なら見えるってことですね」
「平気平気、虫刺され程度だから」
「やっぱり跡が残っているんですね!」
「絆創膏、貼れば見えませんよ〜」
二人の会話は、じゃれ合いにしか見えない。
喧嘩するほど仲がいいといったところだ。
ただ、仲は友情ではなく愛情で結ばれたものであったが。
「はいはい、仲直り〜」
だいぶ人が減って、辺りは静かだ。
そこを狙ってカカシは、イルカの頬に唇を滑らせた。
「な、なななな・・・」
イルカは、また赤くなっている。
「イルカ先生、可愛い〜」
「こんなときばっかり先生って」
「だって、イルカ先生もイルカさんも好きなんだも〜ん」
すっとぼけたカカシはイルカの手を握った。
「大好き、イルカ先生」
「・・・俺もです」
外では『好き』という言葉は言ってくれなかったが、それでもカカシは充分に満足だった。
家で二人きりならイルカは照れながらも、ちゃんと言ってくれるし。



余談だが、カカシが黙っていること。
イルカに秘密にしていること。
それはカカシとイルカが一緒の家に住んでいるということを、とっくの昔に生徒たちにバラしているということだった。
「先生って職業はね、薄給なの。だから経済的な面から、仲良しのイルカ先生とルームシェアして、一緒に暮らしているんだ〜よ」
イルカの預け知らないところで、暴露していた。
だから生徒たちはカカシとイルカが、どうして二人一緒なのか聞かなかった。
だって、一緒の家に暮らしているから。
同じ家に住んでいるのなら、一緒に来て当たり前。
それをイルカは、まだ知らない。
知ったら、どういうことになるのだろう。
まあ、おそらく心配することはない。
カカシの海より深く、空より広い愛情で、きっと乗り越えるはずだから。



夏の風物詩



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