続 子供と大人 1
はあ、と溜め息をつき肩を落としながら、俺は火影室に向かう廊下を歩いていた。
命令された任務が完了したので五代目火影に報告に行くためだ。
今回の任務、ハードだったなあ。
ランクも高かったし、久しぶりに目茶苦茶疲れた。
腹も減ったし風呂にも入って、さっぱりしたい。
だけど、任務が終わって最初にしたいことは他にある。
イルカ先生に会いたい。
すごく会いたい。
会って笑顔で「お帰りなさい。」と言われたい。
イルカ先生という人は、この世で俺の一番大事な人で大切な恋人だ。
俺のイルカ先生に会って元気を補給したいよ。
いっぱいいっぱい抱き締めれば、すぐに元気になるんだけどな。
ああ〜、イルカ先生〜。
そんなことを考えながら廊下を、ふらふらと歩いていったら角を曲がろうとした時、足に何かが、どん、と勢いよくぶつかって来た。
足下を見ると、小さな子供が大きな目で俺を見上げている。
ぶつかってきたのは、この子供なのだろう。
走っていたようだから前が見えなかったのかもしれない。
子供には、よくあることだと思う。
だが、その時は俺は任務の疲れもあって余裕がなかったというか、子供に対して大人気ない態度を取ってしまった。
ぴりりとした殺気が冷気のように体から出てしまう。
「ああぁ?どこの子だ?」
おまけに子供相手に凄んでしまった。
我ながら情けない。
子供は、びっくり眼で俺を見た後、急いで小さな頭を下げてきた。
「ごめんなさい。」
素直に謝ってくる。
そして、その後の言葉に俺は凍りついた。
「おじさん。」
おじ・・・さん・・・。
おじさんと言われたショックが、ががーん、と襲ってきて頭の中で、その言葉が木霊する。
「お、おじさん、かあ〜。」
俺、おじさんだって。
その言葉の破壊力に思わず、よろめいてしまった。
もう二十代ではないから、そう言われても、おかしくないかもしれないけど。
たまに、サクラにおじさん呼ばわりされているけど。
でも、密かに俺だってまだまだ若いさ、と思っていたのに。
それらが総て打ち砕かれた瞬間だった。
でも、と子供を改めて見直すと、かなり幼い感じがした。
こんな子供からすれば、俺は『おじさん』にしか見えないよな。
目尻を下げて悲しそうな顔をしている子供を見て、俺は反省した。
「ごめんな。おじさん、前を見ていなかったから。」
自分に対して、おじさんというのは少し抵抗があったが思い切って言ってみた。
子供は、俺の言葉を聞いて安心したのか肩の力を抜いたようだ。
「ううん、俺こそ、よく見ていなかったから。」と、はにかみながら首を横に振る。
子供の可愛いらしい様子に、ほわんとなって頭を撫でようと俺は手を伸ばした。
だが、手を伸ばしたところで俺の手は止まってしまった。
子供の顔を見ているうちに、俺は既視感を覚えたのだ。
どこかで会ったことがあるような気がする。
この黒い目は懐かしいものがあった。
でも、どこで?
すると廊下の向こうから誰かの名前を呼ぶのが聞こえた。
「イルカー!どこに行ったんだい?」
あの声は五代目の声だ。
子供は声のした方向に「はーい。」と元気よく返事をした。
続 子供と大人2
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