AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する
ハイスペック専用サーバー
39周年!BIGサンクスキャンペーン


Forever Thirty8



イルカの唇の心地に酔いしれて唇を合わせたままだったカカシだが、目を開き、横目で時計を見ると零時半を過ぎていた。
半時以上もキスしたままだったことになる。
じっとして動かないイルカを、さすがにおかしいと思い、カカシはイルカに押さえられていた両手首を動かしてみると、イルカの戒めは直ぐに融けた。


自由になった腕で軽くイルカを揺すってみる。
キスしていた唇を、ひどく惜しみながら少し離して
「イルカ先生?」
小さな声で呼びかけてみるが反応がない。
こてっとイルカの頭が落ちて、カカシの肩口にぶつかり顔が、カカシの真正面にきた。
イルカは、しっかりと瞼を閉じて、すやすやと眠っている。
安心しきった顔だった。
健やかな寝息が聞こえてきて、カカシは、ふっと笑みを漏らす。


「眠っちゃったのか。」
ちょっと残念、と思いながらもイルカを起こさぬように慎重に体を起こしたカカシは、イルカの肌蹴た浴衣を直して抱え上げる。
ベッドにイルカを横たえて、布団を肩まで掛けた。
それから額に、軽く口付ける。
「ありがとう、待っていてくれて。」
おめでとうって言ってくれて。
満ち足りた気分にカカシは包まれている。
とても気分が良かった。
誕生日って、いいなあと改めて思ったのだった。



イルカをベッドに運んだ後、飲み物を探して冷蔵庫を開けると大きな白い四角い箱が冷蔵庫の中を陣取っていた。
これがイルカの言っていたケーキかもしれない。
ちょっとだけ、と中を見てみると『カカシくん!お誕生日おめでとう!』と小さな板チョコレートの上に、ホワイトチョコで書かれていたのが見えた。
ふふふ、と幸せな笑いをカカシは浮かべる。
俺って、愛されてるなあ、と実感した。



シャワーを浴びてベッドに入るとイルカが横にいる。
起きる気配はない。
そんなイルカを抱きしめながらカカシは目を閉じた。
今夜は、ぐっすりと眠れそうだ。
でも、と眠りに落ちる直前に気になったことを思い出した。
イルカ先生ってお酒を飲むと、いつも、ああなのかな。
酒を飲んでも顔色も口調も変わらず、行動だけが大胆になるのだろうか?
自分以外の誰かと飲んでも、そうならば・・・。
かなり心配になるカカシである。
明日、起きたらイルカ先生に聞いてみようと心に決めた。




次の日、目覚めたイルカは最初に「頭が痛い・・・。」と呟いた。
米神を押さえて、目を閉じて俯いている。
「ワインなんて、滅多に飲まないのに肴もなしに、あんなの飲むからですよ。」
カカシはイルカのために冷蔵庫から氷を入れた冷たい水を持ってきた。
「はい。」と渡すとイルカは眉を顰めて「ありがとう。」と頭を下げ、それを一気に飲み干した。


飲み干してから「ふう。」と一息つく。
「今日は仕事は?」
休ませた方がいいだろうか、とカカシが聞くとイルカは頭を横に振ってから、また眉を顰める。
頭が、がんがん、とするらしい。
「今日は休みなんで大丈夫です。」
答えた声は掠れていた。
「休みなの?」
それを聞いたカカシの声のトーンは、途端に上がる。
自分も任務明けで今日は休みだった。
「本当に?」
誕生日ではないけれど、その翌日でも一緒に過ごせるなら万々歳だ。
イルカは頷いて「先月、休日出勤した分の代休を取るのを忘れていて、今日休んでもいいって言われたんです。」と説明してくれた。
「やったあ!」
思いがけないサプライズに喜んだカカシはイルカに飛びついて抱きしめた。
「嬉しいなあ、休みが一緒だなんて!しかも誕生日の翌日で。なんだか生きていて良かったと思っちゃいましたよ。」
「そうですね。」とイルカは言いつつ、抱きしめられて揺らされるのが辛いのか、う〜と唸って目を瞑っている。



そうだ、とカカシは眠る前に聞こうとしていたことを思い出した。
思い出した時に聞いておかないと忘れてしまうかもしれない。
「イルカ先生、イルカ先生。」
「なんですか?」
イルカは、だるそうな感じで億劫そうに返事をしながらカカシに、もう一杯と冷たい水を所望した。
それを運んできてイルカに渡して、その横に座りカカシは聞いた。



「イルカ先生って酔うと、いつも昨日みたいになっちゃうの?」
「・・・き、昨日?」
コップに口をつけて水を飲んでいたイルカの目が、きょろりと動く。
「・・・昨日って、何かありましたっけ。」
「何かって覚えてないの?」
カカシが呆れたように言うと、イルカはカカシから目を逸らしたまま、こくこくと頷いた。
素知らぬ振りしてイルカは水を飲んでいる。
ゆっくりゆっくりと時間を掛けて水を飲みカカシの質問を、はぐらかそうとしているように見えた。



「イルカ先生。」
カカシはイルカの水の入ったコップを取り上げると、イルカの顎を掴んで、くいっと自分の方に顔を向けさせた。
「あなた、昨日のこと全部、覚えているでしょう?」
「・・・・・・え。」
イルカの顔が強張ったと思ったら、一瞬で朱色に染まり、口で言うよりも明確に、それが答えを表している。
「・・・・・・そ、それは、あのう。」
口篭るイルカは、おろおろしてカカシの顔を見ないように、せめてもと視線を在らぬ方向に向けていた。



「こら、こっちを見なさい。」
カカシは、少しだけ怖い声を出してイルカを睨む。
「イルカ先生はお酒を飲むと、あんなに大胆になっちゃうんですか?誰にでも?」
少々、きつ目な響きで言うとイルカは困ったように眉を寄せる。
「誰にでもって訳じゃ・・・。だって、カカシさんの誕生日だから、何か喜ぶことをしなくちゃって、ずっと考えていて・・・。」
だんだんと声が小さくなっていく。
「お酒を飲んで待っていたら、考えが上手く纏まらなくなって、いつの間にか眠っていたようで。」
「じゃあ、昨日のことは全部覚えているですね?」
イルカは、静かに頷いた。
伺うように上目遣いでカカシを見てくる。



その黒い目は、怒っちゃいやだな〜と訴えていて、それが昨日の子供みたいなイルカと重なって妙に可笑しくて、イルカのことが可愛くて堪らなくなってきた。
そんなカカシの顔には、自然と笑みが浮かんでいる。
「もう、イルカ先生ってば。」
ぎゅっとイルカを引き寄せて自分の腕に抱きしめた。
「俺は心配しているだけですって。俺の他の誰かに、あんなことしていたら気を失ってしまいます。」
気を失っても目覚めたら、きっと大変なことになると思うけど。
それは、心の中で、そっと付け足す。



「ごめんなさい。」とイルカは謝ってから言った。
「俺、深酒しても顔色も口調も割りと変わらなくて、行動だけが少し大げさになるようなんですよね。でも、記憶は、ちゃんとあったりして。飲んでいる時の自分の行動を翌日に思い出すと、すっごく恥ずかしくなるんです。」
「そうなんだ〜。」
イルカの知られざる真実を、一つ知ってカカシは得した気分になる。
「カカシさんとお酒を飲む時は、カカシさんが程々にセーブしてくれるから安心していたんですけど。」
昨日は一人で飲んでいたので、止め処なくなちゃったんですよね、とイルカは苦笑いした。
「イルカ先生って、お酒飲むと結構、性質悪いんですね・・・。」
人を惑わす要素、盛り沢山になるなんて、とカカシ思い、イルカがお酒を自分以外の誰かを飲む時は色々、気をつけようと密かに決心した。



「ところで。」
腕の中のイルカが身動ぎして、カカシを見上げた。
「カカシさん、お帰りなさい。」
「うん、ただいま。」
「それから、昨日も言いましたけど。」
イルカは、にっこり笑う。
「誕生日、おめでとうございます。」
「ありがとう、イルカ先生。」
イルカの方からカカシを抱きしめてくれた、優しく温かく。
「長生きしてくださいね。」
「イルカ先生が長生きするなら、長生きしますよ。」



カカシとイルカは、お互いを見つめて微笑んだ。
とても幸せそうに。




それから、イルカは冷蔵庫から大きなケーキを持ってくるとカカシの年の数だけ蝋燭を立てて火を点した。
カカシは少し、どきどきしながら一度で、ふううと吹き消した。
ケーキをイルカがフォークで掬って、カカシに食べさせてくれる。
チョコは甘かったが、それ以上にイルカが傍にいてくれるだけで甘い雰囲気が漂って、その甘い雰囲気に酔ってしまいそうだった。



「あ、そうだ。」
ケーキをカカシの口に運んでいたイルカが、あっと口を押さえた。
「プレゼント!」
肝心のプレゼントを用意するのを忘れてしまったらしい。
「あーあ、あれこれ考えていたのになあ。」と、しょんぼりと肩を落とす。
「あのさ。イルカ先生。」


カカシは、自分の頬を指差した。
「プレゼント、頂戴、ここに。」
「え。」
「キスしてほしいな。」
強請ってみるとイルカはカカシの隣まで来て横に座ると、どきどきするのか自分の胸を押さえて目を閉じている。
その顔がカカシに徐々に近づいてきた。
イルカはカカシのにキスをして、総てはカカシの望むとおりになった。
実に幸せな誕生日であったのだった。



終わり




Forever Thirty7




text top
top


アンケートに投票してくださった方ありがとうございました!