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二度あることは三度ある<三度目の2>



あ、かわいい。
目の前のイルカは記憶を失くした時のイルカを彷彿とさせた。
何もかも忘れて頼る者がオレしかいなかったイルカ。
言ってしまえばオレのイルカだ。
あの時は自分の気持ちに気づかずに好きだと言えなかったけど。
でも、待てよ・・・。
こんな場面でカカシは考えた。
気づかずっていっても、多分、あの時はイルカを好きになりかけていたと思う。
そして好きになった。
まあ、こういうことだろうなあ。
頭の片隅で思う。
こっちのイルカもオレのイルカにしてしまいたい。
このまま、とオレは不埒なことを思い浮かべる。
このまま、キスしてイルカをオレのイルカにしてしまおう。
そして唇が触れ合いそうになった、その瞬間。
オレはイルカに思い切り突き飛ばされた。



ドン、と音がしたイルカがオレの胸を押し返していた。
押された胸は結構、痛い。
「いたー。ちょっと何すんの」
いいところだったのに。
「もう少しだったのにー」
こんな展開信じられない。
普通、キスするだろう、この場合。
なのに顔を上げるとイルカがオレを睨みつけていた。
「え?」
なんで?
オレを睨みつけていたイルカの目は怒りに燃えていた。
と、同時に悲しそうにも見える。
「え、ええーと」
イルカが何も言わないからオレは所在ない。
「あ、あのー」
「酷いです」
「は?」
やっとイルカから言葉が出たと思ったら意外な言葉で。
「酷いって何が?」
オレ、何かしたっけ。
「こ、こんなことしてまで・・・」
イルカは拳にした両手が、ぶるぶると震えている。
「嫌がらせですか?」
「いやがらせ・・・」
・・・・・・って、あれ?
もしかして。
「キスしようとしたこと?」
恐る恐る訊くとイルカは、こくりと頷いた。
「オレがイルカにキスしようとしたことが?」
また頷く。
「なんで」
純粋に解らなくて訊いた。
「好きな人にキスするのは極々、自然なことだと思うんだけど」
違うの?



「なんでって、それは・・・」
イルカは口を、ぱくぱくとさせている。
空気が足りないようで。
顔が赤くなって青くなって赤くなった。
表情も百面相みたいに、ころころと変わっている。
「じゃなくて、す、すすすすす・・・」
「あー、好きな人って言いたいの?」
イルカが激しく頷いた。
「なんですか、それは」
「何って言われてもねえ」
あー、オレ、イルカに好きだって言っちゃったのか。
告白なんてものは、もっとロマンチックで甘いムード満点な場所でしたかったのに。
オレのささやかな夢が壊れてしまったが、ま、いいか。
「だいたいにして好きな人って誰ですか?」
「誰って決っているでしょう」
オレはイルカに近づいた。
距離を縮めて今度は突き飛ばされないように。
ついでもイルカも逃げられないように壁とオレとで退路を塞ぐ。
「イルカ先生が好きなんですよ、オレ」
「でも、その、あの・・・」
イルカは逃げ道を探しているようだった。
目が、きょろきょろと盛んに動いている。
「ど、どうして、こんなことに」
「どうしてって何が」
オレは優位に立つと強いらしい。
困っているイルカが、また、かわいく見えてしまうから末期かもしれない。
もっと困らしてみたくなる欲望が、むくむくと・・・。
これは、あれか、好きな子を虐めたいってやつか?
いやいや、今は駄目だから。
葛藤している自分を自分で宥めてイルカに向き直る。



「オレたち男・・・同士ですよね」
イルカの声が泣きそうだった。
「そうだ〜ね。それが何か?」
男でも好きなる時は性別なんて関係ない。
好きな人は好きなのだ。
この気持ちに偽りはない。
「切っ掛けが解りません・・・」
途方に暮れたような顔でイルカはオレを見上げた。
「そうだねえ」
親しくなったり喧嘩したりで、イルカはオレとの関係性が解ってない。
オレがイルカを好きになった切っ掛けとなるべき出会いをイルカは忘れているから。
解っているのはオレだけだ。
ちょっとした優越感がオレの胸を満たす。
これでイルカがオレのことを思い出してくれたらいいのに。
「まあ、いいじゃないですか」
言いながらオレはイルカの体を壁から引き寄せて腕の中に囲い込んだ。
イルカの体は相も変わらず、あったかくて心地よい。
「そのうち追々、解りますよ」
好きだっていうオレの気持ちが。
声が聞こえた。
「カカシさん」
イルカがオレの名を呼ぶ。
その声に目を閉じる。
記憶を忘れたイルカもここにいるイルカも好きだ。
腕の中のイルカがオレに体を預けてきた。
「カカシさん」
「イルカ」
好きな人はイルカだ。
それは間違いない。
ずっとだ。



それからオレとイルカは歩み寄り、事実上、仲直りをした。
オレの好きだという気持ちがイルカに受け入れられたかどうか・・・。
返事は、まだ貰っていない。
だけど、前以上にイルカとは親しくなった気がする。
今日もオレはイルカと一緒に帰って一緒に晩飯を食べるつもりだった。
しかもオレの家でお泊りで。
かなり、オレはうきうき、そわそわしている。
気分が高揚中ってやつだ。
帰りに晩飯の材料をイルカと買うつもりだ。
楽しい夜になりそうだとイルカの仕事が終わるを上忍控え室で待っていたのだが。
慌しい足音がして上忍仲間の一人が駆け込んできた。
「おい、カカシ!」
「なによ」
「イルカが倒れた!」
「えっ」
立ち上がりざまに持っていた本を落としてしまった。
「な、なんで?」
「早く医務室へ行け」
「あ、うん」
でも足が思うとおりに動かない。
早く行きたいのにイルカの元へ。
そんなオレの背中を、ばしっと仲間が強く叩いた。
「しっかりしろ、カカシ」
で、急いで医務室へ行ってみるとイルカは、すやすやと寝ていた。
怪我もしてないし病気でもないらしい。
医務室にいた医療忍によると過労による貧血だって。
ほーっと安堵の息を吐くオレ。
よかった〜。
どきどきしていた胸を押さえて寝ているイルカのベッドに腰を下ろした。
ぎしりと音が鳴ったけどイルカは起きない。
寝ているイルカは最初に見つけた時のように目を瞑っている。
そっと顔を覗き込んだ。
もしも・・・。
もしもだけど。
オレは、ごくりと唾を飲み込んだ。
この目が開いた時に記憶を失っているなんてことは・・・。
そこまで考えて苦笑した。
さすがにないよなあ。
小説でもあるまいし。
するとオレの気配を感じ取ったのかイルカが薄っすら目を見開いた。
オレを見る。
「だれ・・・・・・」
イルカは二度、記憶を失っている。
二度あることは三度ある。
オレの背中を滝のように冷や汗が流れたのは言うまでもない。



終わり



二度あることは三度ある<三度目>



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