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気づいたとき 前編



中忍になったばかりの頃、戦場に出て死にそうになった。
敵に刀を振りかざされて、もう駄目だと思った、その時。
死を覚悟したのに助けてくれた人がいた。
目の前に現れて、鮮やかに敵を薙ぎ払い命を助けてくれた。
銀髪の上忍だ。
年は変わらないようなのに強かった。
後に有名な忍、畑カカシだったと知った。





カカシ先生と話していると、ふとした時に沈黙が訪れるんだけど。
そういう時、決まってカカシ先生は俺を面白そうに見る。
何故か、いつも顔を覆っている布を取って。
何を意味しているんだろう。
見られると、俺の心の中を見透かされそうで怖い。
だから全力で平静を装うのだ。
絶対悟られないように、俺の心のうちを。
あれから十年弱たっているのに未だに変わらない気持ちを。
昔、助けてもらった時から、もしかしてカカシ先生のことが好きなのかもしれないことを。






「ねえ、イルカ先生。」
「何でしょうか?」
資料室で本を片付けている俺の横でカカシ先生は同じく本を片付けている。
手伝ってくれているのだ、上忍なのに。
「この後、飲みに行きませんか?」
「今日、ですか?」
「うん。」
俺は最後の一冊の資料を本棚に入れた。
カカシ先生が手伝ってくれたので、資料室の整理は予定より早めに終わってしまった。
手伝ってくれたお礼に今日は奢る、とか。
眉根を寄せて考えていると、カカシ先生が、あの顔をした。
俺を見て面白そうな顔を。
「・・・何か?」
「いや、そろそろいいかなって。」
「そろそろって何がですか?」
何となく嫌な予感のような予感がする。
「うん、あのね。」
ずいっとカカシ先生が俺に顔を寄せてきた。
いつの間にやら、顔の布が取られていた。
資料室は余り広くないので、そう寄られると困る。
後退しても、すぐに壁で詰まってしまうから。
「お互いのためにも、正直に答えて欲しいんだけど。」
今度は、すごく嫌な予感がした。
お互いのためにって何だろう。
「イルカ先生、何か言いたいことがあるんじゃないかなって。俺に。」
「カカシ先生にですか?」
カカシ先生に伝える業務連絡は受けてないし、任務についても今は依頼はない。
七班の子供たちのことかな。
それとも、来週の合同の飲み会のことかな、俺が幹事だから。
いろいろな考えに捕らわれていて、気が削がれていた。
だから、カカシ先生が突然発した言葉に素直に返事をしてしまった。
「イルカ先生は俺のことが好きだよね?」
「え、あ、はい。多分。」
だって、いつも思っていたことだから。
俺の答えを聞き、カカシ先生はちょっと目を眇める。
「多分ってのはいらないなあ。」
多分を省いてもう一回言ってほしいな〜、なんて言われるが。
俺は自分でも顔色がみるみるうちに悪くなるのがよく分かった。
失言・・・だ。
絶対に言わないって固く思っていたのに。
固く固く心に誓っていたのに。
本人を目の前にして、あっさりそれが破られるとは俺の誓いは案外固くなかったのか。
だいたいにして、男が男を好きとか嫌いとか変だしさ。




俺の混乱を余所にカカシ先生はニッコリ笑う。
「これって告白だよね?」
告白・・・になるのかな。
告白って自分から相手に気持ちを伝えることだよね?
俺はどちらかというと言わされた感があるんだけど。
でも。
「い、一応。多分。」
「もう、イルカ先生。多分はいらないって言ったでしょ。」
カカシ先生は不満そうだ。
そう言われたって、俺だって困る。 カカシ先生が他の誰かと結婚しても心から祝おうと思っているし。
そして子供が生まれたら喜ぶと思うし。
考えると少し胸が苦しくなるけど。
いつかは忘れられるから。




哀しくなってきたので俯いていたら、そっと頬に手が添えられた。
顔を上げさせられる。
カカシ先生が不安そうな目をしていた。
「イルカ先生、何を考えてるの?」
俺の心の内を覗き見るように目を合わされた。
「告白されたから返事をしようと思うんだけど聞いてくれる?」
「あ、はい。」
俺は小さく声を出した。
言われることは想像つくから。
今から心の準備をしてダメージに備えなきゃ。
ゴクリと唾を飲み込み気を落ち着かせた。
「どうぞ。」
心臓がドキドキし始める。
この場から全力で逃げ出して、さっきのことはなかったことにしたい。
カカシ先生が真剣な顔をしてるのも怖い。
何か重大なことを言おうとしてるんだよね。
「あのね、イルカ先生。俺・・・。」



コンコンコン。
カカシ先生が次の言葉を言おうとした時。資料室の窓ガラスが叩かれた。
式が来たのだ。
こんなこところまで式が来るなんて用事はカカシ先生にあるに違いない。
カカシ先生は、溜め息をついて窓を開けて式を受け取った。
ざっと目を通してから式を焼き捨てる。
俺の方を申し訳なさそうに見た。
「すみません、急な任務で・・・。行かないと。」
「あ・・・。そうですか。」
正直、俺は助かったと思った。
これで、このまま忘れたことにして、なかったことにしてくれたら。
そう願わずにはいられない。
なのに。
「明日の夕方には任務が終わって帰ってきますから、あの。」
カカシ先生は照れくさそうに言う。
「告白の返事をさせてください。」
「えっ。」
「駄目?」
「駄目ではないですけど。」
駄目ではないけど、この場で一言「ごめんね。」と言って断ってくれれば傷は浅くて済むのに、明日まで延ばされると別の感情が出てくるじゃないか。
それは即ち期待だ。
なのに、カカシ先生「良かった。」とホッとしたように笑った。
「ここでなら見つからないと思ったんですけどねえ。」
残念そうにしてから資料室のドアを開けた。
「じゃ行ってきます。待っててね。」
「はい、お気をつけて。」
「うん。」
最後は目を細めて、俺に優しげな視線を投げかけて行ってしまった。



こ、これって何なんだろう。
今のはいったい何?
長年の想いが伝えられて喜ぶべきなのか。
それとも玉砕するのを待たされているだけなのか。
急な出来事に俺は力が抜けて床に座り込んでしまった。
でも告白した後のカカシ先生の態度や雰囲気は好意的なものだったような気がする。
もしかしたら期待していいのかな。
さっきとは違う意味でドキドキしてきた。
なんだか幸せに近い気持ちだ。
明日まで、まだ時間がある。
その間だけ、こんな気持ちでいてもいいよな。
そう思うと少しは自分を慰められたのだった。



気づいたとき 後編

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