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犬の領分 4



その日の夜。
何やかやと事後処理で、遅くなってしまったイルカが家に帰ると。
玄関にカカシがいた。
黒い犬の。
「カカシ?」
最初は目を疑ったものの、イルカは犬のカカシの姿が現実のものであるのが分かると。
慌てて、急いで駆け寄った。
「どうしたんだよ、急に。此処に来ていいのか?」
カカシはお座りをして、尾をゆるやかに振っている。
元気そうだ。
「また、会えるなんて思ってもみなかったよ。」
カカシと顔を合わせるように、地面に膝をついた。
青い目がじっとイルカを捉えている。
懐かしい青い目。
カカシがイルカの頬を舐め、鼻を摺り寄せてくる。
「なあ、カカシ。」
声が自然と小さくなった。
「ぎゅーっとしてもいい?」
カカシが頷いたのを見て、イルカはカカシの体を抱き締めた。
「あったかいなあ、カカシ。」
カカシの体温を感じて、イルカの胸に急に何かが押し寄せてきた。
「今日さ、色んなことがあって怖かった。いや、怖くないけど怖いときもあるんだ。誰か死ぬんじゃないかって。」
イルカはカカシに縋りつく。
「カカシ。」
暖かい体に顔を埋め、目を閉じた。






目を閉じていたイルカはふと、気配に違和感を感じた。
自分の体に腕を回されて、誰かに抱き締められている。
犬ではない、誰か人間に。
「イルカ。」
自分の名だ。
驚いたイルカが体を離そうとすると、逆に引き寄せられる。
「イルカ。」
耳元で名を呼ばれた。
「カ、カカシ?」
顔を上げると、犬のカカシではなくて人間のカカシが目の前に。
「い、いや、畑上忍?な、何で、どうして、此処に?」
「カカシって呼んでよ。」
目の前の人間のカカシが悲しそうな顔をした。
「畑上忍なんて嫌だ。カカシがいい。」
「ええ?いや、あの、犬のカカシは何処に・・・。」
訳が分からないイルカは、しどろもどろだ。
そんなイルカを抱き締めたまま、カカシは立ち上がった。
お互いの顔が、とても近く、よく見える。
暫く見詰め合った。
間近で見たカカシの目は、やはり犬のカカシのように青い。
目に見蕩れているイルカにカカシは微笑んだ。
「あの犬のカカシは俺です。」
「えっ。」
「騙すようなことしてごめんなさい。でも、最初は本当に敵に術を喰らって犬になっていたんです。」
初めて知る真実に、驚きの余り、イルカは言葉が発せない。
カカシの腕の中で固まっている。
「犬の姿でも、イルカ先生の傍にいられたらと思っていましたが。」
カカシが苦しそうな顔になる。
「でも、駄目なんです。犬じゃ。」
ぎゅうっとカカシの腕の力が強くなった。
「犬じゃ、イルカ先生を抱き締めることができない。」
イルカ先生、とカカシが低い声で囁いてくる。
「ねえ、俺を傍においてよ。また、一緒にいさせて。」
突然のことに停止していたイルカの思考が、やっと追いついてきた。
「で、でも、あの、その。傍にって、一緒にって。」
どういうことでしょう、と眉を顰めている。
イルカの言葉にカカシも眉を顰めた。
「もう。イルカ先生。」
イルカ一人だけに聞こえるように。
そっと告白する。

「あなたのことが好き、ってことです。」

イルカは、カカシの言葉の意味を理解するのに、暫く時間を要したが。
意味が分かると、瞬時に。
暗闇でも分かるほど真っ赤になった。









あろうことか、そのままカカシはイルカの家に居ついてしまった。
犬の姿ではなく人間の姿で。
犬のカカシの、毛ですべすべの体を抱き締めるのも良かったけれど。
今は、人間のカカシをイルカが抱き締めると、抱き締め返してくれる。
カカシの腕の中は犬のカカシと同じように、あったかかった。






イルカはカカシのことを「カカシ。」とは呼ばないけれど。
「カカシさん。」と呼ぶ。
呼ばれたカカシは嬉しそうにイルカの元へ行った。
それから、犬のカカシと同じ事をする。
飛び掛ってきて、イルカを押し倒すのだ。
舐めるのではなく、顔中にキスをしてくるところが犬のカカシと違うけれど。
犬にはできないことをカカシはしてくれる。



「カカシさん、ずっと一緒にいてください。」
犬には言えなかった望みをイルカは言った。
「これからも、ずっと。」
「うん。」
「長生きしてくださいね。」
「うん。」
「無事に生きてください。」
「うん。」
「大好き、カカシさん。」
「うん、俺も。」
大好きだよ、イルカ。
イルカが生きている限り一緒にいるよ。
ずっと傍にいる。






後に事の顛末を知った五代目はにっこり笑って。
とても喜んでくれた。







終り


犬の領分 3



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