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彼の言い分 1




なんだか敵が多すぎた。
油断したわけじゃないけど捌ききれないし、面倒くさくなってきた。
たかが偵察に行っただけなのに、この状況とは何と云う体たらくだ。
どうするかな、と考えを巡らす。
やるか、やられるか、それとも逃げるか?
だが敵に四方八方囲まれて、生憎俺には逃げ道がない。
でもさー、逃げ切れないかな、どうにかして。
なんたって俺若いし、心残りなことがたくさんあるし、この世に未練が多すぎる。




という訳で、どうにかしてやろうじゃないかと、俺がクナイを構え直した時に、どっかから声が降ってきた。
「でやあああっ。」
ついでに声の主も木の上から降ってきた。
声の主は身軽そうにクルクルと回転しながら地上に着地する。
無論、着地前に前に敵を蹴散らしていて、地上に降り立つと威勢のいい声を放つ。
「どっからでもかかって来い!」
敵は素直に、その言葉の通りに襲いかかってきた。
そいつは、中々素早くて中々腕も立って大勢の敵と互角に、むしろ優勢に戦っていた。
敵の中に突っ込んでいくという、少々無茶なやり方をしていたけども。
一瞬、呆気に取られた俺だけど見ているだけなんて格好悪いし参戦したら敵は、あっという間に散り散りばらばら逃げていった。




敵が逃げていったことを確認すると途中で割り込んできたというか助太刀してくれたヤツは俺の方を向いて生意気な口をきいた。
「上忍もたいしたことないなあ。」
そして目を細めて、ふふんと笑う。
「なにー。」
俺は売り言葉に買い言葉で食って掛かってしまった。
「誰も助けてくれなんて頼んでないだろうが。」
「はっ。あの状況で、どうやって逃げるつもりだったんだよ?」
どうやってだ、と眇めた目で俺を見てくる。
なっまいきなヤツだな、どうしてくれると拳を握った時に、あることに気が付いた。



憎まれ口を叩く、そいつの肩口から血が出ていたのだ。
結構深いのが見てとれる。
確か、最初に木の上から降ってきた時に傷はなかったはずだ。
さっきの戦闘で怪我したんだろう。
なのに、そいつは全然、傷のことを意に介してないようで手当てをする気配がない。
そいつは構わないようだが、俺は構う。
「ちょっと。」
怪我した方の腕を取って引き寄せる。
「何だよ、触るな。」
「うるさい。」
俺は腰のポーチから包帯と傷に塗る薬を取り出した。
「怪我してるでしょうが。」
「掠り傷だ。あんたに関係ないだろ。」
「関係あるよ。」
口喧嘩しながらだけど、俺は丁寧に薬を塗って痛くないように、そっと包帯を巻いた。
触ってみると見た目より細い腕だった。
そして薄い肩だった。
ちゃんと食べてるのかなあ。



「はい。いいよ。」
包帯を巻き終わって腕を離し顔を上げると予想以上に、そいつの顔が近くにあった。
潤んでいるような瞳に心臓が、どきりと跳ねる。
顔を横切る一文字の傷に、大きな黒い目。
黒い目は意思を曲げそうにない、強い光で輝いている。
黒い髪は頭の、天辺で縛って風に揺れていた。
雰囲気は大人びていたが、顔は俺より幼く見える。



そいつは巻かれた包帯を軽く撫でると、俺に向かって頭を下げた。
天辺で結った髪も一緒に揺れる。
「手当てしてくれて、どうもありがとう。」
丁寧な物言いに、びっくりしてしまった。
実は意外に素直だったりするのかな。
「いや、それほどでも。」
何故か妙に照れてしまって、ついつい言ってしまった。
「手当てが必要な時はいつでも呼んでよ。俺、意外に上手だから。」
なんて言ってしまった。
何故に?
普段は、こんなこと言わない俺なのに。
なのに、そいつは。
「ありがとう。」と、もう一回言って、ちょっとだけ笑って。
「じゃあ、そのときはお願いするよ。」と言ったのだ。




最初の態度と、えらい違うじゃん。
なに、こいつ。
戸惑う俺に、そいつは「んじゃ、先に行くよ。」と声を掛けてきた。
どうやら行き先は俺と同じ野営地らしい。
ぱちっとウインクすると、ひらりと木の上に飛び乗って姿を消した。
笑った顔、可愛いじゃん。
ウインクされて嬉しいじゃん。
見蕩れていて、そいつを見送った俺は重大なことに気が付いた。
「名前、聞いてないじゃん!」
俺の名前も教えてないし。
ってことは、もしもだけど仮にだけど、また会いたいって思っても探しようがないんじゃない?
探すんだったら名前は必要だ。



大急ぎで俺は、そいつの後を追いかけた。





彼の言い分 2




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