弁当
月曜日。
会社の昼休み。
当然、昼食の時間である。
「あら、カカシ。」
紅が自分のデスクから動こうとしないカカシに声を掛けた。
「昼ごはん、食べにいかないの?」
するとカカシは、ふっと笑って「じゃーん!」と紅にあるものを見せてきた。
シンプルな柄の布に包まれた小さめの包み。
「何よ、それ?」
紅の質問にカカシは得意げに答えた。
「何ってお弁当だよ!」
ものすごく嬉しそうな顔で言う。
「イルカさんが作ってくれたんだよね。」と弁当の包みに頬擦りなんてしている。
「ふーん。」
紅は、そんなカカシを少しだけ羨ましそうに見る。
なので、ちょっと意地悪してみた。
「でも、お弁当なんてイルカちゃんと別れる前にも偶に持ってきていたじゃない?お握り作ってもらったって。」
「別れるとか縁起でもないこと言うなよ。」
顔を顰めてカカシは反論する。
「あれは、ちょーっとした行き違いで別れた訳じゃないし。今は仲良いし、俺の両親にも紹介したし、ラブラブで絶好調だし。」
「え、両親?」
カカシの反論の言葉の一部を紅は見逃さなかった。
「イルカちゃんをカカシのご両親に紹介したの?」
「そうだよ。」
「何て言って?」
「生涯を共にする人だって。」
「好きだって言ったの?」
「もちろん。」
きっぱりはっきりと言うカカシに紅は目を細めた。
「見直したわ。」
紅も、きっぱりはっきりと言った。
「カカシって、いっつも、やる気がなさそうで、だらっとしているけど。」
感心したようにカカシを見る。
「やる時はやるのねえ。」
「当ったり前でしょ。」
カカシは胸を張る。
「好きな人のことなんだから。」
そんなことを、さらりとカカシは本当に当たり前のことのように言った。
イルカのことをとても大切に思っているのが伝わってくる。
なんとなく悔しい紅である。
しかし、それには触れず話題を戻した。
「で、なんでお弁当が嬉しいの?」
「え?うん、実はね。」
カカシが、いそいそと弁当の包みを外す。
中から可愛らしい弁当箱が現れた。
可愛いといっても男性が使う範囲で可愛い感じのである。
「どう?」
弁当箱の感想をカカシは紅に求めてきた。
「どうって言われても・・・。」
首を傾げる紅にカカシは幸せ満面の笑みを浮かべた。
「これね〜。」
ふふふふ〜と、これまた幸せそうに言う。
「イルカさんが買ってきてくれたんだ〜。自分のと同じのですけど、って言って。」
いいでしょ〜とカカシは自慢げだ。
要するにカカシはイルカを同じ弁当箱だと言いたいらしい。
お揃いだと。
「週末は俺がイルカさんちに泊まりに行っているから月曜だけイルカさんが作ってくれた弁当を持ってこれるんだ〜。お握りも作ってくれるけど『偶にはお弁当箱のもいいんじゃないかなと思って』って照れて、はにかんで言って、お揃いのお弁当箱買ってきてくれて、愛情たっぷり入ったお弁当を俺に作ってくれたんだよねえ。」
イルカのことを話すカカシは夢見るような顔している。
きっとイルカの顔でも思い浮かべているのだろう。
「あー、そう。」
紅は腕時計を見た。
昼休みをだいぶ過ぎている。
「じゃあ、私、昼食に行くから。」
カカシの話を聞いて、なんだか疲れた紅である。
何か、がっつりしたものでも食べようかしら、なんて考えていた。
「うん、行ってらっしゃい〜。」
カカシは、ひらひらと手を振って紅を送り出した。
そうして嬉しそうに弁当を広げて食べ始める。
食べ終わった後はイルカに弁当が美味しかったことを、きちんとメールするカカシであった。
飲酒
予定
text top
top