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一目惚れ



イルカは親を早くに亡くして天涯孤独の身の上でもあったが、せっせと勉強して今年の春に大学生になった。
奨学金制度のお陰で晴れて大学生になったものの、アルバイトをしなければ生活費や光熱費、諸々の諸経費がかかりお金には事欠いている。
要するに常に金欠だ。
そして常にアルバイトをしている。



今日のイルカはスーパーの売り子であった。
簡単に言えば新発売の食品を簡単に調理して、お客に試食してもらい、美味しければ買ってもらうというものだ。
「新発売のウインナーでーす。」
イルカはスーパーで三角巾を被りエプロンをして、調理したウインナーをスーパーのお客に笑顔で配っている。
ウインナーを焼けば、いい匂いが漂って足を止め試食していく客は多いが、中々売れない。



それでも、まあバイトなのでイルカは、めげずに売り続けた。
「どうぞー、新発売の・・・。」
言いかけたとき、誰かに話しかけられた。
「・・・それ、おいしいの?」
「え?ああ、はい。」
目の前にはコートを着たサラリーマン風の男性が立っていた。



髪は薄い灰色の風貌が目を惹いたが、どこか、くたびれているような感じである。
「よかったら、ご試食ください。」
男性に勧めてみると一口食べた男性は「美味しい。」と呟いた。
「そうですか、よかったです。これは新発売のウインナーでスパイシーな香味が特徴の・・・。」
イルカが通り一遍の宣伝文句を言おうとすると男性は、それを手で制して、じいっとイルカを見詰めた後、おもむろに、そこにあったウインナーの袋を買い物カゴに全部入れた。
全部である。


「あ、あの・・・。」
売れなくて、少々困っていたイルカであったが、さすがに男性の行為には、びっくりした。
「これ、たくさん買っても懸賞の応募とかないですよ?」
何か勘違いしてないかと試しに言ってみた。
「分かっています。」
男性は首を振り、全然、別のことを聞いてくる。
「あなた、明日もここにいるの?」
「あ、はい。今週いっぱいは。」
バイトの契約は一週間であるので、あと数日、残っていた。
「じゃあ、また、明日ね。」
男性は、ぼそっと一言言い残してイルカの前を去っていってしまった。



それを呆然と見送っていたイルカは、はっと気がついた。
「え?また、明日って・・・。」
あの人、また来るのか。
いや、それよりも。
「あのウインナー、全部、一人で食べるのかなあ。」
見当違い名心配をしているイルカであったが、次の日、予告どおり男性は、また現れて、イルカが試食販売している食品を全部買い占めていった。
買い前に必ず、イルカの顔を舐めるように見ていく。



その行動を不気味に思うものの、お客さんであるので特に何も言わずにイルカはいた。
しかし、バイトの最終日に現れた男性は、妙に思いつめた顔をしていてイルカは心の中で、どうしようと息を潜めた。
この人、危ない人なのかな・・・。
ちょっとだけ身の危険を感じてしまう。
その男性は言った。
「あ、あの、よかったら俺と・・・。」
次には何を言うのだろう、と緊張のあまり、ごくりと唾を飲み込みイルカ。
「良かったら、俺と付き合ってください!」



イルカはビックリしすぎて目をまん丸にしてしまう。
これまでの人生、同性に告白された経験はない。
しかし、男性の言葉は続いていた。
「今まで買ったウインナー、一人では食べきれないので手伝ってください!」
その言葉に、どっとイルカは肩の力が抜けた。
やっぱり、一人じゃ食べ切れなかったんだ・・・。
可笑しくなったイルカは、ふふふ、と笑うと頷いた。



「いいですよ。俺でよかったら。」
「本当ですか?」
男性の顔が、ぱああっと輝く。
「やったあ!俺は畑カカシと言います。」
「あ、俺は・・・。」
「海野イルカさんでしょう!」
胸に着けたネームプレートで、ばっちり名前が覚えられていた。
「は、はあ。」
男性の、いやカカシの迫力に押されながらイルカは、早まったかな・・・と、ちょっと後悔していた。



一目惚れ、その後




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