AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


非擬似恋愛的妄想



「あー、もう秋だなあ」
イルカは空を見上げて、にこやかな顔になる。
「まだまだ暑いけど、空が高く見える」
空は澄み切って雲一つなかった。
天気のいい日は気持ちがいい。
何かいいことありそうな予感がする。
そんなことを思ったイルカは一人、頷いていた。



「え?俺が?」
その日、知り合いの上忍のアスマに誘われてイルカは飲みに来ていた。
アスマは階級は違えど、イルカの教え子たちの上忍師で満更知らない仲でもない。
おまけにアスマはぶっきら棒な物言いしながらも面倒見がよく、イルカも慕っていた。
ビールの入ったグラスでお互いの疲れを労い、乾杯した後にアスマが切り出した話にイルカは、少し驚いていた。
「ああ、そうだ」
ビールを、ぐっと一気に飲み干したアスマは苦い顔をして、お代わりを注文する。
「おかしな頼みだと思うが・・・。いや、俺もおかしなつーか、変な頼みだということは充分、分かっちゃいるんだが」
注文したビールをアスマは、また、ぐーっと飲んで半分ほど空にした。
飲むペースが早い。
「こんなことイルカに頼むは胃が痛い・・・じゃなくて良心が痛む・・・じゃなくて罪悪感がある・・・んじゃなくて」
どうもアスマにしては、とても言い難そうにしている。
できたら言いたくないような。
「いやまあ、なんつーか、そのなんだなあ」
アスマは遠い目をしてタバコを吸う。
はあ、と溜め息ともつかない息をタバコの煙と一緒に吐き出しながら言った。
「なにしろイルカがいいっていうか、イルカが適任っていうかなあ」
煙を吐き出してからイルカを見て困りきった顔になる。
「イルカじゃなきゃ駄目だって言うんだよ」
「はあ」
アスマが困っているのは分かった。
イルカにおかしなことを頼んでいるのをアスマが分かっている、のも分かった。
「そうなんですか」
どうにも返答しようがなくてイルカはビールに口をつける。
ごくり、とアルコールを含んだ炭酸がイルカの喉を通り過ぎて胃に落ちていった。
喉越しがよくてイルカもビールを飲み干すとお代わりを注文する。
それからアスマに言った。
「俺でお役に立つのなら」



「いいのか・・・」
イルカが了承したというのに何故か、アスマはものすごい悲壮感を漂わせた。
この世の終わりみたいな表情だ。
「ええ。だって、『ふり』をすればいいんでしょう?」
「そうなんだが」
アスマが銜えていたタバコの吸い口を噛んで、灰皿に入れる。
「別に断ったっていいんだぜ」
ビールの次に注文した冷酒をアスマは一口、飲んだ。
「イルカが嫌なら断ったって全く問題ない。俺の頼みだからって引き受けることはないからな」
「まー、そうですねえ」
お代わりしたビールを飲みながらイルカは面白そうに微笑した。
「今、現在、俺に恋人がいたら問題だと思いますが残念ながら、そんな人いませんしね」
「・・・そうか」
アスマが眉間に皺が寄る。
「それにアスマさんが仰った日なら」
イルカが飲みに来た店の壁に貼ってあるカレンダーに目をやった。
「ちょうど今年は休日ですよ」
「・・・そうだな」
同意するアスマの声は多分に悲壮感が含まれていた。
「幸いなことに仕事も任務も入っていませんしね」
明るいイルカと対照的にアスマは、どんどん暗くなっていく。
「・・・そうか、仕事は入ってないのか」
「はい」
「・・・そうか、何にも予定はないのか」
「そうですよ」
にこっと笑ったイルカは酔いが回ってきたらしい。
「それに、ちょっと面白そうじゃないですか!」
「いや、ぜんぜん、全く面白くないと思うが。むしろ、どちらかというと危険なんだがなあ」
アスマの呟くような声はイルカの耳に入ってないようだ。
「面白いですよ〜」
にこにこと笑うイルカは酒を飲んで笑い上戸になっていた。
「今まで恋人がいなくてデートもしたことがなくて、それじゃあ恋人が出来た時に困るからって・・・。デートの練習としてでしたっけ?恋人のふりして9月15日に一日デートしてほしい、だなんて。ピュアな人ですね!」
「あのな、イルカ・・・」
アスマは何かを忠告しようとしていたが酔い始めたイルカの勢いに遮られた。
「一日限定の恋人なんて、可愛い人ですねえ」
「いや、ぜんぜん、可愛くねえよ、あいつは。ピュアとは程遠いんだぜ」
「恋人のふりなんて、楽しそうですし」
「それだけじゃ終わらねえと思うが、俺は」
「俺もデートなんて久しぶりでわくわくします!」
「相手は、もっとわくわくしてるんだよなあ・・・」
「俺、頑張りますから!」
ぐっと拳を握るイルカを見てアスマは胸が痛くなった。
借りがあるとしてもイルカを騙すような真似して、本当に良かったのだろうか・・・。
イルカ、すまん・・・。
アスマは心の中で深々と頭を下げて謝った。



次の日。
アスマはおかしなことを頼まれた人物に結果を報告した。
「オッケーだってよ、一応」
「ほんとか、アスマ!」
出ている片目を、きらっと輝かせてカカシはアスマを見た。
「ああ、言われたとおり待ち合わせの場所と時間も伝えてきたぜ」
「やったー!」
上忍の控え室で興奮して立ち上がったカカシは、バンザイをしていた。
「これでイルカ先生とデートできる!しかも9月15日!俺の誕生日!」
ガッツポーズをしている。
アスマにおかしな頼みごとをしたのはカカシだったのだ。
同じ上忍で同僚のカカシは何年かぶりに里に帰ってきた。
下忍の上忍師を務めるために。
そこで下忍の子の担任をアカデミーでしてイルカに会い、恋に落ちたというのだ。
そして自分の誕生日にイルカとデートできるように画策したのだ、アスマを巻き込んで。
「あのなあ、カカシ」
溜め息を吐いたアスマはカカシに忠告した。
「くれぐれもイルカに変なことするなよ?いくら、一目惚れしたからって無茶なことはしないでくれ」
だがカカシは聞いちゃいなかった。
「デートできれば、あとはこっちのもんだっての!」
「デートの練習って言っていただろ?」
「それに、恋人としてのデートだし!」
「恋人のふりして、だろ?」
恋に目が眩んだカカシは都合の悪いことは聞こえていない。
「俺は勝つ!」
カカシの後ろで炎がめらめらと燃えていた。
もちろん、恋の炎だ。
そんなカカシを呆れたようにアスマは見ていた。
「何に勝つって言うんだよ・・・」
疲れた顔をしていたのだった。


非擬似恋愛的現実


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