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fever safe! 7



「好き」
そう言ってキスしたイルカの頬は、とても柔らかかった。
イルカが嫌がらないことをいいことに、もう一度、唇を押し付ける。
弾力のある、つるつるした健康な肌。
キスをして、すりと頬に頬を寄せると触り心地が何ともいえないくらい、気持ちがいい。
永遠に頬を摺り寄せていたいたいくらいだ。
「ちょっと、あの、カカシさん?」
当惑したようなイルカの声がするが、構わず続けた。
「うーん、いいねえ」
イルカの肩に置いていた手が背に回る。
「あー、何でこんなに気持ちいんだろ」
触れ合っていると満たされる。
イルカの体温や匂いはカカシを安堵や快楽の境地へと誘った。
こんなのはイルカだけだ。
「何しているんですか、カカシさん・・・」
イルカがカカシを押し返そうとしているが、そんな力では無理に決まっている。
チャクラ切れで倒れていたカカシだが、今は完全に復活しているから。
「ん〜、イルカ〜」
自分の腕の中にイルカの体を抱き込みながら、カカシは幸せに酔っていた。
イルカが、ここにいるから。
「あ、あの・・・」
渾身の力を込めたイルカが、ぐぐっと少しだけカカシの胸を押し返してきた。
「聞いてください、カカシさん」
カカシに言いたいことがあるらしい。
「なーに?」
もしかして、さっきの話の続きなのかもしれない。
不吉な別れの予感がする話。
そんなのされても、有無を言わせず却下するだけだが。
「あのですね」
カカシの顔を見たイルカは一度、俯き、顔を上げた。
真っ直ぐにカカシを見てくる。
「俺にも謝らせてください」
「え」
「ごめんなさい」
何故、イルカが謝るのだろう?



「だって」
黒い瞳が揺れる。
「だって、俺だって悪かったですし」
「イルカは悪くないよ」
「そんなことないです」
イルカは、ぶんぶんと首を振った。
「つまらない焼きもち妬いて。料理だって、いっつもカカシさんに作ってもらってばっかりで、ちっとも上達しないし」
「イルカ・・・」
イルカが、そんな風に思っていたなんて。
「料理を作ろうとしても、手間ばかり掛かって上手くいかないし、包丁で指切ってばっかりだし」
迷惑しか掛けてない、とイルカは言う。
「カカシさん、暗部の仕事で大変なのに、俺のこと気に掛けてくれて。カカシさんは大人なのに、俺は子供だなって」
カカシは言うほど、大人ではない。
ただ自分のやりたいこと、したいことをやっているだけで。
それは誰彼となくやっているわけではなく、特定の人物にしかやらない。
特定の人物とはイルカだ。
イルカだけだ。
「カカシさんは、いつだって優しいし」
じっとカカシを見上げたイルカが黒い瞳に強い力を湛えている。
何かを決意したように。
「カカシさん、俺」
緊張のためか、ごくっと唾を飲み込んだ。
「カカシさん」
カカシの名を何度も呼ぶ。
イルカは・・・。
見上げてくるイルカにカカシは直感した。
イルカは何か大事なことを言おうとしている。
とっても大事なことを。
「カカシさん、俺は」
ついにイルカは言った。
「俺はカカシさんのことが好きです」



好き・・・。
言葉になったイルカの気持ちが、カカシの脳にダイレクトに伝わった。
「いつもカカシさんは躊躇いもせずに言ってくれるのに」
俺は中々、言えないから。
勇気を出して言ってくれたのだ。
言葉に出す出さないはお互いの性格に起因するものだから、カカシは余り気にしていなかったけど。
イルカが頑固で意地っ張りで、それでいて気持ちの優しい人間だということは、よく解っていたから。
時には悪戯もするが、そんなところも愛しくて仕方がない。
だけども。
解っていても。
解っていても、言葉にされると何ともいえない。
何ともいえないほど、充足感ある。
・・・俺はカカシさんのことが好きです。
イルカが俺を好き。
じわじわと押し寄せる幸福の波。
それが、どおっと一気に押し寄せてきた。
「イルカー!」
両手を広げてカカシはイルカに抱きついた。
「わっ!わわっ!わーっ!」
どてっとイルカは後ろに引っくり返る。
頭にはカカシの手が添えてあったので、地面にぶつかるようなことはなかったが。
つまり、カカシに押し倒されるような形になっていた。
「嬉しいっ!すっごく嬉しい!好き好き、大好きイルカ!」
「ちょっと、カ、カカシさんっ」
「ああ、もう好きすぎて堪らない!堪らないんだけど、イルカ!」
「い、いいから、どいて・・・」
「えっ、いいの!イルカ、俺の気持ちが通じたんだね、愛してるよ!」
「な、何が?カカシさん、お願いだから、どいてください」
微妙に会話が噛み合っていなかった。
「イルカ!」
「落ち着いて、カカシさん」
「こんなときに落ち着いてなんてられないよ」
「そんな・・・。だ、誰か・・・」
「ふふふ、呼んでも誰も来ないよ」
カカシが悪い顔で、ほくそ笑んだときだった。
「こらっ!カカシ!」
怒号と共に強烈な一打がカカシの頭を直撃した。



ふと我に返ったカカシが周りと見ると・・・。
仲間の暗部が呆れた風情でカカシとイルカを囲んでいた。
「いったい、何をしているんだ」
「やけに遅いと思ったら」
「イルカを襲っているなんて」
「全く、恋人の風上にも置けんな」
「恋人失格だ」
後半は僻みも入っているような気がする。
「ちょっとー」
頭を摩りながらカカシは仲間の暗部を睨む。
「いいところだったのに、邪魔しないでよー」
思いっきり不満な顔になっている。
その隙にイルカはカカシの下から、素早く這い出た。
「た、助かったあ」
ほっと胸を撫で下ろしている。
「皆さん、ありがとうございました」
まだ、どきどきする胸を押さえながらイルカは助けてくれた暗部たちに礼を言う。
「本当に本当にありがとうございました。お陰で助かりました」
「いやいや」
「礼には及ばない」 「いつでも呼んでくれ」
「あのねー」
そこへカカシが割り込んだ。
「何か違うでしょ、俺が悪いことしたみたいじゃない」
「悪いことだろ」
すかさず、暗部の一人が突っ込んだ。
「何でよ、俺とイルカは恋人同士だもん」
「イルカは未成年だ」
びしっと言われた。
カカシも未成年だけれども。
「子供には子供の付き合い方があるだろう」
子ども扱いされてしまった。



「ったく、あったまにきちゃうよね」
無事に家に帰りついたカカシは、ずっと文句を言っている。
「俺とイルカのことに口出すなんて」
「ま、まあまあ、いいじゃないですか。心配してくれているんですよ」
暗部に助けてもらったのは感謝しているが、それからカカシの機嫌が頗るよろしくない。
「それより」
イルカが雰囲気を変えようと、話題を切り替えた。
「今日こそ、俺、ご飯作りますから、その」
上目遣いでカカシを窺うように見る。
「食べてもらえますか?」
ちょっと、まだ自信ないけど。
包丁で怪我をするかもしれないけれど。
「それは・・・」
家に帰ってきたカカシは遠慮がない。
何しろ、家にはカカシとイルカの二人きりだけだから。
「それは、プロポーズですか!」
イルカに好きと言われて、その効果は持続中だ。
「もちろん、オッケーです!入籍や結婚式は、いつにしますか!」
妙に現実的で生々しい。
「そういうことじゃなくて」
もう、カカシさんは〜と呆れたように言うイルカ。
「ご飯を俺が作るから食べてね、っていう話ですよ」
「そんなの解っていますって、残さず食べますよ〜」
「疲れているんですから、休んでいてください」
ご飯ができたら起こしますから。
「イルカといると疲れなんて、吹っ飛んじゃうんだよねえ」
イルカの腰に手を回して、猫のようにゴロゴロとイルカに懐くカカシ。
「こんなに俺を幸せにしてくれちゃって、ちゃんと責任取ってよね」
ぎゅっとイルカを抱きしめた。
「俺は男らしく責任取って、俺の一生をイルカに捧げるから」
受け取ってよね、と。
「そんなの、まだ解らないじゃないですか」
対してイルカはクールだ。
「この先、お互いにもしかして他に好きな人ができるかもしれませんし」
「俺は出来ないよ、イルカだけ」
「それは俺だって、カカシさんだけですけど」
「じゃー、問題ないじゃない」
にっこり微笑まれてイルカは言葉に詰まる。
「ということで」
何がどうなって、ということで、なのか。
「俺は生涯、イルカだけを愛すことを誓います」
そう言われてはイルカも引けない。
「お、俺だってカカシさんを一生愛し続けますよ」
言ってから、自分の言葉に照れている。
「・・・何で、こんなことを言っているんだ、俺」
「照れるイルカも可愛いなあ」
カカシは、でれでれだ。
暗部の威厳は今ない。
ただただ、イルカを好きな一人の人間だ。
「それじゃ」
カカシはイルカの唇に自分の唇を、そうっと重ねる。
「誓いのキスを」
囁くように言ってから口付けた。
「愛している、イルカ」
口付けは蕩けるように甘く。
言葉は絆を深めて。
二人を幸せな気持ちにしたのだった。





fever safe!6




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