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その一言が命取り その後の二人



「イルカ先生!」
カカシがイルカの痕跡を辿って後を追う。
消えてしまったイルカは、どこに行ったのか。
一日ぶりに会えたのに。
カカシは歯がゆい思いをする。
幸い、休みは一日残っているんだから。
ぐっと拳を握り締めた。
イルカ先生と二人きりで過ごさなきゃ!
それは決定事項であった。



探すまでもなくイルカは、すぐに見つかった。
というか、家に帰っていたのである。
イルカの家の前に降り立ったカカシは慎重に玄関の扉をノックした。
コンコンコン。
「イルカ先生」
静かに呼びかけてみる。
家の中の気配が僅かに動いた。
もう一度、呼んでみた。
「イルカ先生」
中の気配は動かない。
「俺ですよ、イルカ先生。カカシです」
今度は強めにノックした。
「中に入れてください」
ねえ、とカカシは優しく呼びかけた。
「顔を見せてくださいよ、イルカ先生」
そうして、しばらく待っていると中の気配が玄関の扉の前まで移動してきた。
多分、イルカは玄関の扉の前まで来ている。
カカシは確信した。



ここが辛抱、とカカシは焦らず急がずイルカが扉を開けてくれるのを、じっと待つ。
ここで急かしたりしたらイルカは逃げてしまう違いない。
まだかなまだかな、とカカシが期待に胸を膨らませていると玄関の扉のドアノブを回す音が聞こえた。
カチャ、と音がして扉が細く開く。
細く開いた扉からイルカが外を覗いてきた、と思ったらカカシの顔を見た途端、すぐにまた閉めようとする。
だが、そこを逃すカカシではない。
扉が閉まらないように細く開いた隙間に手を入れ、がっちりと扉を押さえつけた。
すかさず足も扉の隙間に入れる。 驚いた顔をしたイルカが扉を閉めようと頑張っているが残念ながら扉は閉まる気配がない。
「イルカ先生、どうしたの?」
少しだけ哀れっぽい声をカカシはわざと出した。
「なんで俺から逃げるの?」 悲しそうにイルカを見つめる。
そんなカカシを見たイルカは言葉に詰まったようで俯いてしまった。
俯いてしまったので表情は見えないが何となく怒っているような気がする。
普段、温厚なイルカが静かに怒っているのは、ちょっと怖い。
元々、イルカは怒っても引き摺らないタイプだ。
「・・・怒っているんですか?」
おそるおそるカカシは訊いてみた。
イルカが怒る理由は見当がついている。
誤解ではあったがカカシがイルカのことを迂闊に話したことを快く思っていないのかもしれない。



「あれは俺も悪かったと思っています、謝りますから・・・」と言ったところでイルカが大きな声を出して蹲った。
「わーっ!言わないでー!」
両耳を塞いで目も瞑っている。
「聞きたくなーい!ってか思い出したくないです!」
「あの?」
玄関の扉を開け放ち、蹲ったイルカの隣にカカシは膝を突く。
「ちょっと、イルカ先生?」
イルカはカカシの声が聞こえないのか、いやいやと首を横に振っている。
「恥かし過ぎます!どうしよう!人が大勢いる場所で好きとか告白とか言ってしまった!」
もう明日から仕事に行けない、とイルカは真っ赤になっていた。
どうやらカカシに怒っているわけではなく、自分の発言に対して後悔しているらしい。
「ああ、あれですか」
カカシはイルカが言ったことを思い出した。
「イルカ先生が言った『最初は俺がカカシさんを好きになったこととか、そして最後はカカシさんが告白してくれたこととか、その間の恋愛に至るまでの過程とか』ってこと?」
一言一句間違わずに言うとイルカは聞きたくないと全身で拒否した。
「あんなこと言うなんて!」
俺の馬鹿ー!と自責に念に駆られている。



まあねえ、とカカシは肩を竦めた。
イルカ先生の性格からいって普通だったらあんなこと言わないもんね。
思わず口から飛び出た言葉であろう。
再び思い出してカカシは、にやっとしてしまった。
実は、あの発言は思いもよらぬもので嬉しかったのだ。
イルカ先生の方から俺のことを好きなってくれたなんてねえ、と頬が緩む。
とっても幸せな気持ちになる。
「まあ、いいじゃありませんか」
カカシはイルカの肩に手を置いた。
もう肩の方の手でイルカの髪を触る。
結んであるイルカの髪を指に、くるくると巻きつけるのが実はお気に入りだったりする。
可愛いよねえ。
「あんなこと言っても」 あんなこと、にイルカは顕著に反応した。
「人が大勢いたってイルカ先生は言ってますけど大して人はいませんでしたよ」
え、といった感じでイルカは顔を上げた。
ちょっと潤んだ目がカカシを見ている。
やっとイルカの顔を見ることが出来たカカシは、けろりとして言った、事実を違うことを。
「人は少なかったし、俺たちの話も聞こえていませんよ」
「・・・そうでしょうか?」
「そうですよ」
カカシは微笑んだ。
「聞いていたのはアスマくらいですから俺が後で、きっちり口止めしておきます」
ね、と言われてイルカは「はい」と頷いた。
カカシに、そう言われるとそれが真実のような気がしてきた。
「イルカ先生だって、それほど大きな声を出していなかったじゃないですか」
言われれば言われるほど、そうかもしれないとイルカは思い始める。
カカシの暗示のかかったように。
「だから」
何がどうして『だから』なのか知らないがカカシは根拠のない自信を振りかざす。
「大丈夫ですよ」
きっぱりと言い切った。
「俺たちの他に誰も聞いていませんて」



そこで、にっこりと笑うとイルカは落ち着きを取り戻したようだった。
「本当にそうでしょうか?」
「そうですよ」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
カカシはイルカの手を取って立ち上がらせた。
「なーんにも心配ありません」
「カカシさんが、そう言うなら・・・」
なんとなく、なんとなくイルカは納得したようだった。
しかし口から出てしまった言葉は取り消せないので恥かしそうにはしている。
そんなイルカがカカシは好ましい。
カカシはイルカの肩に手を回すと後ろでに玄関の扉を閉めた。
もちろん鍵を掛けるのも忘れない。
自然な感じでイルカの家に上がりながらカカシはイルカに囁いた。
「あと一日、休みが残っていますね」
「あ、はい」
イルカは素直に頷く。
「イルカ先生が俺の会いたくて早めに帰って来てくれたからですよね」
「ええ、まあ」
歯切れ悪くイルカは返事をした。
好意、とくに恋愛に絡む好意を表すのがイルカは苦手だ。
「じゃああ」
笑いを漏らしたカカシはイルカを嬉しそうに引き寄せると胸に抱く。
「イルカ先生が任務前に俺に言い残したこと実践しましょ」
「あ、あれは・・・」
イルカは任務に行く前に何事か囁いていた。
カカシの言葉を聞いたイルカは慌てふためいている。
「その、そうだったらいいなあって」
「ですよねー、俺もそうですから」
ぎゅっとイルカを抱きしめたカカシは嬉しそうな顔をした。
「俺も『休みが出来たら二人きりで、ゆっくりのんびりしましょうね』ってのに同意です」
嬉しそうなカカシの顔はにやけた。
「それって二人っきりで、いちゃいちゃしてラブラブで甘々なひと時を過ごしましょうってことですよね」
拡大解釈している。
「休みは一日残っていますから」
楽しみましょう、と言ったカカシにイルカは違うと反論したかったのだが。
その口はカカシに塞がれてしまった。
口付けられたイルカはカカシの愛を、たっぷりと思い知らされることとなり。
残った休み一日は恋人たちにとっては実に有意義なものになったのであった。




その一言が命取り4





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