AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


どこへいずこへ1



今日は俺が生きていた人生で一番、感動した日だといっても過言ではない。
なぜならば、ずっと想っていた人に告白されたからだ。
想っていたというのは、まごうことなく好き、愛しているという意味である。
でも相手が相手だったので俺は想いを口にすることはなかった。
だってさ、きっと相手に迷惑が掛かるんじゃないかと思っていたから。
相手は同性、つまり俺と同じ男で、しかもアカデミーの教師をしている真面目一辺倒の人物。
なのに見せる笑顔は人を明るくさせて前向きな性格も、とても好感がもてる。
そんな人に俺は徐々に惹かれていくもの無理がないというもの。
たとえ、それが同性であっても。
恋をすれば、そんなもの関係ないんだ、と実感した。
ああ、恋って素晴らしい。
そんな俺の恋の相手はイルカ先生だった。



好きな相手だったから告白しないまでも俺は、さり気なくイルカ先生に近づいていった。
幸い、俺の指導している下忍の子供たちがイルカ先生の元教え子だったので接点はたくさんあった。
それに依頼書をもらったり報告書をうけとったりする受付所をイルカ先生は兼任していたので会う機会は事欠かなかった。
だから俺は偶然を装っているか先生と一緒に帰ったりして、偶然を装って廊下で立ち話をしたりして。
涙ぐましい努力をしてイルカ先生と食事をしたりする仲までになった。
それも二人きりで。
イルカ先生と会ったり話したり触れ合えば触れ合うほど、ますますイルカ先生を好きになっていった。
好きになる自分を自覚した。
食事をしながらイルカ先生を見て、ああ、イルカ先生大好きだ、と心の中で呟いてみたりした。
我ながら、ちょっとあれだなあと思ったりもしたけれど。
恋する心は止められない。
実際に表面に出さなければ、心の中では何を思っても自由じゃないかと思ったりもした。
だって心の中で想うくらいいじゃない。
想いを伝えるつもりはないのだから。



となんやかや理由をつけて自分を納得させていた。
この想いは一生、自分の中に秘めていようと決意していたのに。
ある日、イルカ先生と里中で昼飯を食べた俺はアカデミーに帰るというイルカ先生と途中まで一緒に歩いていた。
俺は、この後、別の任務があったけど少しでも長くイルカ先生と一緒にいたかったので。
隣と歩いていたイルカ先生が、ふと足を止めた。
しかも、ひと気がない場所で。
「どうしたの、イルカ先生」
見るとイルカ先生は俯いて黙っている。
具合でも悪いんだろうか?
もうすぐイルカ先生とは分かれ道でお別れだ。
・・・しかし。
具合が悪いなら病院に連れて行った方がいいよな。
何かあったら大変だし。
「イルカ先生、具合悪いのなら病院に行きましょう」
そっとイルカ先生の肩に手をかけると、ばっとイルカ先生が顔を上げて俺を見た。



ぎゅっと唇を結んだイルカ先生の瞳には強い意志が宿っている。
その強い意志を持った瞳で俺を見た。
「カカシさん」
俺の名を呼ぶ。
この頃には俺はカカシ先生じゃなくて、カカシさんと呼ばれていた。
さん付けの方が親密そうな感じだから俺は気に入っている。
カカシ先生って呼ばれるのも好きだけど。
俺もいつの日かイルカ先生をイルカさんとか、もしくはイルカ〜とか呼び捨てで呼んでみたいなあ。
そんな日は来るのか・・・。
いや、イルカ先生って呼ぶのも大好きなんだけどね。
可愛いよね、イルカ先生って呼ぶの。
って妄想じゃなくて空想している場合じゃない。
「はい、イルカ先生」
俺は素直に返事をした。
イルカ先生は俺に何かを言おうとしている。
それだけは分かった。



「あ、あのカカシさん、じ、実は・・・」
イルカ先生は緊張のためか口ごもっている。
いつもは、はきはきしているのに。
「こ、こんなこと言ったら変かもしれませんし、それに」
イルカ先生は乾いた唇を舐めた。
胸に手を当てて、何回も息を吐き出している。
「こんなこと言ったらご迷惑かもしれませんが」
イルカ先生が言うことで迷惑になることなんて想像できない。
何を言っても俺は大丈夫だ。
だって好きな人の言うことだから。



はあっと大きく息を吸ったイルカ先生は言った。
というか叫んだ。
「俺、カカシさんのことが好きなんです!」
必死、という言葉が似合うほどイルカ先生は必死で言ってきた。
「こんなこと言うなんておかしいとお思いかもしれませんが」
イルカ先生が、ひしと俺を見つめる。
「いつの間にかカカシさんのことを好きになっていて。最初は思い過ごしかと思ったんですけど」
瞬きを繰り返す大きな黒い目が俺を見ていた。
「好きだっていう気持ちも憧れとかお慕いするといった感じじゃなくて、その・・・」
イルカ先生が目を伏せる。
「あの・・・。本来、異性に対する好きという気持ちと同じ『好き』なんです」
しばしの沈黙の後、ぽつりとイルカ先生が呟いた。
「男性が男性にこんな気持ちを抱くなんて気持ち悪いですよね・・・」
俺を見ないままイルカ先生は身を翻す。
「すみませんごめんなさい、今、言ったことは忘れてください!」
だーっと走って、あっという間に姿が見えなくなってしまった。



俺といえば。
降って湧いた幸運な出来事に動けずにいた。
まさかイルカ先生が俺と同じ想いと持っていたなんて。
なんたる偶然!
驚きすぎて心臓が止まるかと思った、ほんとに。
感動した!
生きていて良かった!
俺はルルル〜思わず涙してしまっていたのだった、心の中で。



どこへいずこへ2



text top
top