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伝説の生き物 4



イルカが人の姿をとって、木の葉に来て数年が過ぎた。
人であることにも慣れて、穏やかに暮らしている。
最初のうちは火影の傍で秘書代わりのような雑用をしていたが、大体のことが分かると人間に慣れるためとアカデミーの先生となった。
大勢の人間の子供に囲まれて最初は、おっかなびっくりだったイルカだったが。
そう時間も掛からないうちに、子供達からも大人からも慕われる様になった。
持ち前の明るさや素直さが皆に受け入れられたのだろう。
カカシも陰ながら手伝っていたのだが、そのうちにおおっぴらにイルカの傍にいるようになり。
それが普通になった。


イルカは人間の世界の色々なことに興味を示し、また一度教えられれば、すぐに覚えて。
未知の生き物としての不思議な力を多少使えたのも幸いし、忍びとしてチャクラを練り忍術を使えるようにもなった。


カカシが担当する七班の子供達を紹介すると、すんなりと仲良くなったし。
イルカは初対面の相手にも警戒心を抱かせないのか、子供達はすぐ懐いていた。
まるで、最初からお互いのことを知っていたように。
特にナルトがとても懐いて、カカシが思わず嫉妬してしまうほどだ。
アカデミーで先生をしているので「イルカ先生」と呼ばれるようになった。






年月が過ぎていくと、カカシとイルカの周りも大いに変化する。
親しくしていた人たちが去るたびに、カカシはイルカがどこかへ遠くへ行ってしまうかと危惧してしまう。
イルカの本来の仲間は遠い南の暖かい海で暮らしているのを聞いたからだ。
一度、仲間に会いたいか聞いてみた。
その時、イルカは首を振っただけで、特に何も言わなかった。
逆にイルカはカカシに聞く。
「カカシさんは私が仲間に会いたいと思いますか?」
「会いたくないとは思っていないはずだ。」
掠れた声で、こう言うのが精一杯で、イルカの顔が見れなかった。
ふっとイルカが笑うのが分かった、顔を見なくても。



カカシとイルカは、火影岩の上に来て木の葉の里を眺めていた。
夕暮れなので、里には明かりが灯り始めている。
最近、カカシは二人きりで過ごす時間を、とても大切に思っていた。
「三代目が俺のことをカカシさんに、密かに託したのを知っています。」
イルカは静かな声で話し始めた。
「父との約束を三代目は律儀に守ってくださって。感謝しています。」
でも、それ以上に、とイルカはカカシのことを見つめて微笑んだ。
「カカシさんに感謝しています。感謝してもし足りないくらいに。」
「俺に?」
「ええ。」
イルカは頷いて、遠くの空を見た。
夕暮れ時の空は紅く染まって美しい。
「初めて会った時から、すごく優しくて。駄菓子屋さんに行って、お菓子を買ってくれたじゃないですか。それからアイスも買ってくれて。すごく嬉しかったなあ。」
そういえばそんなこともあったかもしれない。
カカシはすっかり忘れていたが。
「あの時のアイス、すごく美味しかったです。」
今じゃ、アイスを年がら年中食べていますけどね。
イルカは悪戯っ子のように笑う。
「実はね、あの時、本当は人間の世界に行くのに躊躇いがあったんです。けど、カカシさんのように優しい人がいるなら、そう悪いところじゃないと思って。」
自分がいたから、イルカは人の姿を模して人間の世界に来ただろうか。
「カカシさんがいてくれるなら、って思ったんです。」
「・・・それで、来て良かったと思った?」
心配そうにするカカシの手をイルカはぎゅっと握った。
「はい。来て良かったです。」
「そっか。」
二人は顔を見合わせて。
ちょっと笑った。









イルカの父は、今は湖で冬眠しているが年をとっているため、次に起きたら多分、別れが待っている。
その事を理解していているイルカは、やがて来る別れを静かに待っていた。
それに後で分かったのだが人の姿であれば、今のイルカに冬眠はいらないらしい。
人間の姿であれば、カカシと一緒に年月を過ごしていける。
時々、湖に帰るイルカに付き添って、カカシは一緒に行っていた。
湖の畔で、底に眠る父親を確認して上がってきたイルカを出迎える。
その姿は、小さくてカカシの腕の中にすっぽりと収まってしまった。
エメラルドグリーンの体に、ピンクの腹。
首は長く、目は美しいスカイブルーで、前足が退化したような鰭が二つ付いている。
念願のイルカの本当の姿が見れてカカシはとても嬉しかった。
三代目が言っていたように、鳴き声は可愛らしい。
難点と言えば、この姿の時は会話ができないのが難点だ。
おまけに、イルカの本当の名前が分からない。
「水中では超音波で話しますから。人の言葉では、私の名は発音できないんです。」
少しだけイルカは寂しそうだった。
「でもね、イルカという名もすごく好きです。だって皆が、その名で俺を呼んでくれるから。」
どちらの名でも、どちらの姿でも俺なんですよね、と。
「うん、そうだね。」
カカシは言って、イルカを抱きしめた。
「どっちも俺の大事なイルカだからね。」
「ありがとう。カカシさん。」
小さい声が聞こえてカカシの背にイルカの腕が回された。
「でも。」と更に小さい声が聞こえた。
「カカシさんは・・・・・・結婚しなくていいんですか。」
ずっと聞けなかったけど、と続けて聞こえた。
「もう俺は人の姿でも、一人でも大丈夫だし。・・・・・・人間は結婚をするものでしょう?」
声は震えていなかったが、体が微かに震えているのを感じ取りカカシは腕に力をこめた。
「カカシさんが好きだって言う女の人が、沢山いるのを知っていますよ。」
私のことは心配しないでください、とイルカが言うのをカカシは遮った。
「馬鹿だなあ、イルカは。」
安心させるように、背を撫でてやる。
「俺はね、イルカのことが好きなんだよ。」
カカシの背にあるイルカの手がビクリと震える。
「分からなかったの?」
「はい。」
「イルカのことが一番好きだから、誰とも結婚なんてしなかった。これからもしないよ。」
人間でも人間じゃなくても、この腕の中のイルカが一番好き。
カカシが思いこめて囁く。
「だから、どこにも行かないで。」
お父さんがいなくなっても、俺の傍にいて。
仲間のところにも還らないで。
カカシが常に心の奥底で恐れていることを告げると、イルカは。
「どこにも行きません。」ときっぱりと言った。






「父が言っていました。還る所と云うのは一番好きな人がいるところだって。」
だから、父は母が眠っている此処、木の葉の里からどこにも行こうとしなかったのです。
母が好きだったから、自分も同じ場所で眠ると言って。
「カカシさん。」
腕の中のイルカがカカシを見上げる。
「だから、俺が還る場所も此処しかないんです。」
「イルカ・・・。」
「一番好きな人がいますから。」
此処しかありません。
イルカの黒い瞳にカカシが映っている。
カカシの瞳にもイルカだけがいて。
自然と笑みが零れた。






これから先、長い年月には色々なことがあるだろうけど。
二人で寄り添って生きていく。
辛く苦しいことも二人で乗り越えていけるのだろう。
だって二人でいることが一番大事だから。









終り






伝説の生き物 3

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