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断崖絶壁崖っぷち その七



カカシ先生の看病の甲斐あって俺は次の日には、なんとか風邪も治り職場に出勤した。
出勤してきた俺に同僚が声を掛けてきた。
俺を最初に心配してくれた同僚だ。
そしてカカシ先生からの連絡を受け取ったのも、この同僚だったらしい。
ひそっとした声で聞かれた。
「はたけ上忍といつの間に仲良くなったんだ?」
「ええっと、それは・・・」
仲良くっていうか、なんてーか。
「連絡してきた時に変なこと言っていたぞ」
俺の背中に冷や汗が、じわっと滲み出てくる。
それって、あれか例の・・・。
「彼氏がどうとか言っていたけど何のことだ?」
ほっ、よかった〜。
カカシ先生の言った、言葉の意味や真意は同僚に伝わってなかった。
俺は、そこは適当に話を濁して誤魔化したのだった。



実はカカシ先生とはひと悶着あった、彼氏発言で。
「カカシ先生のお話は解りましたけど」
「解るだけじゃなくて俺を受け入れてください」
「彼氏って何ですか?彼氏って」
「彼氏は彼氏ですよ〜」
「彼氏の使い方、変ですよ。俺は女性じゃありませんし」
「そんなの知っていますよ。彼氏は必ずしも男女の間だけで成立するもんじゃないありません」
あー言えばこう言うでカカシ先生は手強かった。
「そうじゃなくて!」
通じない話につい、いらっときてしまった。
「じゃあ、もしもカカシ先生が俺の彼氏だと仮定すると俺は何になるんですか?」
「えーっとね」
カカシ先生は、にこっとした、魅惑的な笑顔で。
「イルカ先生は俺の彼氏?」
堂々巡りだった。



結局のところ落ち着いたのはカカシ先生は俺が好きで、俺はカカシ先生が・・・。
未だ未知数にいる。
ただ、嫌いじゃないのは解っているんだ、自分でも。
好意を示されて病気の時に面倒見てくれて、いい人には違いない。
でもさあ。
家の中で二人きりだったらカカシ先生は俺に話しかけて笑ってくれるんだけど。
あ、外でも誰にも邪魔されなければ話して笑う。
ところが普通に人がいる受付所では態度が以前と変わらない。
俺のことを、じっと見つめて睨んでくる。
ちょっと怖い。
本人曰く、恥ずかしくてしょうがないらしいんだけど。
裏と表、人がいる場所といない場所とでは態度が違いすぎた。
これは、なんとかならないものか。
同僚からは仲がいいのに仲が悪いと変な見解をされている。



それにだ。
カカシ先生に、その態度を変えてくれと頼んでみた。
「まるで俺がカカシ先生に意地悪されているみたいに見えるから止めてください」って。
するとカカシ先生は、ふふんと笑って「あれが意地悪?」なんてことを言う。
「あれで意地悪だとしたら俺が本当に意地悪したら、すごいことになりますよ」と。
実際に後日、カカシ先生が意地悪しているところを目撃してしまった。
被害者はアスマ先生。
カカシ先生に、ひどいことをされていた・・・。
上忍同士、腐れ縁ってのもあるだろうけど、あれは〜。
あれはない。
俺は心の中でアスマ先生に謝った。
すみません、俺が意地悪なんてカカシ先生に言ったばっかりに。
前にカカシ先生に絡まれているのを助けてもらったのに。
まあ、アスマ先生も負けずにやり返していたから、 あれはカカシ先生とアスマ先生のコミュニケーションの一つなのかもしれない。
妙に楽しそうだったし。



そして一番の問題が残っていた。
仕事を終えた俺は家に帰る。
がちゃと開けた玄関の扉に鍵は掛かっていない。
だって俺の家に誰かがいるから。
その誰かは「お帰りなさ〜い」と明るく俺を出迎えてくれた。
「・・・ただいまです」
俺の家なのに入るを躊躇ってしまう。
何故なら俺の家にカカシ先生がいるから!
俺が風邪を引いたその日からカカシ先生は、すっかり俺の家に居ついてしまった。



「お帰りなさい、イルカ先生」
そう言ってカカシ先生は俺を引き寄せた。
ぎゅっと抱きしめてくる。
これは、あれだ、お帰りなさいのぎゅーってやつ。
お帰りなさいがあるならば、いってらっしゃいのぎゅーっもある。
いつから、こうなってしまったんだろう?
家に帰るとカカシ先生がいて、ご飯を作ってくれていたりする。
もしくは俺がご飯を作ってカカシ先生を待っていたり。
カカシ先生は俺の家に帰ってくるようになっていた。



「えー、だって自分の持ち物がある場所に帰ってきてもいいでしょう」
それがカカシ先生の持論だ。
「イルカ先生が風邪を引いたとき勝手に家に入らせてもらいましたけど、イルカ先生の家の中の物には触れていませんよ」
つまり俺が着ていた寝間着はカカシ先生が自分の家から持ってきたもので汗を拭いてくれたタオルも、 お粥を作ってくれた調理器具も米とかも全部、カカシ先生が自分の家から持ってきたものだったのだ。
それらは俺の家に全部ある。
「それにね」
カカシ先生が嬉しそうに笑う。
「ここにイルカ先生がいるからね〜」と俺の頬に、ちゅっとキスをする。
なんだか、それが嫌じゃない、困ったことに。
「イルカ先生のいるところが俺のいる場所です」
そう言って抱きしめてキスをしてくる。
「そんなこと言ったって」
俺は、わざとカカシ先生に意地悪なことを言った。
ちょっとした俺の逆襲だ。
「俺は、まだカカシ先生のことが、そういう意味で好きじゃないですから」
「そうですか?」
にやりとして意味深に笑みを浮かべるカカシ先生は俺の本当の気持ちに気づいているかもしれない。
やっぱり意地悪な人だ。



そう俺の気持ちは断崖絶壁崖っぷち。
今は崖っぷちで踏みとどまっているけれど。
遠くない未来にカカシ先生が好きだと認めてしまう自分がいる。
ちょっと意地悪されたのが切っ掛けだったけど。
だってカカシ先生のことが好きだから。
カカシ先生と俺は特別な間柄になるに決まっている。
きっと。



終わり




その六



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