断崖絶壁崖っぷち その一
俺は最近、頭が痛い。
というか、頭が痛くなるようなことがある。
それは多々、累々と・・・。
原因は判っている。
上忍のカカシ先生だ。
その人の言動というのが目下、俺の悩みの種なのである。
つい先日のことだ。
俺が山のような書類を抱えて廊下を歩いているとだ、目の前に見知ったような人影が。
背が高くて歩くだけなのに隙のない身のこなし、
白く輝く髪を蓄えた頭は、まごうことなきカカシ先生だった。
後ろを歩く俺は声を掛けた方がいいのか迷った。
だって後ろから、わざわざ挨拶するのって、なんか気が引ける。
でも相手は自分より上の人。
どうしよう、と思いながらも書類を抱えたままカカシ先生の後をついていった。
せめて行き先が違っていたらと思ったけど世の中、そう上手くはいかない。
カカシ先生は俺の前を悠然と歩いて行く。
そのうちにカカシ先生のズボンの後ろのポケットから何かが、ぽとっと落ちた。
元々、はみ出ていたのが見えていたから歩く振動で出てきて落ちたのだろう。
急いで落ちたものに駆け寄り見てみると、それはカカシ先生がいつも手に持っている本だった。
いつも読んでいるのだから大事なものだと思う。
だから俺は抱えた書類の山を崩さぬように慎重に本を拾った。
拾ったからにはカカシ先生に声を掛けなくてはならない。
遠ざかっていくカカシ先生に向かって俺は叫んだ。
「カカシ先生!落し物ですよ」って。
叫んだ瞬間、カカシ先生は俺の正面にいた。
一瞬の出来事で、ぽかんとしてしまう俺。
上忍ってすごいんだな〜。
カカシ先生に拾った本を差し出すと、ひったくる様に奪われた。
片目しか出ていない顔が怖い。
怒っているみたいに顔が歪んでいる。
本を拾わなかった方がよかったのだろうか・・・。
大事な物だから触られたくなかったとか?
カカシ先生は怖い顔のまま一言、言った。
「拾わなくてもよかったのに」
・・・・・え。
そのまま、くるりと踵を返して、すたすたと行ってしまった。
ちょっと待て、こら、と俺は心の中だけで思った。
拾って悪かったなあ、今度から絶対に拾ってやらないから覚えとけ、と。
礼を言われたい訳じゃないけれど。
せめて礼くらい言っていけって。
そう思った俺だったが上忍のカカシ先生を無視したりスルーすることなんて出来ず、
何かとカカシ先生との接点がある度にカカシ先生の俺に対する冷たい対応にへこんでいる。
これが最近の俺の悩みで頭の痛い理由であった。
あー、どうしたらいいんだろう。
俺なりに理由を考えてはみたものの、結構、思いつくのが悲しい。
声が大きいとか、すぐ怒るとか・・・。
一番の理由は中忍試験での一件だと思うが、
これはちゃんと謝ったしカカシ先生も俺の謝罪を受け入れてくれた。
その証拠に仲直りを兼ねて初めてカカシ先生と飯を食べにも行ったし。
遺恨はないはず・・・だと思いたい。
でも改めて考えれば、一緒に飯を食べてからカカシ先生が冷たくなったような気がする。
あの日、俺は何か失態をしてしまったのかなあ。
カカシ先生の気に障るようなことをしてしまったのかも。
出来ることなら、あの日に戻ってやり直したいよ、ほんと。
それだけでも頭が痛かったのに今日の朝は違う意味でも頭が痛かった。
枕から頭を上げた時、ずきんと米神に痛みが走った。
同時に後頭部の方も、ずきずきと痛み出す。
これはあれだ、頭痛だ、本物の。
そういえば体がだるい・・・ような気がする。
ベッドから体を起こすと動きが鈍く、体が本調子でのないのが解った。
そういえば、ここんとこ残業が続いて寒さも厳しかったからなあ。
風邪を引いたのかもしれないな、少なくとも風邪の引き始めの兆候だよなあ。
熱を計ってみたが熱はない、平熱だ。
だったら仕事に行くしかない。
忙しいから少し体調が悪いくらいで休んではいられないし。
軽く朝食を食べて頭痛止めの鎮痛剤だけ飲んで俺は出勤することにした。
その日は朝から受付だった。
そして運悪いのか、カカシ先生が依頼書を受け取るために俺の前に立った。
他の受付係も空いているのに何で俺、と思ったが顔には出さず表面上は、
にこやかに対応した。
「おはようございます、カカシ先生。こちらが任務の依頼書です」
差し出すとカカシ先生は受け取る。
無言だ。
・・・・・・無言って辛いよな、反応がないって空しい。
でも、まあ仕方がない。
俺は気持ちを切り替えた。
カカシ先生が俺を気に入らないのなら、それは仕方がない。
どうしようもないんだ、割り切るのが一番ってね。
でも、その日のカカシ先生は俺の前から中々、どこうとしなかった。
依頼書を手に持って、じっと俺を見ている。
無言で睨みつけれている状態だ。
受付所で上忍に睨まれる中忍の図。
皆の視線が集まって、かなり居心地が悪い。
駄目元で俺はカカシ先生に話し掛けてみた。
「あの、カカシ先生・・・。どうかしましたか?」
まさか答えが返ってくるとは思っていなかった。
カカシ先生は俺だけに聞こえるような声で、ぼそっと言った。
呟きに近い。
「今日・・・」
今日?
「仕事が終わったら上忍の控え室に来て、待っているから」
それだけ言うとカカシ先生は受付所を出て行ってしまった。
任務に行ったのだろう。
仕事が終わったら来いって・・・。
上忍からの呼び出し?
呼び出しされるほど俺のことが気に喰わないのか、カカシ先生。
俺をどうしようっていうんだろうか。
・・・制裁、とか?
悪い考えが頭の中を埋め尽くしていく。
朝から激しく落ち込む俺。
仕事が終わったら生きているんだろうか、俺。
もしかして今日が命日になるかもしれない。
ああ、最後にナルトとラーメン食べたかった。
色んな思いが走馬灯のように頭を横切っていく。
短い人生だったなあ、俺。
上忍に言われたことを無視する度胸のない俺は鬱々とした気持ちで一日仕事をし、
夕方、仕事を終わると上忍の控え室に向かった。
重い足取りでカカシ先生の待つ、控え室へと。
その頃には鎮痛剤の効き目も切れて、朝の頭痛がひどくなっていたのだった。
その二
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