Cookie&Biscuit 11
「あ、カカシさん」
先に起きていたイルカが起きてきたカカシを振り返る。
「おはようございます」
「・・・おはようございます」
起きてきたカカシは眠そうで声に張りがない。
といってもカカシは朝が弱いようでいつも元気がないが。
「朝ご飯できてますよ。食べますか?」
「あー、はい」
答えながらイルカを探るように見てくる。
何かあったのだろうか?
「どうかしました、カカシさん」
問うてみるとカカシは首を振る。
「いえ、別に何でも」
妙に含むところがある言い方のように思える。
訝しく思いながらも朝食の席に着き二人で食べ始めた。
「ねえ、お父さん」
「はい、なんでしょう」
「今日の予定ってありますか?」
「今日の予定・・・」
今日は休みだ、一日。
「そうですねえ」
休みといっても、これといってすることはない。
「洗濯して掃除して買い物くらいでしょうか」
「あとは?」
「あとは・・・」
思い浮かばない。
「ないですね」
「そうですか」
心なしかカカシは、がっかりしたようだ。
本当に今日のカカシは、どこか変だとイルカは考える。
もしかして。
淡い期待を抱く。
・・・記憶が戻る兆候かも?
だとしたら後で火影さまに報告が必要だ。
カカシの記憶が戻るかもなんて吉報だ。
かも、だけれども。
「お父さん」
「はい」
「今日一日、外出しませんか」
「外出?」
「そうです」
カカシは力強く頷いた。
「天気も良いですし家にいてはもったいないですよ。それに気分転換にもなります」
「はあ」
「偶には外で、ぱああっと遊びましょう!」
「ぱああっと・・・」
ぱああっと、何をするのだろう・・・。
ちょっと考え付かない。
だいたいにして、そんな遊んだことないしなあ。
「ぱああっとって、何をすればいいんでしょう?」
うっかりカカシに訊いてしまった。
「それはショッピングとか、美味しいもの食べたりとか色々ですよ」
何を思ったのか、ちらりとカカシが食器棚に視線を走らせた。
そのカカシに釣られてイルカも何気なく食器棚に視線を向ける。
食器棚に変わりはない。
何故、カカシは食器棚を意味なく見たのか・・・。
「あ、そうだ」
食器棚を見ていたイルカは何となく言った。
「紅茶の買い置きもなくなってきたし買ってこなきゃ」
紅茶は量り売りの店で買っている。
イルカの好きなお茶の葉は、その店でしか売ってない。
「え、紅茶」
上擦った声がしてカカシが胸元を押さえている。
「紅茶、ですか・・・」
声に焦りがあるのは気の所為か。
「はい。お茶の葉を買ってきたら、また飲みましょうね、紅茶」
「え、ええ」
「紅茶のお店って、すっごくいい香りがするんですよ〜」
「そう・・・ですか」
「色んなお茶の葉があって面白いんです」
「へえええー」
イルカの話に相槌を打つカカシは急に、そわそわと落ち着かなくなってきた。
「やっぱり今日は外出しないで家にいましょうか」
言うことが、ころころと変わる。
「家で、ゆっくりするのもいいですよね!ね?ね、お父さん!」
「はあ、まあ」
でも、やっぱり買い物は必要で。
「じゃあ、俺一人で買い物に行って来ますから」
カカシさんは家でゆっくりしていてください。
そう言うとカカシは絶望的な目をしてしまった。
結局。
カカシは家に残ってイルカ一人で出掛けることになった。
いつもイルカと一緒にいようとするカカシにしては珍しい。
「ちょっと急に用事を思い出しました」なんてカカシは言っていたけれど、家でする用事って何だろう?
別口でカカシも外出でもするつもりなのか。
「まあ、カカシさんも色々あるよな」
うん、多分。
一人で納得してイルカは頷いた。
「さてと俺は買い物買い物」
イルカはポケットから買い物リストを取り出す。
「まずは何を買おうかな〜」
重い物は後回しにして。
「やっぱ、最初にお茶の葉買うか」
紅茶の。
なんだか、うきうきとしてくる。
足取りも弾んでくる。
「おい、イルカ」
そんなイルカに声を掛ける者がいた。
「あ、この前の!」
顎に髭を蓄えたカカシの知り合いだと思われる忍。
多分、上忍だ。
「よう」
片手を上げた髭の上忍はイルカの周りを見回した。
「今日、あいつはいねえのか?」
「あいつって」
「あいつだよ、カカシ」
「あー、カカシさん」
この前、会ったときにカカシは記憶がない所為か、この髭の上忍のことを知らないと言っていた。
「カカシさんも俺も今日は休みなんですけど別行動なんです」
「へー、そうか」
「カカシさんも用事があるって言ってましたね」
「ふーん」
得心がいった髭の上忍は「だったら茶でも飲んで少し話さないか」とイルカを誘ってきた。
ちょうど良かった、イルカも訊きたいことがあったから。
まずは互いに自己紹介をした。
「アスマだ」
「うみのイルカです」
「イルカねえ」
アスマは無遠慮な視線でイルカを上から下まで見る。
「えらく可愛いのがカカシの傍にいるんだな」と呟いた。
適当な店に入り二人は茶を飲んでいる。
アスマは煙草を吸うようで喫煙席を希望した。
煙草に火を点けて紫煙を吐き出したアスマは言った。
「カカシのことは火影のじいさんから聞いたよ」
「火影さまから?」
「ああ。やっぱ面倒なことになっているらしいなあ」
「はあ、まあ」
「記憶がないとかで今、お前さんとこに厄介になっているんだろ?」
「成り行きで」
「成り行きでか・・・」
アスマが気の毒そうに言った。
「大変だな、若いのに」
若いのに、はカカシが自分より年下のイルカを『お父さん』と呼ぶことを指しているのだろうか。
「俺は力になれないが頑張れよ、ほどほどに」と一見、激励のようなことを言う。
「はははは〜」
空笑いをしたイルカは気分を変えるために一口茶を飲んだ。
「ところで」
記憶がなくなる前のカカシを知っていると思われるアスマに訊く。
「カカシさんのことを心配されている人はいないんでしょうか?」
「心配している人?いないんじゃねえか」
記憶がないだけで元気そうだし、家族はいねえしなあと気のない様子で答える。
「そうじゃなくてですねえ」
イルカが言いたいのは、ちと違う。
「親密な間柄の人はいないんですかってことですよ」
「ああ、恋人とかか?」
さらり、と言ったアスマの発言にイルカは一瞬、黙ってから頷いた。
「・・・そういう人がカカシさんの心配をしているならお知らせしないといけないんじゃないかなって」
「そうだなあ」
アスマは顎に手をやり暫し考える。
「特にこれといっていねえな」
「そうですか・・・」
「ま、いいんじゃないのか」
ぽんぽんとイルカの肩を叩く。
「この前、会ったときのカカシの関心はお前さんだけに向いていたみたいだしな」
随分とご執心だったじゃないかと言われて。
イルカは「そんなことないですよ」と言いつつも内心、嬉しく思ってしまった同時に妙に安心してしまった。
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