brokenbroken +α
「あのー、カカシさん。」
カカシと付き合うようになって、まだ日が浅いがイルカは気がかりなことがあった。
「何でしょう?イルカ先生。」
にこにことしてカカシは機嫌が良さそうである。
今は仕事が終わり、二人で家に帰るところだ。
「えっとですね。」
こほん、と小さな咳をしてイルカは手を目の高さまで上げた。
その手はカカシと繋がっている。
しかも双方の指がしっかりと絡まっていた。
「家で二人きりの時なら、ともかく、家の外で、こんな・・・。」
ちょっと赤くなり、声も小さくなった。
「こんなことする必要があるんでしょうか?」
他にも、とイルカは色々思い出していた。
外で喉が渇いたなと思ったらカカシが素早く察して缶ジュースを買ってくれたのだが、その際にカカシも喉が渇いたと言い、大勢の人がいる前で一つの缶ジュースを二人で飲んだり、合鍵が合った方が何かと便利だと説き伏せられて作ったのはいいが、それを人前で遣り取りしたり・・・。
手を繋ぐとき、指を絡めるたがるのもカカシで人がいようといまいとお構いなしだ。
確かに仲がいいのはいいことだけど・・・。
イルカは考える。
でも、それは二人きりの時でいいんじゃないかなあ、と。
いくらカカシのことが大好きでも人前で、やるのは抵抗があった。
人に見られるのが照れくさくて仕方がない。
なのにカカシは、それらをすることを嬉しくて嬉しくてしょうがないと全身で喜びを表しているものだからイルカも言い出しにくかったのである。
「もちろん。」
にこにこがパワーアップしたカカシは断固として言い放った。
「する必要はありますよ。」
「え、なんで?」
思わず聞き返すとカカシは、もっともらしく説明しだす。
「それは俺たちは、とっても仲が良いと周囲に知らしめるためです!」
「知らしめるためって・・・。」
「仲が良い、イコール親しい仲、イコール恋仲です!」
「・・・そうでしょうか。」
カカシが自信満々に言うのでイルカは反論できない。
「そうですよ!周りに俺たちが仲が良い恋人と認識させなくちゃ駄目です!」
握っていた、いや絡まっていたカカシの指に力が入った。
「そんで俺たちの愛が永遠に変わらないものだと知ってもらうために!」
「はあ。」
どうもイルカには今ひとつ、ついていけない話題であった。
周りの人が、どう思おうとカカシさんと俺の気持ちが通じ合っていれば問題ないと思うんだけどな。
ちょっぴり、そんなことを思ったが口には出せないイルカである。
だが。
カカシが「駄目ですか?イルカ先生が、そんなに嫌なら止めますけど・・・。」なんて少し心配げに聞かれた上に、その不安そうなカカシの顔に胸がもう、どっきーんとなってしまってイルカは慌てて顔の前で手を横に振った。
まるで自分がカカシに意地悪しているみたいだ。
「いいえ、全然!全然、いいです!」
「そうですか。よかった〜。」
再び、カカシはにこにこになる。
その顔を見て、ほっとした。
「それとね、イルカ先生。」
手を繋いだまま、カカシがイルカに躊躇うように言ってきた。
「はい、何でしょう?」
「えーとね。」
カカシは言いにくそうにしている。
「そのねえ。」
「はい?」
「イルカ先生、俺のこと変だと思いますか?」
唐突に、そんな質問をしてきた。
「変・・・、って。」
質問の意図が、さっぱり分からない。
「いえですね。」
カカシが恥ずかしそうに説明する。
「前にイルカ先生、俺が呼び出した場所に来た時、自分の影分身をイルカ先生に変化させていたのを見たでしょう?」
「・・・ああ。」
イルカがカカシが妙齢の女性と一緒にいた、と勘違いした例の一件である。
「影分身と言えど、自分で自分に抱きついたりしているの見て、俺のこと変だと思う?」
「えっと・・・。」
「アスマには変人だって言われちゃって。」
そんなことを告白してきた。
カカシは色々と気にしているらしい。
自分で自分に・・・。
カカシの言うことは最もであるが。
でも、自分で自分にって。
はっと思いつくことがあってイルカは見る間に赤くなってしまった。
恥ずかしさのために。
俺、そういえば・・・。
アスマとの酒の席で自分の発言が思い出された。
カカシさんが一緒にいた人のこと、確か・・・。
艶やかな美しい黒い髪の人で、とか。
後ろ姿しか見なかったけど立ち姿も綺麗で、とか。
アスマに言っていたような気がする。
それって、自分で自分のこと褒めてるってことか!
そっちの方が、ものすごく恥ずかしいのではないだろうか。
幸い、カカシはこのことを知らない。
アスマも、きっと忘れているの違いないが・・・。
しかし・・・。
カカシさんには知られたくない。
影分身だとは知らなかったとはいえ、自分を褒めて自画自賛してしまった俺の方が変かもしれない。
「イルカ先生。」
一人、そんなことを考えて赤くなったり青くなったりしていたイルカの顔をカカシが覗き込んできた。
「やっぱり、俺のこと変だと・・・。」
「ま、ままま、まさか〜。」
イルカは、きゅっとカカシと絡めた指に力を入れた。
「そんなの変じゃありませんよ。普通です、大丈夫です!」
力説するとカカシは安心したように微笑んだ。
「そう。なら、よかった〜。」
カカシに微笑まれてイルカも微笑む。
「じゃ、家に帰ったら膝枕してくださいね。」
「膝枕?」
「男のロマンなんです。」
きっぱりとカカシは言い切った。
それにイルカは苦笑する。
他愛無い欲求をするカカシのことを可愛いな、と思いながら「はい。いいですよ。」と答えた。
男のロマンが何なのか、いまいち、解らないイルカであったが、一つ解っていることがある。
それはカカシといると幸せだということだった。
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