AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


Like a flower 前編



五代目火影、綱手の手伝いを深夜までイルカはしていた。
本来のイルカの仕事はアカデミー、任務報告の受付なのだが、そんなことは構わず、火影の付き人のシズネと火影の仕事を手伝っていた。
イルカが三代目火影の仕事を常に手伝っていたこともあり、火影の仕事の内容には明るいのだ。



「いつもありがとう、イルカさん。」
シズネが疲れた顔でイルカに礼を言う。
「こんな忙しい時に限ってイズモさんもコテツさんも、他の人の任務に行っちゃっていて。」
済まなそうにシズネはしている。
「気になさらないでください。」
イルカは仕事の手を止めることなくシズネに答える。
「俺でよければ、少しでもお手伝いできたら、こんなに嬉しいことはありません。」
「イルカさん・・・。」
疲れたシズネの心にイルカの言葉は利いたようだ。
イルカは本当に本心から言っているのが伝わってくる。



「不甲斐ない火影さまで、すみません。」
感極まったように言って、相当、疲れていたのか涙ぐんでいた。
「そんなことありませんよ。」
イルカも優しい言葉を返す。
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
「あのねえ、ちょっと。」
そんな二人に思い切り不満そうな声をはさんだのは、当の火影本人、綱手であった。
「さっきから聞いていれば、私が悪いみたいじゃないか。だいたい、不甲斐ないってなんだい。」
きりりっと眉を吊り上げ、シズネは綱手を睨んだ。



「悪いって・・・。綱手さまが昼間、仕事をさぼって抜け出したりしなければ、今、こんなことにはなってなかったんです!」
強い口調だ。
「抜け出して、どこに行っているのかと思えば相も変わらず、性懲りもなく、いつもの場所へと行っているし・・・。」
シズネが大きく溜め息をついた。
いつもの場所とは賭場のことだ。
五代目火影の綱手は賭け事が三度の飯より好きであり負けても負けても、めげずに賭け事に興じている。
シズネのお小言は延々と続きそうだった。
旗色が悪くなってきた綱手は「ごめんごめん」と手を合わせると話の流れを変えるように言った。



「そうだ。ちょっと休憩してお茶にでもしないかい。」
「休憩?」
シズネが眉を潜める。
「疲れたから、お茶でも飲もうじゃないかい。なあ、イルカ。」
怖い顔をしているシズネではなく、イルカに話しかける。
「そうですね。」
イルカは素直に頷いた。
「終わるのには、もう少し時間が掛かりそうですからお茶でも飲んで一息いれましょう。」
穏やかな声でイルカに言われるとシズネは、やれやれといった風に肩の力を抜いた。
「イルカさんもそう言っていることですし。お茶にしましょう。」
休憩は少しだけですよ、と念を入れる。
「うんうん、分かった分かった。」
綱手は、ぶんぶんと首を縦に振った。
イルカは綱手とシズネの遣り取りを面白そうに見ていたが、茶を入れるために一旦、火影の執務室を出て行った。



イルカが出て行くと綱手はシズネに言う。
「シズネ、アレをおくれ。」
「あれ?」
「ほら、現在、試薬で実験段階のアレだよ。私とシズネが被験者で体験中のアレ。」
「ああ、アレですか。」
シズネが部屋の戸棚の中から透明な赤いガラスの小瓶に入った液体を持ってきた。
「これですね?」
「そうそう。」
嬉しそうに綱手は受け取る。
小瓶を部屋の明かりにかざして見ると中味は半分くらいになっていた。



「こういう、疲れた時にこそ飲まなくちゃ。シズネも飲むかい?」
「そうですね、じゃあ、少し。」
その時、イルカが三人分の茶を淹れて戻ってきた。
「お待たせいたしました。」
盆の上には湯気の立つ茶がいい香りを漂わせて乗っかっている。
「どうぞ。」とイルカは綱手、シズネの前に茶の碗を置いた。
綱手は礼を言ってから、自分とシズネの茶の中に赤い小瓶に入った液体を数滴入れる。
「・・・それは何ですか?」
不思議に思ったイルカが聞くと綱手が、にやっとした。
「イルカも飲んでみるかい。」
「飲む?」
「あ、イルカさん。やめた方が・・・。」
とっさにシズネは言ったのだが、時既に遅く、その液体はイルカの茶の中にも入れられていた。



「さあ、飲んでごらん。」
「はあ。」
よく分からないらがらも里を治める火影さまが言うことのだから大丈夫だろう、と思いイルカは茶を飲んでみる。
飲み干したイルカは首を傾げる。
「普通のお茶の味しかしませんでした。」
「ま、無味無臭だからな。」
言ってから綱手も茶を飲む。
「大丈夫ですか、イルカさん。」
シズネは心配そうにイルカを見ている。
「特に何の変化もありませんが。」
「なら、いいんですけど。」
ちら、とシズネは咎めるような目で綱手を見た。



「男の人に飲ませるなんて。一応、女性向けの試薬として作られているのに。」
ぼそっと呟いた。
「まあ、イルカだからいいじゃないか。」
綱手は気楽に笑っている。
「男性に飲ませたら、どうなるのかデータも取れることだし。」
「あのですね、綱手さま。そういうことではなくて・・・。」
シズネのお説教が始まりそうになって綱手は慌てて遮るように言った。
「毒じゃないんだから大丈夫だって。それより、休憩して元気になったことだし、仕事仕事。」
急に張り切りだした。
「全く、もう。」
肩を竦めたシズネは何事かと不可思議な顔をするイルカに先ほど、飲んだ試薬の成分と効能について簡単に説明した。
イルカは、それを聞き「へえ〜、そうなんですか」と珍しそうな顔をしただけで終わってしまった。
その試薬に余り興味がなかったためである。
だが、変化は次の日に現れた。
驚くような形で。




それは単独任務を終えて、早朝、火影の執務室を訪れたカカシが目撃した。
「イ、イルカ先生、どうしたんですか?」
「あ、カカシさん、お帰りなさい。任務、お疲れ様です。」
イルカが朝のように爽やかな笑顔で出迎えてくれた。
要するに夜を徹して火影である綱手の手伝いをしていたことになる。
「ただいま、帰りました。・・・って、え?イルカ先生?」
「カカシ、先に私に任務報告しな。」
「あ、はい。」
綱手に言われて任務報告するカカシであったがイルカから目が離せない。
釘つけになっている。



イルカは何だか・・・。
きらきらと光り輝くように綺麗になっていた。
少なくともカカシに目には、そう映ったのだった。




Like a flower 後編



text top
top