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敏感 後編



カカシ先生は俺の手を引いて歩いている。
暫く歩くと手を離した。
「イルカ先生の家はあっちでしょう?」と俺の家の方角を指差した。
「あ、はい、そうです」
家の場所なんて言った覚えがないけど、上忍ってのは何でも分かるんだなあ。
「じゃあ、ここでお別れね」
俺の家は、あっちだから、とカカシ先生は俺の家の反対方向を指差す。
「家まで送っていかなくていい?」
何故か心配そうに訊いてくる。
「大丈夫です」と答えるとカカシさんは眉根を寄せて俺を見た。
「そう?」
残念そうにしている。
なんでだ。
結局、そこでカカシ先生と別れて俺は帰途に着いた。
・・・・・・カカシ先生は。
俺の手を握りたかっただけなのだろうか?
はげしく疑問がわいた俺だった。



何日か経ってカカシ先生は、また俺の前に現れた。
ってか、飲みの席で一緒になったのだ。
飲みっても内輪の顔見知りの人たちと飯と、ついでにビール飲むか〜みたいな感じで。
知り合いの上忍の人の中にカカシ先生はいた。
なんとなくカカシ先生の傍には行きたくないなあと思っている時に限って、運がいいのか悪いのか隣になってしまった。
「こんばんは、カカシ先生」
俺が行儀よく挨拶するとカカシ先生は嬉しそうな顔をした。
「こんばんは。久しぶりですね、イルカ先生」
そんなことを言われた。
久しぶりっていうほどの日にちは経っていないような・・・。
同じ里にいるわけだし。



隣同士に座ってカカシ先生を、ちらと見た。
ちらと見ただけなのに目が合ってしまった。
にこ、と微笑まれると、どきりとする。
な、なんなんだ。
どきどきした胸に気がつかない振りをして俺は飯を食べることに集中した。
ぱくぱくと食べていく。
実に美味い!
食べ終えてからの熱いお茶が、これまた美味い。
ふうふうしながら、お茶を飲んでいると、くいくいと頭が引っ張れるような感覚がした。
頭の上の方っていうか、俺の髪が引っ張られていた。
カカシ先生に。



ぎょっとしてカカシ先生を見るとカカシ先生は俺が結んでいる髪を引っ張っていた。
正しく言うと結んだ髪の先を指に、くるくると巻きつけて遊んでいる。
そんなことをしていたもんだから頭が引っ張れている感覚がしたんだ。
「カカシ先生?」
本当にびっくりしてカカシ先生を見つめるとカカシ先生は実に楽しそうにしている。
肩肘をテーブルに突いて片手で俺の髪を弄っていた。
「可愛いよねえ」
か、かわいい!
誰が?
「この尻尾」
尻尾って俺の髪の先端のことか。
どう反応していいのか俺は固まってしまう。
なんて言ったらいいんだろう。
尻尾じゃありませんから、と言うべきか・・・。



固まってしまっている俺に助け舟を出してくれる人がいた。
「おいおい、カカシ。変なことするんじゃねえよ、イルカが困っているだろ」
助け舟を出してくれたのはカカシ先生と同じ上忍のアスマ先生だった。
この人も俺の下教え子を指導している。
「変なこと〜?」
カカシ先生が不思議そうに聞き返している。
「何が変なの?」
本気で分かっていないらしい。
「何がって」
アスマ先生は溜め息を吐くと指摘してくれた。
「髪を弄ることだよ、変だろうが」
どさくさに紛れて、男が男の髪を弄るなんて見たくねえ、と本音も漏らしている。
それは俺も同感だ。
「そ〜う?」
カカシ先生はアスマ先生に言われて大人しく俺の髪を弄るのを止めた。
とっても名残惜しそうにしているが。
俺は、ほっとした。
よかった、止めてくれて。
と思ったら次の瞬間、カカシ先生は別のところを触りだした。
なんで、そんなとこ!
耳だった。



頭の天辺で髪を結んでいる俺の耳は出ている。
髪で隠れたりしていない。
その耳をカカシ先生は触っているのだ。
主に耳たぶだったが。
ぷにぷにと耳たぶを触っているけど。
楽しいの、かな?
こわごわとカカシ先生を横目で見ると、さっきの髪を弄っている時のように楽しそうにしている。
・・・謎な人だ。
最初は手、次は髪、その次は耳。
あ、髪は尻尾とか言っていたけどね。
うーん。
俺の耳を触って楽しんでいるカカシ先生を見て俺は考えた。
もしかしてカカシ先生って・・・。
スキンシップが好きな人なのかな?
相手の体を触ることでコミュニケーションを図るタイプの人は時々いる。
アカデミーの子どもの中にもスキンシップで俺に気持ちを伝えようとする子がいるから。
カカシ先生は、そのタイプなのかな。
そう考えてカカシ先生と見ると子どもみたいな表情をしている気がしてきた。
なんだか無邪気で可愛くて見えてくるから不思議だ。
まあ、触られるくらい何ともないからいっか。
俺は、そう結論付けた。
一番の疑問、なんで俺なのかってことは置いといて。



それから数ヶ月。
何故かカカシ先生は俺んちにいた。
俺んちで飯を食べ風呂にも入り泊まっていく。
入り浸っている、俺んちに。
・・・なぜなんだ!
自問自答してみる。
スキンシップをするカカシ先生を黙認していただけなのに!
それが何でこんなことに。
「うーん、それはですねえ」 悩んでいる俺に風呂上りのカカシ先生が背後から、のんびり声を掛けてきた。
冷蔵庫の中から冷えた牛乳を出して美味そうに飲んでいる。
パックのまま、じかに口を付けて。
それはいいけど俺の牛乳が〜。
ぐびぐびと牛乳を飲んだカカシ先生は口元を手の甲で拭って言った。
「恋ですよ」と。



「恋って何ですか!」
問い詰めるとカカシ先生は、にこりと笑った。
だいたいにして、この『にこり』が曲者だ。
この笑いが!
「だって最初にイルカ先生が俺に触ってきたじゃない」
最初って受付所で指先が触れた一件らしい。
「あ、あれは偶然でわざとじゃないです」
そう言ったのにカカシ先生は聞いてくれなかった。
「あれでイルカ先生が俺の事を好きなんじゃないかと思ったんです」
それ、飛躍しすぎだろ・・・。
「少なくとも俺に警戒心を持っていないと確信しました」
「そりゃあ、まあねえ」
同じ里の忍だし。
「試しにその場でイルカ先生の手を撫でても嫌がらなかったし。次の日、念のため再度、手を握ってもやっぱり嫌がらないし」
嫌がるって、あれはどうしていいのか分からなかったんだ。
「嫌がらないから、髪を触ってもいいかなって触ったらアスマに怒られたから止めましたけど」
で、耳を触ることにしたんです、とカカシ先生はあっけらかんと言い放った。
「だってね」



カカシ先生は俺の傍に、すすっと近寄ってくると隣に腰を下ろした。
俺の手を握る。
握るっていっても何ていうか、こう十本の指を絡めて手を繋ぐみたいな。
とっても恥かしくなる繋ぎ方だった。
おまけに風呂上りのカカシ先生はカッコよい素顔を晒して上半身は裸で目のやり場に困る。
何で、この人、俺んちでこんなに寛いでんのかな?
すごい忍者なはずなのに。
「俺は忍犬を飼っていますけど。犬はねえ、心を許して懐いた人には耳やら尻尾やら鼻先やらと敏感なところを触らせてくれるんだよ」
「俺は犬と同じですか!」
照れ隠しに怒ってみるとカカシ先生は「まさか」と肩を竦めた。
「犬と同じなわけないでしょ」
そう言う声はすごく優しい。
いつの間にか俺はカカシ先生の腕の中に抱き込まれていた。
「イルカ先生はイルカ先生じゃないですか」
こうなると俺は、もう抵抗できない。
格好いいカカシ先生から目が離せない。
カカシ先生は俺の顔を、じっと見つめて。
「犬だったら、こんなことできませんよ」と言って。
それから、そして。
「イルカ先生の一番、敏感なところに触れられるようになりましたからね」と笑って。
俺にキスをしたのだった。



敏感 前編




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