兄の悩み
辛い時や悲しい時。
自分の中の嵐が通り過ぎるのを待つ。
じっと息を潜めていれば、いつか嵐はそよ風に変わる。
それまでは我慢だ。
我慢我慢。
やがて、そうすることに慣れた自分がいた。
なのに、最近は違う。
嵐は一人で耐えられたはずなのに。
自分が悩んでいたり落ち込んでいたりすると、ひょっこり現れる人がいる。
「イルカ先生、どーしたの?」
決して自分は顔に出してないのに何故か、彼には解ってしまう。
表情を取り繕うのは上手なはずのに。
「いえ。」
俺は言葉少なに顔を背けた。
顔を見られていると、総て解られてしまうような気がして嫌なのだ。
「そーう?寂しそうな顔してるよ。」
そんな顔はしていないはずだ。
だから、そういう風に言わないでほしい。
本当に、そうなってしまうから。
アカデミーの隅にあるベンチに、俯いて座っている俺の横に彼は腰掛けた。
「じゃあ、悲しいのかな。」
悲しくない、寂しいわけでもない。
何でもない。
なのに、彼の手は俺の頭を撫でている。
最初は傍に立っていて、次に横に座ってきて、次は頭を撫でてきた。
次はどうするんだろう。
彼にされる行為によって、俺は癒されてしまう。
次に期待してしまう。
彼の魔力に俺は逆らえない。
「カカシ・・・先生。」
ついに彼の名を呼んでしまった。
「うん。イルカ先生。」
顔を上げると、彼の澄んだ瞳がある。
「大丈夫だよ。」
彼の一声に悩みも心配も霧散する。
「平気。俺がついているから。」
そうか。
そうなんだ。
一人で頑張っていなくてもいいんだ・・・。
体から、心から力が抜けていく。
脱力感ではなく、何だか要らないものが抜け落ちた感じで。
自然に笑顔が出てしまったらしい。
「あ、笑った。」
カカシ先生が笑顔になっている。
「良かった。」
元気になったみたいで。
カカシ先生は、そう言って、また笑った。
カカシ先生とは、あれから時々、ご飯を食べたり飲みに行ったりしている。
とても面倒見が良くて、お兄さんみたいな感じだ。
俺を心配してくれたのも、きっと俺が年下だから気にしてくれていたのだろう。
申し訳なかったなあ。
最近はお互いの家にも行ったり来たりして親密度は増している。
こういう関係が、ずっと続くといいな。
ところが、イルカの思いも裏腹に最近カカシは上忍控え室で悩んでいるらしい。
「そりゃ、好きな人が元気がなかったら一発で解るって。どんなに隠していてもね。だからイルカ先生を慰められたのは良かったよ。それから懐いてくれたしさ。・・・でもね!それは決して絶対にイルカ先生を弟のようだと思ってしたことじゃないし。狙っているのはもっと、こう、ずっと上の地位だから目指すは恋人だからね。なのに、どうやって、それをイルカ先生に悟らせるかが今は最大の難関だ。あーあ、どうしたらいいかなー。」
それを相談されている同僚の上忍たちは、毎日、こっそりため息をついているらしい。
早く、その仲が進展してくれと。
弟の気持ちに続く
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