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The Three4



「とにかく家に帰りましょう。」
イルカの仕事は終了時間を迎えていた。
「でも。」とイルカは口篭る。
カカシと一緒に家に帰るのを躊躇っているようだった。
先ほど、里を離れて、というイルカの発言がカカシの脳裏に蘇る。
自分でも卑怯だとは思ったがカカシは、必殺技を出すことにした。
食べも物で釣る、という作戦だ。



「ほら、今日の夕飯、イルカの食べたいって言っていた、すき焼きにしようよ。」
「え!」
少しイルカの瞳が輝き顔が明るくなる。
「あとデザートにシャーベットとフルーツと生クリームとプリンを盛り付けた作ってあげるから。」
それは所謂、パフェとかアラモードとかの類だ。
甘いものが苦手なカカシは食べないが、作ってあげたらイルカがひどく喜んで、それ以来、時々作っている。
「・・・本当に?」
カカシの発言にイルカは、いたく心を動かされたようであった。
「ほんとほんと。」
極上の笑顔で警戒心を抱かせないように近づいて、カカシはイルカの肩を掴んでいた自分の手を、さり気なくイルカの手に移動させて握る。



「さ、買い物して帰りましょう。」
自然な流れで、いつものように言うとイルカは誤魔化されてしまったのか頷いた。
完全にイルカの心はすき焼きに囚われてしまったようだ。
さっきのことは忘れてしまったようではないのだが、イルカはカカシに上手く誘導されている。
「じゃ、行きましょう。」
イルカの手荷物をカカシが何故か片手で器用に纏めて持ち、イルカの気が変わらないうちにと、そのまま受付け所を後にした。


カカシとイルカ、二人を見送った同僚は、ぽつりと呟いた。
「色気より食い気か、イルカ・・・。」




家の中には美味しそうな匂いが漂ってイルカは、機嫌よくカカシの作ってくれたすき焼きを食べている。
メインの食事も終わりデザートの時間になった時、カカシは嬉しそうにデザートを食べているイルカに、落ち着いて話しかけた。
ごくりとお茶を一口飲んでから、話を切り出す。



「ねえ、イルカ。」
「何でしょう?」
ぱくり、と口にさくらんぼを入れたイルカが首を傾げる。
「あのさあ、昼間のことなんだけど。」
ぴく、とイルカの眉が動き、顔が下を向いてしまった。
昼間のことを思い出したらしい。
嬉しそうに食べていたデザートを食べるのを止めてしまった。
そんなイルカに弱気になりながらカカシから出た言葉は


「怒ってる?」


であった。
「怒るって何がですか。」 意図した話題と別のことを振られたようなイルカは、きょとんとしている。
「受付け所でのことと、上忍控え室での話し・・・。」
昼間のアスマとの会話を、聞いていたでしょう?と確認するとイルカは弱弱しく、首を縦に振る。


カカシは潔く頭を下げた。
「ごめんね、イルカ。」
矢継ぎ早に言いたいことを言ってしまう。
誤解されて、最悪な結果を招いてしまうくらいなら、後悔しないようにやれることは全部やっておきたい。


「受け付け所で怖がらせてごめん、アスマと要らないこと話してごめんなさい。俺たち、二人の間のことを第三者の誰かに話すなんて嫌だったよね。」
とにかく謝っておきたい、とカカシは精一杯、心を込めてイルカに伝わるように言葉を紡ぐ。
「アスマに話したのは、ちょっとだけ俺、恋人のことを自慢したいうのとか、可愛い恋人ができて舞い上がっているというか、恋人のことを誰かに話したくてしょうがないとか、そんな欲求が出てきて困っているというか、なんていうか、かんていうか・・・・・・。」
だんだん、話していてカカシは混乱してきた。
混乱するなんて任務でも滅多なことでもないのに。
こんな肝心要の局面で冷静さが発揮できないのは、恋ゆえか、とカカシは自問自答する。
心の内で、じたばたしているとイルカの声がした。


「じゃあ、今のカカシさんの恋人って・・・。」
カカシが顔を上げると、じっと自分を見詰めるイルカの瞳とぶつかった。
真実を求める透明な声が部屋に響く。


「カカシさんの恋人って誰ですか?」


静かに問われた。
「誰って、それは・・・。」
カカシは、逆に言葉に詰まる。
イルカに自分の気持ちが伝わっていないのかと不安になった。
それを、どう取ったのかイルカが畳み掛ける。



「上忍控え室での話を立ち聞いてしまったのは謝ります、すみません。」
頭を下げてから続ける。
「でも、俺、聞いてしまったんです。カカシさんは恋人と、その・・・。」
何だか辛そうに眉間に皺を寄せる。
イルカは何を言うのだろうか、カカシは緊張する。
「キスは二回したって・・・。」
「二回?ああ、それか。」
カカシは、どっと肩の力を抜いた。


「それって・・・。それって言いますけど、だって、カカシさんと俺。」
イルカは右手の人差し指を立てた。
「一回だけですよね。」
キス、と恥ずかしそうな声がする。
「えーと実はね。」
カカシは隠していた事実を告げた。



「怒らないで聞いてね、イルカが知っているファーストキスの前に、俺、イルカにキスしているんだよね。」
「・・・そうなんですか。」
「そうそう。イルカが怪我の痛みで気を失ったときに、口移しで薬を飲ませました。それも数に入れたの。」
「そうだったんですか。」
「だから俺の恋人は目の前にいるイルカ、ただ一人です。」
今度はイルカが肩の力を抜いた。
「どうして黙っていたんですか?教えてくれたらよかったのに。」
「だってさあ。」
いつもの雰囲気が戻ってきて、カカシは安心して冷めてしまったお茶を飲み干した。
イルカもデザートの続きを食べ始める。



「思い出は美しく〜だよ。」
「そんなことで・・・。」
呆れたように言ったイルカはデザートを食べ終えた皿を流しに運んで戻ってくるとカカシの隣に座った。
「もう一つ、気になることがあるので聞いていいですか?」
「なんでも、どうぞ。」


「カカシさん、幸せですか、俺といて。」


聞いてくる声は真剣で、必死だ。
カカシの答え如何では、何か決意のようなものを感じさせる声だ。
出会いから今までを思い出してカカシは、ふっと笑った。
イルカは変わってないなあ。
いつまでも心は健やかで真っ直ぐだ。
まあ、そんなところに惹かれたのもあるけれど。



「それはねえ。」
隣に座るイルカの体をカカシは腕に抱き込んだ。
「とーっても幸せ。」
抱き込む腕に力を増して強くイルカと密着する。
「幸せすぎて困ってしまうほど。でもイルカといると、ずっと、この先にたくさんの幸せがあると思っているよ。」
その言葉を聞いたイルカが体の力を緩めるのが分かった。


「だから、もっと幸せになりたいな、イルカと。」


これからもいつまでも一緒にいてね、という意味を込めて言った。
告白のようで何だか照れる。
「ありがとう。」とカカシの腕の中からイルカの声が聞こえた。


「カカシさん、ありがとう。俺のこと好きになってくれて、ありがとう。」


俺も幸せです、とカカシは耳元でイルカに囁かれた。
イルカの手がカカシの背に回り、お互いに抱きしめ合う。
とても幸せな時間だった。


それから二人は顔を上げて、そっと三回目のキスをした。
優しいキスを贈りあう。



色々あったけれども、全部、誤解は解けてカカシとイルカは、いつもの生活を送っている。
ふとした折にイルカはカカシに聞いてみた。
「そういえば、前にお呪いと称して、口元にしてもらったのは数に入れないんですか?」
「あー、それはうーん、入れない・・・。」
「どうしてですか?」
「だって、あれは、あくまでお呪いだもん。」
カカシのキスの基準はよく分からなかったが頑なに、そう主張された。
「ふーん。」
不思議そうにしているイルカを横目で見るとカカシはイルカに聞こえないように呟いた。
「それより、俺は四回目のキスをしたい。」
イルカはキスに重点を余りおいていないようで、色っぽいことには未だ疎いようなのだが。
来年の今頃まではキスを二桁達成したい、と心密かにカカシは決意したのだった。



終わり



The Three3






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