ふたつ 後編
次の日、つまりバレンタイン当日だ。
カカシ先生は、夕方、任務から帰ってきた。
七班で久しぶりに任務に行っていたのだ。
「ただいまー。」
カカシ先生の嬉しそうな声が玄関から聞こえてきた。
「お帰りなさい。」
俺も、やっぱり嬉しそうな声で出迎えた。
カカシ先生は怪我もなくて元気そう。
良かった良かった。
「ご飯できてますよ。でも、お風呂を先にしますか?」
「そうですねえ。」
カカシ先生はサンダルを脱ぎ捨てながら「ご飯が食べたいです。」と言った。
「お腹が、ずっと鳴りっぱなしでねえ。もうペコペコです。」
「すぐに用意しますね。」
俺は作っておいた、おかずやらを温めに台所へ向かう。
そこへ手や顔を洗い終えたカカシ先生がやって来た。
とんとん、と後ろから肩を叩かれる。
「ねえねえ、イルカ先生。」
「何ですか?」
振り向くとカカシ先生の手の上に可愛らしいピンク色の小さな箱があった。
「これ、どうぞ。」
もしかして。
「チョコですか?」
カカシ先生は、こくりと頷いた。
まさか、貰えるとは思ってなかったから俺は何も用意してないよ。
焦った俺は、あれを思い出した。
イノとヒナタから貰った、カカシ先生宛てのチョコ。
急いで冷蔵庫から取り出すと俺は「はい。」とカカシ先生の差し出した。
「チョコ?俺に?二つも?」
カカシ先生は目を丸くしている。
「はい。」
確かに、これはチョコでカカシ先生に、だ。
でも。
俺からではない。
二人でチョコを差し出しあったまま、どこか気まずい沈黙が流れた。
やばい、これじゃ・・・。
とりあえず俺がチョコを用意してないのは置いといて、本当のことを言わないと。
このチョコはイノとヒナタからの感謝の気持ちですって。
「すみません!」
「ごめんなさい!」
俺が謝るのと同時にカカシ先生からも何故か謝罪の言葉が出た。
「え?カカシ先生?」
「ごめんなさい、イルカ先生。このチョコはサクラからなんです。」
「サクラから。」
「サクラが、任務終了して解散後に同じ包装のチョコを二つ、俺に渡してきて俺の分とイルカ先生の分だって。」
「それを言うなら俺もですよ。」
俺も正直に、この二つのチョコはイノとヒナタからだと伝えた。
「そうでしたか。」
カカシ先生は、ほっと肩の力を抜いた。
「俺、チョコ用意してなかったから悪いなあ、と思って。」
「俺もです。やっぱり用意すればよかったなと後悔していたところでした。」
俺たちは安心して顔を見合わせて、ちょっと笑った。
「じゃ、ご飯にしましょうか。」
「そうですね。」
カカシ先生も配膳を手伝ってくれる。
茶碗やらおかずやらをのせた盆を運ぶカカシ先生は台所を出る時、ぼそっと一言呟いた。
「ご飯とお風呂が終わったら、あれ、お願いしますね。」
あれって・・・・・・あれだろうな、あれしかないよな。
あの、愛の告白してキスしてあげるっていうやつ。
忘れてなかったんだな、やっぱり。
あれのことを考えて、一瞬で真っ赤になり動きが止まってしまった俺をカカシ先生は楽しそうに見ている。
「すっごい楽しみだなあ〜。」
これでもかというくらい嬉しげに言う。
対して俺は、ものすごくドキドキしてきて自分でも大丈夫かと思うくらいだ。
ああ、どうしよう。
バレンタインって、こんなにもドキドキするものだったけ?
ドキドキしているけど。
カカシ先生が好きだという気持ちは本当なので。
カカシ先生が楽しみしているなら嬉しそうなら、やるしかない。
頑張れ、俺!
ふたつ 前編
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