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wonderful week(後)



カカシが、がっくりと肩を落として去って行く姿を見ながらイルカは思った。
好きな人って告白するのが難しい人なのかな?
荷物を部屋に運び入れる。
がさがさと荷物を冷蔵庫や冷凍庫、戸棚の中にしまって、米を炊く。
他にも簡単な手料理を作りながらカカシのことを考えた。
カカシ先生と付き合いは日が浅いけど・・・。
野菜を炒めていたフライパンに醤油を流しいれた。
少し炒めて味を沁み込ませて皿へと移し変える。
フライパンを軽く洗って二品目に取り掛かった。
ちなみにイルカの料理の基本は炒める、焼くだ。
この料理法は失敗が少ない。
良い人そうなのになあ、カカシ先生。
カカシの顔を思い浮かべる。
覆面していて片目を隠しているけどカッコいいのが分かるしなあ。
髪は派手だけどね。
そこで、くすりと笑いが漏れた。
カカシの髪は、きらきらと光る灰銀色なのだ。
あの髪の色は珍しい。
「あ!」
気がつくとフライパンが焦げた匂いが漂ってきていた。
カカシのことを考えすぎていたせいで気が散ってしまったらしい。
「あー、焦げちゃった」とイルカは苦笑する。
ふと思った。
「カカシ先生も好きな人に恋焦がれているのかなあ」
イルカらしくないロマンチックな言葉だった。



ハードスケジュール突入して二日目。
「うー、眠い〜」
深夜というより早朝の受付でイルカは伸びをした。
時刻は朝の三時だ。
もうじき夜が明ける。
「お疲れさま」
同僚がイルカと受付を交代した。
「うん、あと頼む」
「オッケー」と頷いた同僚はイルカに訊いた。
「今日はこれから休めるのか?」
「いーや。家に帰って六時に起きて、また出勤」
「大変だなあ」
「そっちもだろ、この時期はしゃーない」
言いながらイルカは欠伸をかみ殺す。
同僚も欠伸をする。
「そうなんだよなあ、忙しい時って何故にこんなに忙しいのか」
「だな」
「それじゃ、また後で」
外に出ると空が白々と明るくなってきていた。
「朝だ〜」
眠い目を盛んに瞬かせて歩いていると、ひょいと横道から誰か出てきた。
「おはよーございます、イルカ先生」
カカシだった。



「あ、カカシ先生!」
びっくりしたイルカは目を大きく開いた。
まさか、こんな時間にカカシと会うとは思ってもみなかった。
晴天の霹靂?
眠いイルカの頭にそんな言葉が浮ぶ。
「おはようございます、カカシ先生」
眠いので言葉に力がない。
ついで浮かべた笑顔にも力はなかった。
「どうなさったんですか、こんな時間に」
イルカが受付を出たのが三時過ぎだったから今は、もう四時近くなっているはずだ。
「ええ、俺は」
照れたようにカカシは笑って頭を掻く。
この前も頭を掻いていたから癖なのだろうか。
頭を掻きながらカカシは言った。
「知り合いとの飲み会で、こんな時間になってしまって」
久しぶりに里に戻ってきたので、と。
「そうだったんですか」
暫くぶりに知人らを会ったのなら積もる話もあったのだろう。
イルカは特に疑問に思わなかった。
「ところで、イルカ先生は」
探るような目でカカシがイルカを見てきた。
「仕事帰りですか?」
「あ、はい」
隠す必要もないので、あっさりと答える。
「受付の夜番で、さっき終わったところです」
「へえ、じゃあ」
カカシの出ている片目が細まった。
「もしかして今日はお休みですか?」
期待が込められた声だった。
「いえ」
これにもイルカは、あっさりと答えた。
「家に帰ってから六時に再び出勤です」
「ええ!今日も仕事なんですか?」
心底から驚いたような声がカカシから出た。
「まあ、そうです」
歩きながらイルカは話す。
イルカの横にカカシは並んだ。
「年に数回、すっごく忙しい時期があるんですよ。それが今です」
「ふーん、なるほどねえ」
納得がいかないような顔をカカシはしている。
そんなカカシにイルカは疲れた顔であったが笑いかけた。
「里外で頑張っている方もいるんですから。場所は違いますけど俺だって里内で頑張ります」
その言葉にカカシは、はっとしたようであった。



それから何日か本当にハードスケジュールを越えたような仕事が続いたが、それも終わりを迎えた。
「やったー!終わったー!」
「あー、眠れる!」
「家に帰れる!風呂に入れる!」
イルカと同僚たちはお互いの仕事を労った。
「いやー、大変だったなあ」
「ほんとほんと、年を取るに連れて徹夜が辛くなる」
「まだ、そんな年じゃないだろ」
緊張が解れて軽口を叩き合う。
明日からは、また通常の業務に戻る。
そのことにも安堵した。
そしてイルカも家に帰ったのだが。



途中、いつもの人が姿を現した。
「こんにちは、イルカ先生」
「こんにちは、カカシ先生」
カカシの姿を見たイルカは知らず微笑んだ。
「今日も待っていてくれたんですか」
「はい」
歩くイルカの横にカカシは並んだ。
ここ一種間ほどイルカの横がカカシの定位置となっている。
「俺が帰るときにいつも待っていてくれますけど」
不思議そうにイルカはカカシを見た。
「カカシ先生は、いつ寝ているんですか?」
「それはヒミツです」
人差し指を立ててカカシは口元に当てる。
この時点でイルカはカカシが担当している下忍、七班の待ち合わせに毎回、遅刻していることを知らなかった。
「なんで俺を待っていてくれるんですか?」
カカシは一週間ほどイルカが帰るときに一緒に帰っていたのだが、はっきり言って帰る時間は深夜、早朝と定時ではない。
なのにカカシは必ず姿を現した。
初めは飲み会だと言っていたが、その後は特に何も言わない。
「さあ、なんででしょうね」
カカシは、はぐらかした。
「教えてくださいよ」
「いつか絶対に分かります」
にっこりと笑ったカカシが口を割る様子はない。



「それよりも」
カカシはイルカの手を掴んだ。
「忙しい仕事が終わったんですからお祝いに飯でも食べに行きましょう!俺の奢りで!」
「いえ、俺は家に帰ろうかと・・・」
「まあまあ、いいじゃないですか」
言葉は柔らかいがカカシはイルカの手を離そうとはしない。
「それに、この前、俺が好きな人がいると言ったら応援してくれるってイルカ先生が言ったじゃないですか」
「あ!」
「ね、飯だけですよ、今はこれだけで我慢しますから」
人の良さそうな笑みを浮かべるカカシは実に無邪気だ。
下心など皆無に見える。
「飯だけなら」
とうとう、イルカは押し切られてしまった。



それから二人は徐々に距離を詰めて親しくなっていく。
だが親友を越えてカカシの好きな人が、漸くイルカの知るところになった段階で二人は大喧嘩をしてしまうことになる。
中忍試験で公衆面前での意見の食い違いが明暗を分けたのであった。



wonderful week(前)

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