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wonderful week(前)



「うーん・・・」
イルカは自分の仕事の予定を書き込んで手帳を見て顔を顰めた。
ぱたんと手帳を閉じて小さく溜め息を吐く。
「今週、一週間は厳しいなあ」
厳しいとは仕事のことである。
随分と立て込んでいた。
予定を立てて字で表してみると一週間、家に帰る時間がほとんどない。
寝る時間もなさそうだった。
いわゆるハードスケジュールというやつだ。
年に数回、こんな現象が起こる。
「まあ、仕方ないか」
イルカは、よしと拳を握りこぶしを作った。
「若さと根性で乗り切るしかないか!」
どこかの熱血青春上忍師みたいな台詞を言っていた。



「じゃあ、まずは・・・」
幸いなことにイルカは今日は休みでハードスケジュールが始まるのは明日からであった。
「今日中に洗濯と掃除を片付けて、買物に行って」
指折り、しなければいけないことを上げていく。
「あ、それから飯を作って冷凍しておくか」
作って冷凍しておけば解凍すれば、すぐに食べられる。
便利だ。
疲れているときなんて食事の支度なんてする気も起きない。
家に帰ってきて風呂と、できたら寝て。
食事は、どうしたって二の次になる。
面倒だからといって外食や出来合いの物で済ませた時期もあるが今は割りと健康に気を遣って自炊したりしている。
大好きなラーメンは頻繁に食べてしまうが。
「さてと」
やることを決めたイルカは腕まくりをする。
「やりますか!」
まずは洗濯と掃除に取り掛かった。



午後からイルカは買物に出かけた。
買うものは予め、メモしてきている。
「えーと、次は玉子に牛乳・・・」
メモのお陰で手際よく買物を終えた。
荷物は思ったより多くなってしまった。
両腕から袋を提げて、更に抱えている。
「・・・しまった、買いすぎたか」
失敗したと思ったものの、買った物は家に持って帰らなければならない。
というより買ったからには意地でも持って帰りたい心境であった。
重いものを運ぶことで体を鍛えていると思えばいいか・・・。
ポジティブに物事考えるイルカである。
よいしょと荷物を抱えて歩いていると後ろから声が聞こえた。
「イルカせーんせい」
ゆっくりと振り向くと、そこにいたのはカカシだった。



「あ、カカシ先生」
「荷物、多いですね。お手伝いしましょうか?」
「え、いや、あの」
イルカが断る前にカカシは、さっさとイルカの荷物を半分、持ってしまう。
上忍だけに無駄に手際が良かった。
「自宅まで運べばいいんですよね?」
「あ、はい。・・・じゃなくて、カカシさん!」
「さ、行きましょう」
てくてくとカカシは歩き始める。
完全にカカシのペースになっていた。
こうなるとカカシに逆らうのは無理だった。
カカシ先生て・・・。
前を歩くカカシの背を見る。
俺が困っているとどこからとも無く現れて助けてくれるんだよなあ。
上忍カカシと中忍のイルカ。
知り合ったのは最近で、切っ掛けはイルカのアカデミーでの教え子が繋がりで。
不思議な縁だった。



「あ、ここでいいです」
てくてくと前を歩くカカシはイルカの家を知っていたようで案内の必要は無かった。
家の前でカカシから荷物を受け取った。
「すみません、お忙しいところ」
ぺこり、とイルカは頭を下げる。
何しろカカシは、あの写輪眼のカカシだ。
イルカだって知っているくらいの。
上忍の任務をしながら、下忍の指導もしている。
忙しい身の上に違いない。
今日は何故、あんなところに出現してイルカの荷物を運ぶのを手伝ってくれたのか謎なのだが。
「いえいえ、そんなに忙しくもないので」
カカシは謙遜して言ってからイルカの荷物を、ちらと見た。
「イルカ先生って独り身ですよね?こんなにたくさん買いこんで彼女でも来るんですか?」
突拍子もないことを尋ねられた。
彼女・・・。
その言葉にイルカは苦笑する。
彼女なんて生まれてこの方いたことがない、悲しいことに。
それをカカシに告げるとカカシは、あらかさまにほっとしていた。
「そうなんですか〜、俺はてっきり同棲でもしているのかと思いまして」
「同棲!」
「ええ。だって、こんなに食料品を買っているじゃないですか」
確かに独り身では食べきれない量ではあるが。
「単なるまとめ買いですよ」
これまた悲しい答えだった。
密かなる仕返しとしてイルカはカカシに冗談交じりで訊いてみた。
「カカシさんこそ、彼女とは同棲なさっているですか?」
切り返してみる。
「彼女なんて」
カカシは顔の前で手を横に振る、いささか大げさに。
「いませんよ、俺」
「そうなんですか?」
意外だった。
カカシの雰囲気からして彼女がいるかと思ったのに。
「そうですよ、完全なる独り身で恋人募集中です」
「募集中・・・」
「あ、募集中だったですかね、正しくは」
「じゃ、今は彼女がいると?」
「そういう訳ではありません」
カカシの話は掴み所がない。
彼女がいなくて恋人募集中だったとは、どういうことだろうか?



「あ、ええとですね」
カカシは頭を、がしがしと掻いた。
焦っている。
「恋人も彼女も現在いないんですが、その最近になって」
ほんのりとカカシの唯一出ている右目の周りが赤くなる。
「す、好きな人ができたんです!」
「好きな人が・・・」
「はい、そうなんです。俺、初めて会って一目で好きなってしまって」
俗にいう一目惚れというやつらしい。
「好きになってしまって忘れられなくて、夜も眠れなくて」
カカシは恋しているらしい。
情熱的な人なんだなあ、とイルカはカカシの認識を新たにした。
クールな人かと思ったら、そうでもなくて。
好きな人ができたというカカシの話は聞いていて、ほのぼのしてしまう。
ほんわかと心があたたかくなった。
「カカシ先生」
イルカはカカシに微笑んだ。
「は、はいっ!なんでしょう!」
輝く目でカカシがイルカを見つめた。
「頑張ってくださいね!」
イルカは素直な心で激励した。
「俺、カカシ先生を応援します!」
恋が成就するといいですね、と力を込めて言うとカカシは複雑な表情を浮かべた。
「・・・・・・イルカ先生って」
何かを言いたげにしていたが何も言わずにカカシは、がっくりと肩を落としていたのだった。


wonderful week(後)

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